アルカンの露店!
翌朝、目を覚ますと二人が俺に寄りかかるようにして眠っていた。
ドラゴンの姿になれば別段床で寝ようともどうってことないのだが二人も床で寝ると言い出したので仕方なくベッドを繋げて俺が中央に陣取って寝ることにしたのだった。
「ああ、良く寝た」
人間の姿に戻ると二人は寄りかかる所がなくなりそれぞれベッドに倒れこむ。
「うみゅっ・・・」
「むぅ・・・」
二人が大変可愛い声を上げながらベッドでもぞもぞしてるのを堪能してから俺は二人を起こすことにする。
「起きろ二人とも、今日はもう少し観光してからランドの様子を見に行こう」
「・・・はぁい」
「おはようございます」
クラウディアが若干反応が鈍いがよしよししてやると二人ともしゃっきりと目を覚ましてくれた。にへーと頬を緩めるのが可愛い。
着替えて一階の食堂に下りると朝食を済ませて大通りへと向かう。
「朝からにぎわってるな」
喧騒が宿屋の入り口から聞こえてくるほどアルカンの市場はにぎわっている。宿屋の女将さんに聞いた所アルカンでは朝市が定期的に開かれており、現地の人間も他所からきた旅人も頻繁に利用する為多数の人間でごった返すのだそうだ。
「とりあえずランドが露店を出してる場所を探そう」
「えー、別に良いんじゃないですか?」
「街を出るタイミングくらいは教えてやらないと可哀想だろ」
クラウディアはちょっと嫌そうだったがランドも遊びに来てるわけじゃないし道中の道案内を買って出てくれたのだから放置はちょっと可哀想だ。
まあ、アイツなら何処でも上手く立ち回れそうだが別れるにしても一声掛けるべきだろう。
そう宥めて二人を連れて露店めぐりをする。買い物をしたいが贅沢すると路銀が尽きそうなので後で冒険者ギルドにも寄らないといけないな。
「お、このサンダルいい感じだな」
「お目が高いね、これはサンドラットの毛皮を使って作った頑丈な履物だよ」
「銀貨五枚はちょいと高いか・・・ところでここらへんでネズミ顔の男を見なかったか?」
「さて・・・ああ、そういえば出店申請した時にそんな顔の奴を見たよ、足の怪我を治してくれたんで助かったんだ」
「ソイツと此処まで一緒に来ててな、王都までと約束してたんだが何処に行ったか知ってるかい?」
そう言うと店主は少し考える素振りを見せてから頭を掻いて商品を一瞥したがやがて諦めたように尋ねた。
「なんだ友達かい?なら商品を買わせるワケにはいかねえやな・・・確か露店の区域の西側に割り当てられたはずだけど・・・」
「西の区域か其処がどうかしたのか?」
「ああ、あそこの近くは店舗のある店と境目になってるから揉め事が多くってな・・・流れ者の扱いは何処の国行っても其処まで手厚くないし泣き寝入りするしかないことも多いから護衛を雇ってることも多いんだぜ」
其処まで聞くと店主は商売に戻ってしまった。西の区域か・・・変なことに巻き込まれてないと良いが・・・。
そう思いつつも西の区域を目指しウィンドウショッピングを楽しんでいると徐々に景色が変わってくる。先ほどまで賑わっていたのが徐々に小さくなっていき活気が乏しくなっていっているのだ。
「妙だな・・・ここら辺に来てから人だかりが露骨に減ってる気がするぞ」
「そうですね、さっきの串焼き屋さんと負けない物が売ってるのに此処では全然売れてません」
客が来ないのか総じて露店の店主達の表情が暗い。商人って奴は店が忙しかったり儲けがでると活き活きしているものだが・・・これだけ露骨だと哀れみすら感じる。
「おい店主さん、この有様は一体何なんだ?」
「うん?・・・ああ、いらっしゃい・・・此処は店舗に近い区域だからな、大半の客は店舗持ちに取られちまうし儲かるとマズいんだよ」
「儲かるとマズイ?」
「お勧めしないが試しにそこらで買い物してみな、西の区域は俺達露天商にしてみればハズレの場所なのさ」
ため息をつく露天商から試しに串焼きを買う。醤油を思わせる串焼きはちょっと時間が経っていたがそれでも十分に美味い。値段も銅貨三枚とお手ごろだ。
これ見よがしにムシャムシャと食っていると少し離れた店舗が目に付く。
「アレは料理屋か何かかな」
ナイフとフォークの絵が書かれた看板が出ている。営業しているようだがあちらの区域にも人がそれなりに集まっている。
「向こうからはアルカンの店舗の中でも高級店が多いみたいですよ」
「なるへそ、そうなると安く商売してると邪魔な訳ね」
しかし他の区域では人がごった返しているからにはここら辺に人が流れてきてもおかしくない筈だが・・・。串をしがんでいると店舗の中から何人かが此方へ歩いてくる。
「お客さん旅の人かい?何処で買ったか知らないがそんなもの食ってちゃ損だぜ」
「ご親切にどうも、そっちは儲かってるみたいで何よりだな。もう少しここらで見て回ってから寄せて貰うぜ」
「商品もあそこの貧乏な奴から買うよりウチのが良いのを揃えてるぜ?」
そう言うと俺達の手を引っ張ろうとするので流石にうっとおしくなる。
「押し売り見たいな事すんなっての」
「・・・なにかあったらウチのをどうぞお買い求めくださいね」
手を振り解いて腕を組み、睨みつけてやると客引き達はジロジロと俺達を品定めするように睨んでくるがすぐにとってつけたような笑顔で謳い文句を述べるとそそくさと離れていく。気色の悪い奴らだが・・・こりゃ絶対なにかあるな。ここまであからさまだと疑問を抱くどころじゃない。
冷やかし程度にしようと思ったがランドが心配だ、無事な姿だけでも見ておこう。




