アキナのフィアンセ?・・・えっ?!
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俺はバカみたいな大声で叫ぶ声の主を他所にアキナと顔を見合わせる。彼女は声の主にとんと覚えがないといった感じで小首を傾げている。
「アキナー!」
年甲斐もなくイラッとして思わずアキナを抱き寄せる。すると彼女は俺の嫉妬に気付いたのかニマニマと笑みを浮かべて俺の方へ体重をかけてくる。
「シンゴ様はヤキモチ焼きですね」
「う、うるせえよ」
彼女ほど可愛い子を手放したいと思う男がいるだろうか。しかし美人はえてして玄関先で騒ぐバカのように厄介ごとにも巻き込まれやすいらしいな。
「誰だい!馬鹿な事を言ってるのは!なんだい、アクサ村の・・・」
意識がアキナに傾きつつある最中でカルネ老が玄関を開ける音が聞こえる。しまった、せっかく施術したのに雑務の負担を軽減して上げられるように努めなければ意味が無いと言うのに。しかしそんなことはカルネ老の態度が一変したことでそれどころではなくなった。
「帰れ!よくもそんな姿で此処にこれたもんだ!」
温厚な彼女から一度も聞いた事のない怒声に俺達は不審に思い、ようやく玄関に急いだ。彼女がそこまで怒るということは並大抵のことではない。
アズ老人が俺をペテンに掛けた時ですらあれほどの声を出したことはなかったはずだ。
「ちょ・・・落ち着いてください!カルネ婆!」
「うるさい!貴様のような恩知らずが馴れ馴れしく私の名前を言うんじゃない!」
駆けつけてみるとカルネ老が一人の修道士風の格好の少年に今にも掴みかからんとしている。少年はオロオロとするばかりで害意は無い様だった。
「一体何事なんだ?どうした・・・?」
俺が声を掛けると二人が同時に此方を向き、少年は笑顔でアキナを見ている。
「これはシンゴ様・・・」
「アキナ!会いたかった!」
少年は待ち人に出会えて幸せを感じているのだろうがそうは問屋が卸さないぜ。
カルネ老は厳しい表情のまま青年との間に割って入り、アキナを遠ざける。
彼女は既に俺の妻同然だし、両思いになったばかりだ。それに・・・。
「お前さん・・・教会の人間か?」
「え、まあ・・・一応」
修道服らしき服に描かれたマークは龍をあしらったマークで何故か花を咥えている。意匠そのものは悪くないし信仰の自由なんぞにケチを付ける気も無いが・・・相手が悪かったな。教会はアキナの両親の仇であり、カルネ老の娘と婿を死に追いやった元凶だ。とりあえずこのままこの男を放っておくのは夫としても龍の巫女の護衛としても頂けない。
「カルネ老、アキナを連れて部屋に戻っててくれ、こいつとちょっと話してくる」
「え?!ちょっと!」
「いいから黙って付いて来い!この野朗!」
少年を引きずって向かったのは彼女達が副業として行っている炭焼き小屋。人目の少ないこの場所なら事情を聞くのにぴったりだ。
「とりあえずお前さんがどういう関係か教えて貰えるか?」
「えっとアキナの幼馴染で・・・クラウスと申します」
「クラウスか、俺は信吾、お前さんなんで修道服なんか着てる?」
「これですか、実は僕念願叶ってとうとう治癒術師になれたんです!修道服なのは教会でその為の勉学を修めた証なのですよ!」
治癒術師とはこの世界で言うところの医師に近い存在で非常に難しい試験等をパスしないとなれないそうだ。彼は水と風の魔法に高い適性と弛まぬ努力により一足先に卒業し、10年近い勉学を終えて帰ってきたのだという。幼い頃に知り合ったアキナから両親がいつも怪我をしているので彼は子供心に治癒術師を志し、彼曰く治癒術師の名門と言われているようである教会の門を叩いたのだろう。そして行く行くはアキナのパートナーとして治癒術師の力を使い彼女をサポートしていきたいと考えていたようだ。
どうやら彼は信徒として教会に通っていたわけではないようだ。しかしながらこの様子だと彼女達の事情も全く知らなそうだな。
「いいかクラウス、今からチョイと悲しい話があるが・・・覚悟して聞いてくれるか?」
「なんでしょうか?」
不審がるクラウスに俺は俺が知りうる龍の巫女達と教会の軋轢、そしてアキナの両親を襲った悲劇とその犯人を告げる。
「・・・ということだ。カルネ老が怒った理由がわかったろ?」
「・・・」
まさか自分がフィアンセと嘯くほどに好意を持っていた女性と自分が10年近く勉学を重ねてきた学び舎が仇同士とは夢にも思わなかったと言った表情で此方を見ている。
「ぼ・・・僕は一体どうしたら・・・?」
目尻に涙を浮かべて震えるクラウス。自分が頑張ってきたことの半分が無駄になり困惑を隠せない様子だ。
「とりあえず教会とは縁を切れ、もしもアキナのことを大切に思うならそれが一番だ。もしも食い扶持が不安なら俺が力になってやるよ」
「教会と縁を・・・」
流石に悩むだろう。10年も居れば愛着だって沸くし、友達も師匠に当たる人物も居るだろうしな・・・それが学b----
「わかりました!僕教会から抜けます!」
「へぐむっ!な、なにっ?!」
唐突な決意に思わず変な声が出た。確かにやめろとは言ったが決断早過ぎないか?!
「いいのか?」
「いいんです!どうせ治癒術師は出世できませんし・・・」
そう言うと彼は教会に対して募らせていた疑問を教えてくれた。
曰く、入学したころは幼さゆえに気付かなかったが教会では何故か大司教が騎士団を運営しており修道士よりも重用されていること。そしてそれ故に本来要職につくべき修道士や治癒術師が何時までも出世できず食うや食わずの生活をしており、孤児院や医院につく術師が減っていること。それを省みるどころか一部の術師は騎士団に阿るために法外な値段で術を施し、売り上げを騎士団に上納していること。知らぬを良い事にクラウス達のような子供にも金儲けの片棒を担がせるような事をしているとのこと。
「もともと医術と治癒術を勉強したくて入りましたがそのような事情まで聞かされてはもう教会には居られません」
修道服を脱ぎ捨て、本来の彼らしい姿はオレンジ色のショートカットが眩しい活発そうな感じを受ける。下は小さな革鎧を身に纏ってはいるが薄着だ。
身長は低く小柄だが幼馴染とのことなのでアキナと同い年くらいだろうか、それくらいならまだまだ成長は期待できるだろう。線が細いのが気になる・・・が?
「おいちょっと待て、お前男じゃないよな?」
脱いだ修道服の下から覗いたのはアキナを上回るメロンでした。




