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アルカンを目指して

昨晩をお楽しみした翌日、俺達が出発の準備を始めていると宿屋を女性の騎士が尋ねてきた。おそらく前回の盗賊討伐の件だろう。


「龍の巫女様の御一行ですね?この度は・・・」


貸して貰った食堂の一角で騎士と話すことになったのだがどうにも態度がおかしい。俺が首を傾げているとアキナが耳打ちしてくれた。


(旦那様、この方はおそらくグンゼの騎士様です)


馬車を見てニヤニヤしていたために小突かれてしまったのを俺は思い出す。ああ、あの時の・・・。


「き、貴様が・・・」

「何故って言いたいのはお互い様だよ、あのハンサムな騎士さんじゃないのね」


露骨にがっかりした様子で肩を落としてやると相手も眉間に皺を寄せて不満そうにしている。


「ルチル近衛騎士団長様は暇なお方ではないのだ!ましてや貴様のような無礼者になど・・・!」

「あー、そりゃ悪かったね・・・んで、用件は?」

「ぐぬぬ・・・と、とりあえず賊を始末してくれたのは感謝している!今回褒賞を渡す務めを受けたのも感謝の印と思ってくれるとわが領主も喜んでくださると思う」

「そうですか、では領主様によろしくお伝えください」


からかい半分の俺を遮ってアキナが受け答えをする。どうにも畏まったのは苦手だし上から物を言われるのも嫌いだ。

騎士もアキナの応対は普通というか若干嬉しそうに話していた。龍の巫女様の影響力は半端ないな。


「それでは私は仕事がありますので・・・」

「あ、ちょいと待ちなよ」

「・・・何か?」


立ち上がった彼女を引き止める。わかるけどそんな嫌そうな顔すんなよな。


「前の非礼の侘び代わりだ、持ってけ」

「これは・・・!」

「呪い入りのペンダントだ、肌身離さず持っとけ」


毎朝決まった時間に剥がれる古い鱗に漢字で念を篭めて作ったお守りである。

『破邪』の文字を書いたので魔除になる・・・はず。


「不思議な文字だ・・・これは何処の文字だ?」

「さてな、鱗の持ち主なら知ってるんじゃないか?魔除くらいにはなるだろうぜ」

「・・・ありがたく貰っておこう」


騎士は前より少し明るくなった表情で俺を見つめると馬に跨って走り去っていった。


「さて、・・・お前等の分もあるからそんな顔すんな」


泣きそうなアキナと凄い怖い顔でこっちを睨んでいるクラウディアを宥めながら俺はそれぞれに作っておいたペンダントを渡した。

それぞれには『破邪』と『快癒』の文字を彫っておいた。ナイフとかでは全く傷がつかなかったので爪でぐりぐりやって穴を開けた後に紐を通しておいたものだ。二人はそれを受け取るとようやく何時もの表情に戻ったのでホッとした。


それから宿屋の主人と女将さんにお礼を言ってから宿を出発する。


「次は確かアルカンを目指すんだったな」

「ええ、此処からは歩いていくことになりますので・・・」

「飛んで行くのは?」

「大騒ぎになりますから本当にやめてくださいね」


こうして俺は飛べるのに徒歩という至極面倒な旅を強制されてしまった。

そーらーを自由にとびたいなー。ダメ!はい、残念でしたー!


ちぇー、仕方ないか・・・。そう思いつつ歩くこと一時間。


「おーい!待ってくれー!」


後ろから声が聞こえて来たので振り返って見ると大きなリュックを背負ったランドがダバダバと此方に走ってきていた。


「お、ランドじゃないの」

「王都目指してるってきいたんで追いかけて来たんすよ兄貴!」


走りに自信があるのかでかい荷物を背負っている割に元気だ。


「げ!ランド!アンタ勝手に着いて来てどういうつもり?!」

「うるせーな!ちゃんと親父にだって許可はもらってら!」


この背中の荷物が証拠だぜ!とリュックを下ろして口を開けると中から束ねた紐やロープ、帯などが出てきた。


「兄貴にゃ迷惑掛けたからな、王都へ行くなら仕事ついでに道案内させてもらいやすぜ」

「そうか?まあ、旅は道ずれってやつだ。構わないだろ」

「やった!そう来なくっちゃな!」


ちょいと不満そうな二人には申し訳ないがクラウディアの同郷だし悪いやつじゃ無さそうだから構わないだろう。


「あ、ちゃんと宿は別のとこ取りますんで気にしないでくださいよ!」

「ん?ああ、そうだな」


その言葉が誰に向けられた物かはさておき、四人連れになった俺達は再びアルカンを目指して歩き出した。


「アルカンに着いたら何するかな・・・」

「兄貴、それなら冒険者ギルドなんてどうです?」


余りに暇だったので思わず一人言が漏れる。するとさっそくランドが食いついてきた。


「冒険者ギルド?」

「身分証代わりになるんで旅行者のお供として最適なギルドで資金稼ぎもできる

登録しといて損はないヤツでさ」

「私は持ってるよ」


冒険者ギルド。それは国や領主の騎士達や兵士では対処しきれない雑事や専門分野を民間で行おうという考えで生まれた組織で、国を超えて様々な支部が生まれている。国を跨いで情報交換しているので下手に一国で身元を保証してもらうよりも確実なのだとか。


「顔とか情報が浮かび上がってくるんでうそも誤魔化しもできないんですよ」

「へー、そりゃ便利だな」


試しにクラウディアのギルドカードを見せて貰うと

名前:クラウディア

性別:女性

職業:神官

ギルドランク:D


と書かれている。


「これは今他人に見せる為の物なので詳しい情報は表示されませんが本当なら何が出来るかとかスキルの類も記載されますよ」

「なるほど、ギルドの関係者だけが閲覧できるって寸法か」

「場所に寄っちゃギルドカード無しじゃ入れない場所もあるんで国内でも旅して回るなら持っといて損はありませんぜ」


なんでも犯罪歴なども記録されるとかでギルドカードに犯罪歴がない=清廉潔白と言えるらしい。もちろんギルドに知られなければ記載されないらしいがバレた瞬間にギルドから捕縛クエストが発生するとかなんとか。

厳しい処罰が信頼の一助となっているようだ。




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