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なぜかうちの店が異世界に転移したんですけど誰か説明お願いします  作者: 蒼井茜


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久しぶりの料理と……

4月13日2度目の更新です。

 着替えて台所に行くと亮君がたっていました。

 そして物悲しそうな表情をしています。


「どうしました? 」


「いや……忘れていたんだけど今この家の中に食材があまり残ってなかったんだ……」


 そういえばお店を開いていないから食材の仕入れもほとんどストップしていたんですよね。

 しいて言うなら私が食べる分くらいでしたけど、毎日仕入れるわけではなく数日に一回という感じでしたし、確か明日がその仕入れ日だったはずですから……使える食材はほとんどないでしょうね。

 私が眠っていたころは毎日食材が届いていたので、それはサラさん経由であちこちに売ったみたいですけど。


「今は何が残っていますか? 」


「ベーコンと、チーズ、それから瓶の牛乳が三本とバター。

あとは米が一袋と今朝の残りが一合くらいかなに干した貝柱と鯖の水煮の缶詰かな」


「あら、結構残っているじゃないですか。

それだけあれば十分ですよ、今すぐに作れるのは一品くらいしか思いつかないですけど」


 まずは……今朝の残ったご飯を確認します。

 炊飯器は止めてあったみたいで、冷ごはんですね。

 それから食材をいくつか……今回はベーコンで行きましょう。

 フライパンにバターをいくらか入れて、木べらで伸ばしながら温めます。

 次に一口大に切ったベーコンを投入してかりっとするまで焼きます。

 そこに黒胡椒で風味をつけて、牛乳とご飯を投入。

 しばらく待つと牛乳がふつふつと沸騰してきますので、十分に温まったらチーズをちぎりながら入れて、全体にとろみがついたら塩で味を調えて……ちょびっとお醤油も加えて風味を増しておきます。


「本当は玉ねぎとかほうれん草も入れたかったんですけど……これでひとまずの完成ですね。

ベーコンリゾットお手軽風です、あればバジルとかパセリを添えると綺麗に見えるんですけどね」


 お皿によそって、亮君とアスロックさんに差し出します。

 それから私の分は小盛にして、残りはフライパンごと寝室に運びます。


「ニルセンさん、あまり多くはないんですが食べますか? 」


「是非いただこう! 」


「えーと熱いんですけどどうします? 」


「かまわぬ、我が口内にそれを流し込めばよい」


 そう言って大きく口を開けたニルセンさんは、赤ちゃんのように料理が運ばれるのを待っています。

 なんだかこうやって考えると可愛らしいですね。


「いきますよー」


 そう言ってからフライパンをひっくり返して、スプーンでそぎ落としていきます。


「ふむ、牛の乳をふんだんに使った料理……これは豚の燻製か……実に美味なり! 」


 喜んでいただけたようで何よりです。

 それではそろそろ私もいただきましょう。

 亮君が折り畳み式のちゃぶ台を準備してくれていましたし、、アスロックさんと亮君と並んでいただきます。


「ん、もうちょっと鈍っているかなと思いましたけど案外うまくいきましたね」


「三つ子の魂百までっていうしね」


「でもちょっとベーコンの切り方が雑でした。

それにチーズの量もちょっと少なかったみたいですし……胡椒ももう少し風味を効かせるべきでしたね。

これは少し特訓が必要です、亮君今夜から特訓のお手伝いお願いしますね」


「……ほどほどにね? 」


 そんな会話をしながら食べ終えてしまい、洗い物をしていると階下からバタバタという足音が聞こえてきました。

 ずいぶん慌てた様子ですけど……どちら様でしょう。


「蒼井! 」


 台所に飛び込んできたのはサラさんでした。

 鬼のような形相、とはこういう場合も使えるのでしょうか。

 随分と慌てた様子です。


「料理を作ったんですって?

ならお願い、ケーキを、ケーキを作って! 」


「け、ケーキですか? 」


「そうよ、貴女からもらったレシピの通りに創らせてもみんな失敗するのよ。

焼けすぎたり生だったり、ぱさぱさだったり甘すぎたり、どうしてもうまくいかないの! 」


「……えーと計量ってどうしてました? 」


「正確に測ることができないから料理人の裁量でやったわよ? 」


「あの、お菓子作りって計量はしっかりやらないとほとんど失敗してしまいますよ? 」


 特にケーキはスポンジを使いますからね。

 その辺りはしっかりやらないと……。


「むぅ……でも蒼井の世界の重量とこの世界の重量ってどのくらい違うのかわからないのよね……。

ねぇ今度比べてみることはできないかしら」


「えぇいいですよ」


 アフターサービスというのは必要ですからね。

 それに私もこの世界では1gがどのくらいの重量にあたるのかが気になっていますから。

 

「よし、じゃあその時はお願いね。

でも今はそれよりも、ケーキを所望するわ! 」


「……品切れです」


 えへっ、とかわいらしく言った瞬間でした。

 両肩をがしっとつかまれました。

 その手をたどっていくと涙目のサラさんが……ちょっと罪悪感がありますね。


「本日はケーキの材料がないので……明日になれば食材もいくつか仕入れるので……」


「明日……明日ね、わかったわ!

お願い蒼井、明日ケーキを作ってちょうだい!

お礼は何でもするわ! 」


「わ、わかりましたから、ケーキの材料も注文しておきますからとりあえず落ち着いてください! 」


 がっくんがっくんと揺すられたせいで酔ってしまいました。

 サラさんのケーキに対する執念は目を見張るものがあります。


「約束したわよ、じゃあ明日のお昼頃にまた来るわ。

あ、あと薬飲んだらしいわね。

もうすぐお見せも復活でしょう?

その時は改めてお祝いさせてもらうから覚悟しておきなさい! 」


「あ、あはは、お手柔らかにお願いします」


 私が言い切る前に階下に消えていったサラさんは、今日も絶好調でした。

 でもちょっと忙しそうでしたね。

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