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ゴロツキ一行様

柄の悪そうな奴らはドヤドヤと宿に入ってくると入口付近のテーブルを占拠して注文もせずに大声で話し始める。

こそっと女将さんに目線を送ると視線に気づいた女将さんは手で小さくバツを書いて教えてくれる。こいつら見た目通りの奴ららしいな。


「ランドさん、此処が龍の巫女がいる場所ですぜ」

「随分と別嬪らしいじゃねえの」


柄が悪く、バカっぽい話し方の男がランドというらしい。そしてその取り巻きが4人ほど。どいつもアキナの容姿についてあれこれと話してはだらしない顔をしている。大きなものとは言え村は村、娯楽に乏しいのか龍の巫女の噂は既に広まっているらしい。


「ランドさんの愛人にはもってこいでさ!」


勝手な発言にイライラが募るがそもそも龍の巫女は人妻だぞ!随分とふざけた野郎だ。このままじゃ宿の女将さんも大変そうだし追い出すか。

立ち上がってバカ話を続ける御一行に近づくと笑顔で刺激しない様に言葉を慎重に選んで説得することにしよう。


「おい、田舎モン。身の丈に合った相手を選べよ、オマエはそこらへんの立木相手に盛ってるのがお似合いだぞ」

「・・・あ?なんだてめえ!」

「お前さんの曇り切った目ん玉を磨きなおして身の丈に合った相手を選べっていってんだよ。お前さんとじゃ龍の巫女様とは釣り合わんよ?どう見たって相手がサルじゃ巫女様が気の毒だろう」


連中の視線が一斉にこちらを向いたところで再びそう諭してやるとどういった訳か凄い顔でこちらを睨んでくる。説得は失敗のようだ。


「ランドさんは隣村の村長の息子だぜ!逆らったらタダじゃすまねえぞ!」

「国中で信仰されてる宗教の巫女様に手を付けようとしてる方がよっぽどタダじゃすまないと思うがな」


龍の巫女は権力から遠い立場を貫いている。清廉たれという始祖の言葉を律儀に守ってきた彼女達だからこそドラゴン達との交流も少なからず続いてきたのだろう。だがそれを理解できないバカは彼女達を弱い立場と勘違いするのだろうか?


「大体彼女は人妻だ。お前みたいなのが言い寄ったところで土台無理な話だろう」

「人妻?何でそんなこと知ってんだ?」

「彼女は二人連れだったって知ってるか?その内の男が彼女の夫だよ」


俺って言ったら面白いことになりそうだ。だがこのランドという男は鼻息を荒くして叫ぶ。


「夫か・・・関係ないぜ!龍の巫女アキナは俺がもらう!」

「そうかい」


呆れて物も言えない状況だ。コイツホントに何なんだ?流石に常識ってモンが無さ過ぎる。こういうアホな奴は躾ける必要がありそうだな。


「巫女様に手を出すってんなら黙っていられねえ、全員表に出ろ」


顎をしゃくって入り口を指すと一行は揃って怒り顔のまま椅子を蹴飛ばすようにして宿の入り口から出て行く。続いて俺が外に出ると全員が握りこぶしを作って今にも飛び掛ってきそうな勢いで待ち構えていた。


「五対一で勝てると思ってるのか?」

「お前等相手は一人も五人も同じことだろうよ」


そもそも体格差があるしな、今の俺はドラゴンだし。


「やろう・・・やっちまえ!」


ランドの言葉を受けて四人のゴロツキがじりじりと距離を詰めてくる。中には何処で手に入れたのか棍棒らしきものを携えている奴までいる。


「さっさと来い!来ないならこっちから行くぞ!」


俺は手近な奴に飛び掛って棍棒を奪うとそいつを滅多打ちにして黙らせる。頭がコブだらけになって半泣きで失神しているが死んでないのでセーフ。

いきなり武器持ちがやられて動揺したのかまごついている大柄な男の腹に棍棒を叩きこむと「うーん、おかあちゃん」と言いながらまたもや半泣きで倒れる。


「お前等勇んで出た割には全然大したことないな、やる気あるのか?」


ヤクザやゴロツキ相手に切った張ったをやって来た身としてはこいつらはてんでお話にならない。なんというか背伸びしてる子供のような感じだ。


「ち、ちくしょう・・・」


倒れた仲間を気にしながらも内心は敵わないと感じているのか残りのメンバーもランドも逃げ腰だ。


「ど、どうしましょうランドさん・・・」

「ちくしょう・・・こうなったら奥の手を使うぞ!」


そういうとランドは背中に背負った杖を構える。


「喰らえ!ファイアーボール!」


そういうとピンポン玉くらいの小さな火の玉がなんとも言えないゆっくりしたスピードで飛んでくる。手で石ころを投げるよりも随分とゆっくりだ。


「かかったな!ばぁぁくれつ!」


直後俺の目の前まで近づいて来た火の玉が突然破裂する。そして白い煙がもうもうと立ち込めて俺の視界を奪った。


「ゲホゲホ!なんだこりゃ・・・」


手を振って煙を晴らすと取り巻き達が倒れた二人を引き摺ってランドの傍まで戻ってきている。


「行くぜお前達!ヒール!」


ヒール、風魔法の初級魔法だったか。一人の体力を回復し、簡単な傷を治癒する魔法のはずだが驚いたことに殴り倒した二人がむくりと立ち上がる。


「これでバッチリだぜ!」


緑色の光が収まる頃には二人は完全に立ち直った様子でファイティングポーズを取っている。


「プランBでいくぜ!お前達!」


そういうと今度は横一列に並んだランド達は一斉に腰に下げた皮袋に手を突っ込む。そして此方に袋の中身を次々に投げつけてくる。


「イテッ!石ころかっ!イテッイテテ!」


バシバシと体に当たる石ころは思いのほか痛い。石になんか細工してあるなこれ!


「ランド様特性魔力付与の石はどうだ!謝るなら今のうちだぜ!」


思わぬダメージの理由は石ころに付与された魔力のせいらしい。小石のような大きさにも関わらず痛みは半端じゃない。近づくこともままならない猛攻に辟易する。


「このやろう!」

「ぶぎゃっ!」


状況の打開を試みて石を拾い上げて投げ返すと一人が頭に当たってうずくまるが・・・。それをリーダー格がすかさずフォローに入る。


「ヒール!」


ランドが治癒魔法を使用してすぐに体勢を立て直してしまうので石礫の猛攻はとまらない。存外有効な手段に俺は吃驚する。勝負は思わぬ長期戦になった。


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