亮平の眠り
蒼井茜の一人称視点に戻ります。
中継ぎの話となるので短めです。
「蒼井、失礼するわよ」
むっちゃん、東先生の二人と人生ゲームを楽しんでいるとサラさんがノックもせずに入ってきました。
いえ、ノックしていないのは別にいいのですが問題はその手に持っているものというか人というか。
とにかく、サラさんは引きずるように亮君を部屋に運び込んできました。
なんでしょう、体格差とか筋力の問題もあるのでしょうからここまで成人男性1人を連れてきたというのは十分にすごいことなのでしょう。
だけど階段とかまで引きずってきたのかなと考えると……ちょっと亮君がかわいそうに思えてきます。
まあ酷い目に合っていようと、無事に戻ってきた以上当初の予定通り目を覚ましたらお説教ですけどね。
「あの……サラさん、これは? 」
「亮様がちょっと無理をしていたから寝かしつけて引っ張ってきたのよ。
それより何この騒音は……センスのない音ね」
む、この曲結構好きなんですけど……そんなにセンスないでしょうか。
ちらっと東先生を見るとあいまいな笑みを返されました。
むっちゃんを見るとさっと目をそらされました。
……しかたない、クラシックに切り替えましょう。
「これならいいわ、きれいな音。
ヴァイオリンって言ったかしら、一度直に聞いてみたいものね。
と、そうじゃなかったわ。
亮様はここに置いていくから明日の夜までは寝かせておいて。
それとこれから少し騒がしくなるけど、あんた達は気にせず寝ていなさい、いいわね」
サラさんの気迫にはい以外の答えが返せませんでした。
まあ亮君はこのまま一緒に寝てもらいましょう。
東先生とむっちゃんは今から帰すわけにもいかないようなので、お父さんとお母さんの部屋を使ってもらいます。
「それにしても……亮君の寝顔見るのってめったにないですよね……。
記念に写真撮っておきましょう」
枕元に置いてあった二つ折りの携帯電話でぱしゃりと写真を撮ります。
スマートフォンとかは友人に使わせてもらったこともあるんですが、いまいち使い方がわからないんですよね。
あとタッチパネルが反応してくれないと個人的に悲しくなります。
年齢的なものもあってか、ATMとかがたまに反応しないと焦ってしまいますし……。
「う……ん……」
おっと、これ以上は起こしてしまいそうですね。
とりあえず電気と音楽を消して、横になってから亮君の背中に手を回します。
髪がサラサラしていますね、今夜はちゃんとお風呂入ったみたいですね。
あれ……でもこの香り……私のシャンプーと同じ……?
この前まで亮君は別のシャンプーをこちらで用意していたとはずなんですけど……。
まだストックもあったと思いますし。
いえ、別に同じのを使ていたとしても困らないんですけどね。
あまり香りが強いのもお店的に問題ですし、それほど拘りがあるわけでもないんですけどね。
そんなことを考えながら意識を微睡に預けることにしました。
明日は亮君にお説教をして、ゆっくり休んでもらって、それからむっちゃんと東先生を交えて少し遊んだりご飯を作ったりしましょう。
そろそろ料理を忘れてしまいそうですし。
……むっちゃんのアレンジだけは阻止しますけどね。
それと、サラさんからもお話しを、聞けたらいいですね。




