03 start side BRAVE mizuki oya
クラス委員長である大屋 瑞樹は自分には才能があること理解していたし、それに自信も持っていた。だからこそ今この特殊な状況で何をすればいいか何をすべきかを理解していた。
だがしかし、彼はもはや自分の役目に疲れていた。特にこの自分達で完結した世界で見知らぬ、信用もできない周囲と交渉し、皆を引っ張っていくような、そんな面倒事をやるのはもっぱらお断りだった。だからこそ彼はいけないと思いつつその台詞に感謝こそ覚えたものの反抗なんぞ全くなかった。
「先生さぁ、何でまるで俺達のリーダーみたいに振る舞ってる訳?」
その声は和やかな夕食時、状況の確認を皆で行おうと発言をした先生に向けられていた。
栗坂か、まぁあいつの性格ならそうなるよな。
栗坂はまあ良くクラスに一人ぐらいいそうなちょいワルみたいな格好をしている奴だ。髪を少し茶色にしたり、制服を着崩したり細かな校則を破っているにも関わらず教師受け、特に体育会系の教師の受けがすこぶるいい。一般生徒のシャツが出ているのは怒る癖になぜああいう奴の態度はむしろ嬉しそうなのか。甚だ疑問に思うし差別に腹が立つ。
だがさすがに体育会系教師でない、むしろ数学の西山には嫌われていたようだった。
「何をふざけた事言ってんだ栗坂!今はそんなこと気にするとこじゃないだろ!俺はあくまで教師として、大人として!お前等を代表していただけだ!お前達が束縛されることを嫌うのもわかる。だが、とりあえず各自のこれからの行動が決まるまではお前達の面倒を見るつもりだ。」
聖女に見惚れていろんな情報をあちらに渡した癖に良く言うと思いもするが、さっきの王の間でのやり取りでさすがに恋にうつつを抜かしてこちらを省みないということもない。その点ではまだ安心していた。これからもとりあえず自分の出番はないだろう。
皆もとりあえず自分のこれから先を決めるまでは先生に身を任せようと思っているのか空気としては栗坂の分が悪くなっている。いつもなら俺が生徒と先生の反発をうまくまとめるのだが・・・
ぶっちゃけ、面倒なのだ
ここでもし、俺が栗坂と西山の間を持つとする。例えば
「俺もとりあえず先生に任せるべきだと思う。高校生といえど俺らはまだ子供だ。ここは交渉事や裏の読みあいに少しでも長けた先生が表に立ってもらった方がいい。ただ先生の方もわかってはいらっしゃると思いますが相手側と行うのは報告や連絡など俺達とあっちのパイプ役だけ行ってもらえますか?意見や俺達のこれからについてはその場で対応せずに、一度皆に相談してからでお願いします。栗坂もこれで文句ないだろ?こっちの自由は先生の一存で決めれなくなるし」 とか言ってみろ。
ここで俺はなりたい、なりたくないに関わらずリーダーにするんだったら俺にしようとか言う奴が出てくる。
はっきり言ってそんなことは御免だ。まとめるのがクラス規模でも結構疲れたのに更に食も文化も歴史も知らない土地で31人の面倒を見て復興の手伝いをし戦闘をこなし、それの指揮なんかされた日には魔族に殺される前に仕事でしぬ。
それもあの聖女って奴、絶対腹に一物抱えてやがる。そんな面倒事俺はぜったい嫌だ!
だからこっちをちらちら見てるクラスメートの視線をまるっと無視し、困った顔をしながら西山と栗坂の両者を交互にみる。ここで俺は無能の烙印を押されてやるぜ!喜べ、栗坂!
ふと視線を感じてそっちを見ると如月と
田中がこっちを見ていた。如月は苦笑してから親指立ててきた。やめろ、やらんぞ。それを見ていた田中が笑いながら西山と栗坂を指先し手で首を切る。死んでこいってことかお前。その時は覚えてろよ。ただでは死なん。田中が喜び過ぎで過労死する量の仕事押し付けてやる。
「・・・わかった、とりあえずはそれでいい」
そんな馬鹿やってたらどうやら栗坂がここは勝算が悪いと引き下がった。その際ちらっと俺を見てきたが無視だ無視。
その後西山の言った通り夕食で状況を整理した。その際、俺も如月も田中も発言はしなかったが会議は滞ることなく踊りながら終った。ただの報告だけにすべきなのに各自自分勝手に意見を言ってるから話の趣旨が変わりいらいらした。まぁ、俺は如月と田中の側に座り二人と話していたからほぼ聞いてなかったが、3人での問題や認識をすり合わせ終わった後も話が終らず、すっげー眠かった。
あと会議中ちょくちょく栗坂や西山がこっちを見てきてうざかった。
各自与えられた部屋に向かう途中、田中がモテる男は辛いな!とかいってきたから殴ってやった
はぁ、今日は散々な日だったが田中と話ができたのだけはよかったな
如月が気にするのもわかる。
あいつには何か人を引き付ける物がある。カリスマとかそういった物ではないが恐らくあいつと話をすると基本的に良い奴だと感じる。そういったオーラがある。俺は結構人の好き嫌いがあるがあいつには全く気にならない。
そういったところを如月も気に入っているんだと思う。
とりあえず今日はこのぐらいにして寝れないかもしれないが寝ておこう。
そう思いながら俺は目を閉じた。
以外なことに睡魔はすぐ側にいたようだった。