盗賊戦その2
盗賊が纏めてこんがり焼けた所で立っているのは俺達だけになる。追撃も何者かが動く気配も無いので彼等は全滅したようだ。
「これで全員か?」
「俺が見たのは此処にいるヤツで全員だぜ兄貴」
何時の間にか兄貴呼びが定着してしまったランドから此処に倒れている盗賊達で全員であることがわかった。陣形を組んで戦ったりしていたのでもしかすると兵士達なのかもしれない。
「一人ずつは大したことなかったが・・・色々面白いことをするやつだったな」
「スキルを覚えているのかも知れませんね。とりあえず縛っておきましょうか」
15人を連れて行くのは無理なのでとりあえず持ち物を取り上げて一箇所に固めて縛っておいた。ロープはランドが持っていたがどうやら彼の実家はロープや紐を作る生産職からの成功者らしい。
「へえ、頑丈だな」
「そりゃもちろん、爺さんの代から俺達は紐を作らせたら天下一品でさ」
聞くところに寄ると草を編んで作るロープから糸を編んで作る紐や帯まで作れるらしい。
「なるほどな、見直したぜ」
「そうですか?小さい頃から沢山やってましたからねえ」
「いや、それじゃない、それもそうだが・・・よく盗賊に一人で立ち向かったな」
アキナとクラウディアが強いので勘違いしていたが彼女達は少女とはいえ訓練を受けたその道の専門家だ。しかしランドは所詮村の若者に過ぎないのだ。
そんな彼が盗賊に敢然と立ち向かうのだから無謀とはいえその勇気は評価してもいいだろう。
「えー、いやあ・・・そりゃここら辺にゃダチも多いし・・・村守りたかっただけなんすよナハハ!」
「流石に村長の息子ってか?大したもんだぜ」
「いやー!それほどでもないっすよ!ナハハハ!」
鼻をこすって照れるランド。最初はいけ好かないヤツだと思っていたがそれなりに骨のあるやつだったようだ。
やがてアクサ村を経由してやって来た騎士に盗賊を引き渡して俺達は後ほど懸賞金を貰うことになった。騎士達が何故此処にいるのか気になったがどうやら彼等も盗賊退治に来るつもりだったようだ。
「それでは盗賊のリーダーが銀貨20枚、その他のメンバーが銀貨5枚ということになります」
問題の有無を騎士が尋ねるので俺達は首を振って無い事を示し、後ほど銀貨を受け取ることになった。
「ここの盗賊はなかなか手強い奴らで困っていたんです」
騎士の隊長が言うには此処の盗賊はどうやら他国から流れてきた兵士崩れで騎士団の動きに多少の知識があったのか追撃をのらりくらりとかわしつつ商人や村人を襲っていたらしい。しかも騒ぎにならないように金品などの高価なものを極力狙わないようにしつつ食料品や生活品ばかり狙っていたのだと言う。
「しかし被害がどんどんと広域になっていたので出陣することとなりまして、何ヶ月かかるかと考えていたので此方としては大助かりです」
「ソイツは何よりだ、軍隊や騎士が忙しいのは良くないことだからな」
「全くです」
騎士の隊長さんはいい人だったらしく世間話に色々と事情を話してくれた。肩書きの割りに年齢も若そうに見えたのでそれなりに優秀なのだろう。
巡礼の旅をしていると言うと騎士さん達はアキナにお祈りをお願いし、アキナもそれを了承してドラゴンの言葉で彼等の無事と幸運を願う。
「有難うございました、私の名前はライアン・ルチルと言います。何かあったらまたよろしくお願いしますね」
隊長さんはライアンというらしい。丁重な挨拶をして盗賊を引き取って彼等は帰っていった。
「さて、お金を受け取ったらアクサ村を出るか」
急ぐ理由もないがかといってこのままのんびりする理由も無い。路銀も今回の討伐のお陰で余裕がでるだろうしな。
「兄貴達はどこか目指してるんですか?」
「ん?ああ、王都へ向かおうかと思ってるよ」
「そーッすか・・・じゃあ俺用事があるんで!」
ランドは少し考える素振りを見せるとすぐさま踵を返した。そしてぴゅーっと音が出そうな位の勢いで走り去っていった。
「どうしたんだアイツ?」
「さあ?」
俺達は一先ずアクサ村へ戻るとランドの子分にランドの無事を告げ、村へ戻るように伝えておいた。そして宿に戻ると噂を聞きつけた村人達に感謝の言葉を受けた。お布施代わりに食べ物を渡してくれる人達も居たので感謝して貰えるだけ貰うことにする。
「よっぽど困ってたんだな」
宿屋の女将さんが一喝するまで宿屋の食堂は大変な混雑で言葉だけの感謝に変わってからもちらほらと来る状態だ。
なんだか迷惑をかけっぱなしで申し訳なくなるが女将さんは相変わらず大抵の事は気にしないスタイルのようだ。
「はふぅ・・・疲れた」
それから午後からの診察を終えて部屋で一息つく。盗賊騒ぎが収まってから舌の根も乾かぬ内にけが人や病人がやって来た。
アキナやクラウディア目当ての野朗も多かったがそういうのは俺が丁寧に施術してやった。いい大人が擦り傷くらいで来るんじゃないよ。




