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龍の巫女

リイツ王国国王、リッテンは空士からもたらされた情報を受けて緊急会議を開いた。此度の宝石龍の降臨、吉兆か否か。そして凶兆であった場合の対策等々話は尽きないのである。


「宝石龍の処遇いかがするべきでしょうか・・・」


大臣の一人がそう呟くと皆一様に考え込む。


「軍をもって退けますか?」

「馬鹿な!それだけの軍備がどこにある!ましてやわが国の凶事を鎮める為に降臨なさったとした場合どうする!宝石龍が見限った土地は不毛の地となるのだぞ!」


将軍の提案に大臣が机を叩いて抗議する。ドラゴンの戦力は凄まじい、近隣に侵入されてしまった時点で戦闘になった場合被害は避けられないのだ。しかも軍をもってしたとして撃退できる保障もない。


「幸いにも宝石龍は知能が高く温和な性格と聞き及びます、刺激しないようにこの土地に降り立った理由を尋ねるしかありますまい」

「となると・・・その地に神官を派遣するのですか?」

「それ以外あるまい、それで神官の選定だが・・・」

「あいや待たれよ、これまでは龍と会話できる神官を輩出したとして寺院が権勢を振るっていましたがそれも今は昔、今の寺院は汚職が酷く龍の名を騙って賄賂が横行しているとか・・・ましてや彼奴等はリイツ王国出身の者を軽視しております」

「龍と会話できるかも怪しく、なおかつ協力を仰げる保障も無いでしょうな。対価に何を要求されるやら・・・それに我等には太古より民間に浸透してきた龍の巫女が居るではありませんか、その方に協力を仰いでからでも遅くありますまい」


あーでもないこーでもないと話が続いていたがまずは国内で対処しようという話で決定した。


「それでは我等はまず龍の巫女様を見つけ宝石龍の御意志を尋ねて頂くことにする。それでは会議はこれで一時解散とする」


国王の締めで会議は終了となり、一同は行動に移すこととなった。


龍の巫女。それはリイツ王国とその周辺国に古くから根ざした原始宗教の一つ。龍の意思を自然の意思とし、龍との会話能力を持った者を巫女として選抜し神託を受けることで災害の有無や時期を知り、見返りに豊作の際には祭りを行い、時には生贄や食料を捧げた事もあるという。しかし寺院と対立してきたリイツ王国を除く他の国家では龍を神の化身として権威の象徴として崇める寺院によって迫害され日陰者の扱いを受けている。


====================================


『おー、遠くにでかい街が見える』


俺はのんびり空を遊泳しながら辺りを練習を兼ねて飛行時間を延ばしていると遠くに街が見えた。一際大きな建物も見えており、まるでお城のようにも見える。


『流石にこの姿じゃあ警戒されるよな』


当然ながらこの格好で街に突入するほど馬鹿ではない。ましてや街の決まりごとすら知らない内から飛び込んでは騒ぎになるばかりで観光どころではない。

十分に距離をとってから着地するとキョロキョロと辺りを窺い体をできる限り小さくしながら山に登るまでに聞いていた曽祖父ちゃんの言葉を思い出す。


『えーと、人間に戻るには・・・えっと顔と体をイメージして・・・』


自分の顔をイメージをするって他人の顔をイメージするよりかえって難しく感じるな。ナルシストでも無いし、自分の顔をまじまじと見ることもないし・・・。


『ええい、とりあえず人間の姿だ・・・』


化け物にならなきゃ最悪どうとでもなる!なせばなるのだ。うーんと唸りながら魔力を巡らせながらイメージする。するとぐぐぐと体が縮む感触が起こり、少しずつ視線が下がっていく。


『いけたか・・・?」


手が人間のそれに変わり、体も人間になっていることを確認する。うん、尻尾もないし翼も収納されている。顔は見えないが形は変じゃない・・・はず。


「よし、これから街に行くか!」


そう思い、ふと道があった方向へと顔を向ける。すると・・・。


「・・・!」


すっごい吃驚した顔で此方を凝視しているお嬢さんが見ていることに気付きました。オーケー、慌てるな、クールになれ俺。もしかしたら何で此処にいるの的な驚きかもしれないじゃん。慌てるな・・・まだ慌てる時間じゃないぞ。


「見たのか?」

「い、いえ!そんなに見てません!」

「・・・何時からそこに?」

「えっ?!え・・・あ、その!あの・・・空から降りてきた時?」


それ最初からじゃねえかああああああああああああああああ!!!


「あ、あの!ドラゴン様!」

「はいそうです、私がドラゴンです」


わーい、隠したって無駄だあ~。こうなったら出たとこ勝負で乗り切るしかない。


「えっと此処にはどういった目的で?」

「気になるのか?」

「ええ、私、これでも龍の巫女ですから」


遠慮がちに尋ねる少女の言葉に気になるワードが。龍の巫女とな?出会い頭に人間に化けたのがモロにバレてしまったが彼女に事情を話しておけば人里に降りる時に有利になるだろうか?面倒に巻き込まれないといいが・・・。


「龍の巫女は何を仕事にしている?」

「えっと、ドラゴン様の言葉を聞いて皆に伝える役割をしています。貴方様は大丈夫みたいですけど中には言葉の通じない方もいらっしゃるので」

「ということは心を読み取ったりできるということか?」

「いえ、ドラゴン様の言葉を話す力を持ちます――――こんな風にです』

『なるほど・・・これでも通じるのか?』

『もちろんです』


ドラゴンと人間の言語は俺にというかドラゴンにとっては標準語と軽い訛りの方言程度だが人間にとっては日本語と外国語くらいの差があるのだろうか。龍の巫女とは異なる言語を話すドラゴンとの通訳であるだけでなく多少ならば力の譲渡を受けられる体質であるらしい。


『そういえば俺の目的だったか・・・強いて言えば漫遊だな、そのついでに荒れた土地があれば練習がてら改善して行こうとおもっている』

『なるほど、では災厄や疫病が迫っている訳ではないのですか?』


俺が頷くと彼女は安心した様に息をついた。どうやらドラゴンが降りてくるのは人間にとっても一大事件らしいな。


『ありえん、しかし・・・っとせっかく人型なんだから人間の言葉で話そう、落ち着ける場所があるなら尚良い。俺の名前は信吾、君の名前は?」

「えっと、私はアキナ・ベルガードです。それじゃあとりあえず近くにおばあちゃんの家があるのでそこで話をしましょうか」


森の真ん中で突っ立っているのも芸が無い。俺はアキナの案内に従って彼女の祖母の家にお邪魔することにした。


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