02 start side BRAVE izumi tanaka
この話は睡眠促進剤が入っております。
それでもいいよ!という心が海ほど広く深い方はお読み下さい
どうやら最近流行りの異世界転移らしい
田中 和泉はその現象をきちんと理解していた。実際のところは転移というより転生といったを方が正しい訳だが。
それでもいきなり召喚されたさい、彼は自分の状況をきちんと理解し、特に騒ぎ立てることなく比較的冷静に周りを見回していた。
だからこそ、ほとんど話たことのないクラスメートが声をかけてきたときも比較的落ち着いて話すことができた
「なんか、大変なことになっちゃったね、」
話かけてきたのは如月 ほのか、クラスでも肉食系の雰囲気のない落ち着いた大人の雰囲気を持つ美女として人気の女子だ。
「如月さんは結構冷静だね」
内心でそんな存在が自分に話かけてきた事に驚きとちょっとしたうれしさを感じながらも、カッコイイ姿を見せたくて少しぶっきらぼうに答えてしまった。
しょうがない、見えを張りたいお年頃なのだ。
「うん。ここで慌ててもどうにもならないし、ほらこの前避難訓練したでしょ?あの時はみんな平然としてたのにいざとなったらみんな慌ててて、なんかそのこと思い出しちゃって。むしろみんな慌ててるのに笑っちゃいそうだった」
「ああ、慌ててる人見ると結構冷静になれるよね。
で、何で俺のところに?」
俺だって別に俺に気があるとかそんな妄想はさすがにしない。夢を見て恥ずかしい思いをするのはごめんだ。
「ええっとね。今の状況とこれからについて話がしたくて、田中君なんか知ってそうだったし」
「いや、何か知ってる訳じゃないけどこういうファンタジーを昔読んだことあるから・・・ちょっとは力になれるかも?」
そんな話をしていたところで全体でも話がすんでたようで、とりあえず転移した魔方陣が書いてある場所から移動し、王の元へと向うようだ。
うわぁ、テンプレ。
利用されなきゃいいけど
「じゃあ移動するみたいだから、その話は歩きながら話そっか」
そういって床にちょこんと座っている如月さんに手を差し出したらきょとんとした顔をした。
しまった。つい、妹への癖が・・・!?
だけど、手を引っ込めようとした俺の手にすべすべ柔らかい手が包んだ。
「ありがとう、田中君って優しいね」
・・・そういってふふって笑う如月さんの方が優しいだろ・・・!!
◆◆◆◆◆
俺らが互いの認識を重ね合わせている間、教師が皆を代表して最初にであった女に名前を聞いていた。
女は聖女らしく詳しい事情は後で王の間にて説明するらしく、今の状況やこの世界について説明していた。
歩いている途中でみんな冷静になって来たようでたまに質問がでる。
別にいいけどイケメン教師。何故聖女の好きな物や趣味とか聞いてるんだ。今の状況的にもっと聞くことあるだろう
何というかあの聖女、嫌いだ。実際最近では聖女ビッチが結構ネットで人気だから気をつけたい。
というかあの聖女絶対ビッチだ。だってさっきからクラスのイケメンな奴の質問しか答えねえし。どんだけ狙ってるんだよ。
はぁ、これからが気が重い。
◇◇◇◇◇
聖女が止まり目の前の大袈裟な扉が開く。
人が押してるように見えないから魔法だろうか。
そして開ききったあと、中に入るように促される。こういう時良くテンプレで国に従うように魔法かけられたりするけど大丈夫だろうか。
そんな事を思いつつ無駄だと思いながらも警戒し中に入る。
中は大きな広間になっていてレッドカーペットの続く先には王冠を被った俺らと同じくらいの男が座っていた。
「良く来てくれた異世界の勇者達を。
どうか我々人類を魔族の猛攻から守って欲しい。」
やっぱりそのパターンか、自分の国の事は自分でなんとかしろといいたいが、結構この世界の人間は頑張ったらしい。いろんな国から集めた精鋭をぶつけたり魔族の国や村を何個か潰したり、果ては実際に魔王殺し成功させたりもしたそうだがその努力も虚しく魔族は人を襲うことをやめないのだそうだ。
人間というのはどうしても話を誇張する癖があるから全部の話をうのみにするわけには行かないが、一応話のつじつまは合うと思う。まあ、それでも他人に、それも異世界の奴にそれを頼むのはどうかとは思うが
クラスの奴等の反応は今のこの状況に興奮している者が半分、未知の状況に恐怖しているのが4分の1、とりあえず冷静を心がけている奴らが残りの4分の1ってとこだろうか
「なあ、お前等が頼んでる事ってつまりあんたらが苦労して倒している魔族共を倒せって事だよな、俺らの世界には戦闘なんて滅多に起こらなかったし、お前等の為に命懸けろとでも言うつもりなのか?」
ふむ、興奮している奴もさすがに戦闘に参加させられるのは不満らしい。まぁ、そりゃあそうだ俺だって死にたくない。日本国民として戦闘なんぞゲームだけで十分だ。
「その点は心配なさらず。わたくし達が求めているのは魔族との抗争ではなく共存ですわ。確かに時によっては戦闘をなさることになるとは思いますが、わたくし達は勇者側の戦闘の圧勝を持って魔族側に停戦の申し込みを致します。また、もちろん戦闘の無理強いはいたしませんわ。他に復興のお手伝いや、戦闘支援などをしていただければとは思いますが・・・無理矢理こちらに来ていただいているにも関わらずそのような無体なことはいたしません。日常の生活も、戦闘するしない、手伝う手伝わないに関わらず王城ですべて保証いたします。むしろ無理矢理連れて来てしまったのにこのような事しかできず・・・ほんとに何と言ったらよろしいのか・・・」
聖女はそういって泣き崩れたそこに慌てて王様や重鎮ぽい若いイケメン共が群がる。あー、やっぱ聖女嫌いだわ
だがなるほど、戦闘で圧勝をすることであちらに脅しをかける訳か。こいつらに国で大暴れさされるより今のうちに停戦を申し込んだ方が良くねえか、と。以外な選択だがそううまくいくのかね。
ま、その言葉を聞いて大半のクラスメートがホッとしてる。
それにわざとらしさはあるが美女が心を痛めて泣き崩れているのだ。これ以上無理な要求は謙虚さを備えた日本人には酷なのである。
にしても何かひっかかるんだけど・・・何だろう。小骨が喉にひっかかてる感じだ。こう、分かりそうでわからない疑問。いや、こう何か見落としてる?ううん?どっちかっていうと強い違和感がある。茶碗にパンが入ってる感じ、何だろう。スッゴく気になる
「あの、私達は役目が終われば元の世界には帰していただけるのでしょうか?」
そんな事を考えていたら如月さんがごく当たり前の質問をしていた。
でもなぁ、なんか言い方的に帰してもらえなさそうだったけど・・・
「申し訳ありませんが今のところその方法は見つかって下りません。なにせ古代遺跡から勇者を召喚する術を見つけだしたのは3年前。この術もまさに神の手にすがる気持ちで行った事なのです。」
巫女はさらに申し訳なさそうに俯く。その様子は神聖な物のように思えるのになぜか俺は酷く退廃的のようにも見えた。
「しかし我が国のみならずこのことにつきましては人間連合のすべての者達が気を配っております。世界中の文献を調べ魔族に滅ぼされた都市を取り戻せば見つかる可能性はございますわ」
聖女のその言葉にとりあえずではあろうが如月さんは納得したようだ。彼女は軽く頷いて一歩下がった。
「他に質問もございませんのでしたら今夜は急な事もありお疲れでしょうから皆様をお部屋へ案内しとうございます。
夕食は皆様でお取りなさいますか?」
「お気遣い、ありがとうございます。そうさせていただきます。」
代表して教師がそう言った。少し不満顔の奴もいるようだがおおむね皆賛成のようだ。
「ではそのように。
あと明日の予定を言っておきますわ
明日は皆様のお力がどの程度なのか判断したいと思います。文献にも異世界人は総じて力が強く特殊な能力を持つと書かれていますし、協力いただけないにしろご自分の力を正確に理解すべきだと思いますわ。この世界は何かと物騒ですし。」
「分かりました。ただそれを受ける受けないは個人の判断に任せようと思います。」
その返事を聞いた聖女は小さく頷き、視線を王へと向ける。
「異世界の勇者殿、大儀であった。できれば皆が皆我々の世界を助けていただける事を期待する。今日は良く休み、明日に備えるよう。」
その言葉で今日は解散となった。
さて、俺はどうすべきかね
自分達の身の振り方を如月さんと話してながら歩いていた俺は会話の途中で、抱いた疑問をいつしか忘れ去っていた。
・・・そのことがあとから俺にのしかかって来るなんて思いもせずに