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勘違いと夫婦の契り

「ちょっとまて、お前女だな?」

「そうですけど?」


きょとんとして小首を傾げるクラウス。どういうことだ・・・?


「フィアンセとかどうとか言ってたからてっきり男とばかり・・・」

「どうしてです?フィアンセは女性同士で行うものですよ」

「ちょっとまってくれ、頭が混乱してきた・・・婚約のことじゃないのか?」


そういうとクラウスは顔を真っ赤にして慌てて否定してきた。


「違いますよ!フィアンセというのは・・・」


フィアンセというややこしい呼び名の正式な呼び名は『フィアンセル・ル・ルントクリージの契り』と呼ばれる同性の友情を誓い合う儀式でその昔フィアンセルとルントクリージという変わった名前の二人(言い伝える場所によっては男性同士だったり女性同士だったりする)がこの契りを結んで夢を追いかけ、やがて歴史に名を残したとか何とかで子供達の間で流行っている約束事らしい。


「私もアキナについて行って各地を見て回りたいと思ってましたからね」

「なるほどな・・・ちょいと恥ずかしいな」

「護衛になったと言うことはあなたがアキナの旦那様になるんだね」


とりあえず愛されてるみたいで安心したよ、とクラウスは笑う。畜生、彼女にまでからかわれちまった。


「なるほど・・・そういうことでしたか」


アキナ達の元へ戻った俺達は説得を続けてなんとか冷静さを取り戻したカルネ老がクラウスの事情を理解してくれた。フィアンセの誓いをやるだけあって二人は幼い頃から仲が良かったらしい。


「けど、久しぶりに会ってみたら様変わりしてて吃驚したよ」

「それは私もだよ」


10年ぶりの再会に二人はきゃいきゃいと話し合う。ガールズトークに花咲かせる内にクラウスがとんでもないことを言い出した。


「アキナって初夜は何時したの?」


ぶーっ!とアキナと俺がシンクロする。何てこと言うんだこの子は。


「な、なななにを!?」

「いやさ、教会辞めたら僕無職だし・・・両親も面倒見てくれないだろうから着いていきたいんだけどさー」


やっぱり気になるじゃん?とクラウスは言う。どうやら俺が力になると言ったのをアテにしているらしいな。風と水に適性があるなら医師として雇っても問題はないだろうが・・・それが何故初夜の話しになるんだ?


「いや、同い年とは言え夫婦に着いていくわけだし間違いが起こるかもしれないじゃない?僕としては甲斐性がありそうな感じだし、頼りになりそうなシンゴと間違いが起こるのは歓迎だけど正妻より先に初夜を迎えるのは流石に気が引けるしね」

「何故俺がお前を襲う事が規定路線になっている?」

「あれ?こういうの興味ない?」


腕を組み豊かなバストを強調しながら小首傾げるクラウス。そう言われると辛いね。確かに好きだけどもさ。


「うーん、こればっかりは・・・アキナはどうする?この世界って多妻はありなのか?」


まあ俺人間じゃないし、最悪彼女達を養うだけの稼ぎを得れば良いだけだしぶっちゃけクラウスは見た目的にもかなりポイント高いしな。


「うーん、私は別に、だって他ならぬクラウスだし・・・シンゴ様が良いとおっしゃるなら」

「やった!決まりだね、アキナが正妻で僕が側室だ」


まるで貴族みたいだね、とクラウスは笑う。貴族?いいえ、ドラゴンです。

そして本日二回目の爆弾投下がカルネ老から告げられる。


「ならば初夜は龍の巫女として契約を済ませた新月に済ませてくだされ」

「なんか意味があるのか?」

「ハイですじゃ、初夜は新月の日と決まっておりますじゃ。新月は始祖様が夫と契りを交わし、新たな門出として出発した日と同じなのですじゃ」


その日に契ることで将来元気な子供を授かれるのだという。つまり験を担げってことか。そうなると新月は何時だ?


「新月は何時になる?」

「このルナダイヤルをご覧下され、この魔道具が新月が何時かを教えてくれますじゃよ」


ルナダイヤルと呼ばれた万年暦みたいな魔道具は月の満ち欠けを正確に計ることができるようだ。随分古びているところを見るとこれは脈々と受け継がれているようだ。どれどれ・・・黒い丸が徐々に上ってきてる様子が魔道具には記されている。


「黒い丸が浮かんできてるな」

「と言うことは今夜が新月の夜ということですじゃ」

「なにーっ!」


契約を交わしてから最初の新月に初夜を迎えないといけない、そしてそれが今日だという。いきなりすぎるだろう・・・。


「ほっほっほ、昔を思い出しますの。なに、私らは夕食後は炭焼き小屋に泊まりますでの、存分になさってくだされ・・・あ、昼ごろに戻りますので使った物は洗濯籠に移動させておいて下され、染み抜きの粉末もありますでな」

「生々しいからやめてくれ!・・・まあ気持ちは有難く受け取っとこう」


相手は美少女と言って差し支えないし、妻という立場であるので問題ない・・・はず。


それからはトントン拍子に話が進み、二人の新妻は近所の温泉へと一足先に向かい、俺はその間手持ち無沙汰ながらなんとなく二人を養っていくこととこれから始まるであろう旅へと思いを馳せていた。



「とうとうやって来たか」


太陽が沈み、漆黒の帳が下りる頃俺は一人居間で胡坐をかいていた。

カルネ老からくれぐれもと念を押され、アズ老人から無言のサムズアップと精力剤らしき丸薬を受け取って俺は戦いに挑むのだ。


『シンゴ様・・・いえ、旦那様・・・どうぞ』


木の戸板一枚に隔てられた寝室から聞こえるアキナの声に不覚にもドキリとする。湯上りの彼女はとても艶やかで美しかっただけに寝間着で薄着になったことを想像するだけで興奮してくる。さり気無く俺を旦那様と呼んでくれることも個人的にポイントが高い。


「それじゃあ今からそっちへ行くぞ」


声は努めて冷静に、されど体はもはや火に誘われる火取蛾の様にどこか落ち着かない。俺と二人を隔てる最後の一枚である戸を開いて寝室へと足を踏み入れると二人がやや緊張した面持ちで此方を見上げている。


「旦那様、どうかよろしくおねがいしますね」


薄い化粧をのせて本来の魅力に磨きを掛けたアキナが少し恥ずかしそうに、しかしながらうっとりとした表情で俺を見つめる。俺の事を好いてくれて居る事が勘違いや勘ではなく感覚としてハッキリと理解できる表情にこっちの頬も思わず赤くなる。


「旦那様、今日は二人ですけど・・・大丈夫でしょうか?駄目だったら・・・」


クラウスはどちらかと言うと緊張が勝っているようで活発そうな普段の姿からは少し想像できないようなか弱さを見せている。アキナよりも身長は低いとはいえ彼女も立派な女性としての魅力を備えている。なにより二人の抜群のボディラインをくっきりと浮かび上がらせる薄い半纏姿を見て駄目などとのたまう馬鹿がいるのか。


「アキナは言うまでもないがクラウス、いやさクラウディア、お前もきっちり抱いてやるから観念しとけ。どうせ終わる頃には朝だ」


彼女が男性の名前を名乗っている理由もバッチリ把握している。これはもちろん彼女の両親が悪い虫を遠ざける為の計らいで両親には他言無用の誓約書を交わして俺の正体をカルネ老を介して伝えてあるのでご両親も是非にと言ってくれた。

龍の巫女に関わる者は公には両親とも離縁しなければならないのでその事だけは残念そうにしていたが、それも形式上の事なので問題はない。


「はぅ・・・」


クラウディアは俺がそういうと観念したらしく潤んだ瞳を俺に向け、隣に座るアキナの手を握る。いじらしい仕草にアキナの微笑みが加わって俺も辛抱たまらなくなってきた。


俺はまずアキナをそっと布団の上に押し倒し、半纏の内側へと手を滑らせる。


「アキナ・・・」

「・・・旦那様・・・んっ」





こうして俺は二人と甘い初夜を堪能することができたが後日にアキナから「あの時一緒にクラウディアと初夜を迎えてよかったです・・・もし一人だったら・・・」と言われてしまった。

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