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ランドの行方

店を順番に覗いていき、その度に人づてにランドの行方を追うとやがて籠を売っている露天商に出会った。露天商は年が若く、親の代わりに出稼ぎに来たのだが申請が遅れたためにこの場所に来たのだという。


「兄さん達ランドさんの友達?」

「ああそうだ、何処に行ったか知ってるか?」


そう言うと籠売りは小さな小物が入るような編み籠を手渡すとこそっと教えてくれた。


「あの人は俺を庇って連れて行かれちまった・・・、奴ら商品と俺を盾にしてあの人を袋叩きにしちまったんだ・・・!」


肩を震わせてそう言うと彼は目元を拭って元の場所へと戻り、蹲るように座ると嗚咽を漏らし始めた。籠の中にはバンガラ商会と書かれた紙が入っている。


「なるほど、此処にランドがいるんだな」


籠売りの少年の隣を見ると荒らされた形跡と共に一店舗分のスペースが空いている。その光景を見ると体が沸騰するような猛烈な怒りが沸いて来る。

俺達はバンガラ商会を目指し、再び聞き込みを続けながら彼等とランドの行方を捜すのだった・・・。


「此処がバンガラ商会か?」

「おそらく・・・そうですね」


たどり着いたのは一際大きな店舗を構える大通りに面した豪華な建物だった。


「此処にランドが居るのか?」

「あの少年が間違えていなければ恐らく・・・」


そうなるとまずはランドが何処に連れて行かれたのかを探る必要がある。場所を変えられたり人質にされると厄介だからな。


「そうなると探りを入れる必要があるな・・・俺が裏手から入って見るからアキナとクラウディアは正面から店について調べてくれ」

「わかりました!」

「はい!」


二人に調査を任せ俺は裏口から商会に潜入することにした。今はまだグレーだがランドを連れ去ったりする時点で俺に取っちゃクロもいいとこだぜ。落とし前はきっちりつけさせてもらおうじゃないか。


「裏手は掃除しねえのか?汚いな・・・」


表は塵一つといった感じだが裏手になるとゴミが散乱し、足を踏み入れた途端に汚くなっている。まるで店の裏の顔を覗いたようだ・・・と言うのは言い過ぎだろうか?レンガを組んだような石畳にはゴミや吹き込んだ砂が溝を埋めんばかりに詰まっている。


「ったく・・・これは一体どういう訳だ」


店先のみならず人の目に付くであろう場所や人が通るかもしれない場所は綺麗にしとくのは常識だろうが!憤慨しつつ歩を進めるとやがて店の裏口の近くまでやって来た。すると怒声が俺の耳に飛び込んでくる。


「おらっ!そろそろ懲りたんじゃねえのか!」

「グゲッ!・・・ち、くしょう・・」


こっそりと曲がり角から覗いて見るとネズミ顔の男が数人の男に羽交い絞めにされて殴られている。


「ったくよ、見ず知らずの籠売り如きを庇うとはな・・・おらっ!」

「ぐっ!」


面白半分にやっているのか男達の顔には笑みが張り付いている。酷い面だ。


「ひ、卑怯者・・・商品返せ・・・」

「まだ減らず口が叩けるのか?それに違うだろうが『商品は好意で譲りましただろう』がよ!」

「ぐはっ!・・・うげえ・・・」

「ったくよう、汚い血だぜ」


拳についた血を拭いながらそう言う男に俺の怒りは臨界点に達した。せってーゆるさねえぞ。

俺は何も言わずに近づくとおもむろに近くにいた男の顔面を殴り飛ばした。殴った男の口から折れた歯が飛び散り俺の右手に血が飛び散った。


「・・・け」

「あ?!手前なにしやがる!」

「うるせえ!手前らの汚い血を拭けって言ってんだよ!」


拳を突き出してそう言ってやったが奴らはそれに動じる様子もなくランドを打っ棄って俺を囲む。


「あ、あにき・・・」

「遅くなって悪いな、ゴミを片付けたらすぐ治してやる」


ランドにそう言って笑顔を向けてやると不意打ちをかまして来た男の右手を掴み、手首の関節を一回転させてやった。


「うぎゃああああ!」

「その手ならもう悪さはできねえぞ、箸も持てないだろうしな」


そう言うと俺は残った連中に開いた両手を突き出し、指の関節を鳴らす。


「覚悟しろ、全員治癒院行きにしてやる」


男達は右手を押さえて悶えている男を含めて五人、楽勝だ。まず考えなしに突っ込んできた大柄な男のちょうど心臓の真上の胸骨の辺りを針に見立てた指で突いてやる。


「おごっ?!」


男は心臓を押さえて蹲ると泡を吹いて失神した、心臓には鼓動を管理する場所があるのだが其処を魔力の針で刺すことで心臓の鼓動のリズムを意図的に狂わせてやった。魔力の針と知識があれば容易にできることだが奴らには理解できないだろう。


「次はお前だ」


そういうと俺は隣に立っていた男の脚の膝関節を狙って蹴りを入れる、すると男の足は糸の切れた操り人形のようにべしゃんと倒れた。


「へっ?・・・あああああっ!お、俺の脚がぁっぁぁ!」


痛覚神経を刺激するように蹴ったからもう少しばかり痛くなるぜ。せいぜい頑張ってリハビリするんだな。

すると残りの二人はようやく事態が理解できてきたのかナイフを取り出してこちらに突きつけてくる。


「野朗!こ、殺してやる!」

「そんなおもちゃじゃ無理だろ」

「うるせえ!」


呆れるような鈍いスピードで突き出してきたナイフを避けるとナイフを掴む右手首の関節を外すとその勢いのままナイフを左肩に突き刺してやる。


「ド素人の刃物が通じるのは相手が素人のときだけだ、わかったか?」

「ひぃぃぃ!さ、刺さった!・・・いてぇぇぇ!」

「勉強になったな」


ソイツを蹴り飛ばしてやると残った一人がランドを人質にしようとしていたので魔力の針を突き刺し、それに魔力を繋いで引っ張り返してやる。


「ひっ?!」

「よう、つくづく見下げ果てた野朗だぜ」


胸倉を掴んで睨んでやると最後の一人は恐怖が極まったのかそのまま泡を吹いて失神してしまった。


「ありゃ?情けねえなぁ・・・ま、多人数で人を甚振る奴なんてそんなもんか」


俺は雑魚を放っておいてランドを治療することにした。


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