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ギルド登録

『蹄鉄』だったか『こうもん』だったかのおっさんは放っておいてさっさと冒険者登録しよう。そう思いギルドのカウンターに向かうと受付のお嬢さんがクスクスと笑っていた。


「剛毅なお方ですね」

「そうか?」

「あの人はあれでも冒険者ランクはDですよ?あの人をああも簡単にあしらってしまうのですからね」

「腹が痛かったんだろ?」


そう言うと我慢し切れなかったのかぷっと吹き出して笑い出した。


「あははっ、そういうことにしときますね・・・ふふっ」


そう言うと肩を震わせながら受付のお嬢さんはギルドに関する説明を行ってくれた。


・ギルドは国境間の移動を行う際に登録した人物を証明し旅を支援する機関である。

・それは本来測量や開拓と言った文字通り『冒険者』を支援する目的の下に生まれた組織だからである。

・それ故に行商や旅人の保護や近隣の町村の保護および魔物の討伐などを有償無償を問わずクエストとして発注・斡旋し、業務を管理する。

・国家間の有事の際はギルドは冒険者の保護を優先する。ただし、ギルドの元で最低でも一年以上の登録もしくは15件以上のクエストをクリアした者限定とする。

・クエストに載っていない物だとしても一定数の害獣の駆除並びに航路の開拓、土地の開拓などで功績を挙げた者は依頼達成案件として処理し、褒賞金を支給する。

・クエスト中に死亡した者には見舞金を支給する。ただし、妻帯者等条件によって支給額を変更すること有り。身元がわからない場合は支給し無い事とする。

・害獣災害など地域を巻き込んだ自然災害の際は近場のギルドに出頭する事が義務付けられる。などなど。


「基本的に罰則には規定はありませんがマナー違反や私闘権の濫用などはギルドによっては厳罰の対象となりますのでご注意くださいね」

「マナーはなんとなく解るが私闘権って?」

「文字通り私闘、もしくは決闘で話をつけるという冒険者ギルドに属する冒険者の揉め事回避のための取り決めです」


私闘権とは、互いに腕っ節で話し合いを解決しようと言うもの。この場合少なくともランク上の者がランク下の者や一般人にこの権利を発動することは認められない。同等か下が上に発動することが許される物。

相手を殺したり、勝者が敗者を甚振るなどはご法度でありギルドによっては制裁を課されることもあり規則以前に明確なマナー違反である。


「なるほどな、じゃああのおっさんはどうなるんだ?」

「そうですねぇ、ギルド長に報告しますので追って沙汰があると思いますが・・・資格停止一ヶ月は硬いかと」


あちゃー、ご愁傷様だな。ギルドの仕事を一ヶ月請けられないんじゃあ破産するんじゃないのか。


「んじゃとりあえず登録をお願いする」

「はい、お願いされました」


俺とアキナの分のギルドカードを発行して貰い、俺達はランクFからのスタートとなった。旅行に際して使いたいだけなのでどれだけ必要になるかは知らないがな。


「ギルドカードは取得から一ヶ月間利用が無いと失効しますので注意してくださいね」


そう言うと彼女は最後に針を持って来た。血を垂らすことで本人確認できるようになるとの事。アキナがまず人差し指を突いて滲んだ血をカードにつけるとカードが淡く光り、登録が完了したらしい。


「よし、じゃあ俺も・・・あれ?」


針でツンツンして見るも全然通らないぞ・・・。ナイフを抜いてキコキコしても全く切れない・・・。


「針が通らない・・・」


針先にぐりぐりやって見るも全然・・・あ、曲がった。困ったぞ、どうすれば・・・ええいままよ。


「えっと、何をされて・・・えぇー」


指をガジガジやり始めたのを見て流石に不審に思ったらしい受付のお嬢さんは曲がった針を見て察したのか呆れたような表情をする。ガジガジしててようやく血が出てきたのは数分後。


「俺の血は赤いんだなぁ・・・」


てっきりドラゴンの血って別の色かなとか思ってたので苦労も合わさって妙な達成感がある。しかし血が出るどころか凄まじいスピードで塞がろうとするので慌ててギルドカードに押し付ける。


「はい、完了しまし・・・えっ?!」


ギルドカードが光ったかと思うと木の札の様な色合いのカードが何故かシルバーの眩しい色になっている。


「・・・とりあえず登録は完了なんだよな?」

「え、ええ、恐らくは」

「宿に行きたいんだけどどっかいいとこあるかい?」

「此処の二階か、キンジャーって言う宿屋さんがありますけど・・・貴方一体・・・?」

「有難う、じゃあな」


難しい事は考えないようにしつつ俺は受付のお嬢さんが正気に戻る前にそそくさと用事を済ませてギルドを出ることにする。懐は温かいし無理して無料開放されてるギルドのお世話になることもないだろう。


キンジャーの宿は良心的な宿らしく初心者御用達の宿らしい。ギルドから迷うことなく行けるので地理的にも優しい。なんてったって目の前だしな。


「おいっす、泊まりだけど空いてるかい?」


白い漆喰の壁と木造の家屋は落ち着きがあって過ごしやすそうだ。宿屋の主人も老夫婦と小さな女の子が給仕をしている。


「あい、旅のお方ですねぇ、あいとりますよぅ」


老婆が宿帳を持って来たので文字を書こうとしてふと手を止めた。俺この世界の文字の読み書きできねえぞ。ギルドでは受付の人が名前とかを聞いて書いてくれたので書かなくて良かったのだ。


「すまんアキナ、代わりに書いてくれ」


事情を察してくれたらしいアキナに代わってもらい俺は後ろに下がる。日本語なんて通じるわけ無いだろうし困ったな。


「旦那様は文字が書けないんですか?」

「書けることは書けるが違う文字なんだよな」


今更ながら辺りを見回してみると英語のようななんともいえない文字が並んでいるので予想は出来ても意味は全然解らんのだ。




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