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彼と彼女の関係性  作者: 藤子
プロローグ
6/7

04 start side BRAVE honoka kisaragi


如月 ほのかは一瞬自分がどこにいるのかわからなくなった。


周りの家具は西洋風ので統一されており少しノスタルジックなイメージがある


そっかぁ、異世界だっけ


はっきりいえばいまだに信じる事ができないがこの世界には魔物とか魔族と魔王とかいてそういったものは剣と魔法で戦うんだそうだ。ほんとなんてファンタジー。

いまだに夢を見ていると錯覚してしまいそうになるがそんなこと考え出したら切りがない。

そういや昔、同じような話を聞いた。


ある男がある日、蝶の夢を見るけど果たして自分の夢なのか蝶の夢なのかわからなくなってしまうと言う話だっけ


ここに当て嵌めるならば、この世界は夢だと思っていたけど、ほんとは私達がいた世界が夢でこの世界が現実ってとこ-


そこまで考えて、私は小さな違和感を覚えた。

いや、恐怖だったかもしれない。

その時点でやめればよかったのに。


小さな違和感の正体に気づいてしまった私はたまらず走り出した。



小さな違和感はどうしようもなく胸を突く。

いつのまにか無意識に昨日別れた田中君の部屋へと向かう私を罪悪感と焦燥が襲う。

私はどうしようもなくひどい女だ。彼に確認して、彼が私の違和感気づいてない事を承知で彼に私が抱えきれないような心の重みを話す。

ほんと嫌になる。それに気づいている私も、それなのに彼に話そうとする私も、こうして後悔する事で彼に許されようとする私も。

でも一番嫌になるのは彼がそんな私を許してくれるという私の驕りだ。


彼の部屋についた。私は全く迷わず扉をノックし、返事を聞いた瞬間部屋に飛び込んだ。



田中君はベッドの上で眠そうにまぶたをこすっていて、私を認識して驚いたのか目をしばたせた。

私は迷うことなく彼に向かい、その胸に飛び込んだ。


田中君の胸の鼓動が聞こえる。飛び込んだ瞬間びっくっと体が揺れて数秒間固まってからゆっくり解れる。その後、田中君の腕が私の腰をあやすようにさすった。

その行為がまるで大丈夫って言ってくれてるみたいですっごく落ち着いた。

けど反対に自分の行いが恥ずかしくなってきて・・・


私の変化に気づいたのか、田中君は私の背中をさするのをやめ、私をベッドに進めると席を立った。

思わず手を伸ばした私に気まずそうな顔をするとちょっと雉を撃ちにといってそのまま行ってしまった。私、かなり恥ずかしい。


帰ってきた彼の手には2つのカップが入っていた。カップのなかには見慣れたTパック

どうやらたまたま持っていた物らしい


「・・・どうしたの?如月さん急に」


不安になった?っと聞いてくる彼はすごく優しい。私は自分勝手な自分に嫌悪しながらも彼に向き直る。


「・・・田中君は、その、地球にいた頃のこと、どれぐらい覚えてる?」


田中君はおかしそうに首をかしげた。


「そりゃあ、覚えてるよ。普通に、いろんなこと」

「ううん、そういうことじゃなくて、・・・田中君、家族の名前を覚えてる?」

「・・・え、あ。」


彼は今気づいたかのように目を見開く。

そうたぶん誰も地球にいたときの個人の名前を思い出せない。もちろん、一緒に召喚されたクラスメートや歴史上の人物、物語の主人公の名前などは分かる。でも家族の名前や、他クラスの友達、テレビ番組の芸能人とかそういう身近な物や人の名を全く覚えていない。

だからこそ召喚された時、帰りたい言う人が誰も存在しなかった。


「私、このことを知って怖くなったの。私の住んでたあの世界は夢で、こっちの世界が本当で。私達のあの世界は、家族は友達はただの夢で、虚構だったんじゃないのかって。そう思った瞬間私達はからっぽだなって。ただお腹の中にいたときの記憶を持ってる胎児みたいに。

ただそれだけの事なのに私は思わず誰かに縋りたいと思うほど不安だったの」


そう、ただそれだけ。たったそれだけだったけど、彼はそっかって言って優しく頭を撫でてくれた。


「如月さん、あのね。朝起きて一瞬ここはどこだっけって思ったんだ。そんでああ異世界かって思ったら、まるで世界に自分だけしかいないように感じて。でもその時、如月さんがきて抱きしめてくれて、すっごく落ち着いたんだよ。一人じゃないって思えたんだ。」


田中君はゆっくり私の頭を撫でながら話した。


「如月さんのおかげで君が感じた不安は僕には感じなかった。ありがとう。

だからもし、如月さんが俺に話した事を気にするならこれからそれに気づいちゃう子がいたら慰めてあげて。

大丈夫だよってさ、抱きしめてあげてよ。なんか変態みたいに聞こえるかもだけど如月さんに抱きしめられるとホッとする。親に抱きしめてもらってる気がするんだ」


そういって彼は笑った。どんな不安も吹き飛ばすようなとても、とても優しい笑みだった。


「あぁ!もうこんな時間。一回部屋に戻りなよ。早く準備しないと朝食食いっぱぐれるよ?」


ホッとするなら私なんかよりも彼の方がすごい。全部許された気分になる。

不安も後悔も嫌悪も洗い流すような、


朝食の行く為悪戦苦闘しながら寝癖を直そうとする彼を横で見ながら私も紅茶を飲み終え、扉に向かう


「和泉君、紅茶ごちそうさま。あと・・・」


名前を呼んだ事で驚いてこっちを見た彼をかわいいと思いながら、彼の目をみて話す。


「誰かに縋りたいとは思ったけど、たぶん和泉君がいなきゃ誰にも打ち明けられなかったよ。ありがとう。また、朝食で」


驚いた後照れたように頬をかいた彼を見て私は部屋をあとにした。


今日も頑張る。

彼の隣に立てる人間になれたらと思いながら、そう決意した。

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