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見張り?

2月27日 2回目の投稿です。


三人称視点の投稿となります。

 寒空の下、亮平はマグカップに注がれたコーヒーを飲みながらそれを待っていた。

 そうして、居酒屋の戸口に座り込んでいた亮平の下に一つの影が近づく。


「異常はなかった」


「そうか、すまないな駆り出して」


「気にするな、俺とお前の仲だろ」


「どんな仲だ」


 そう言って答えた亮平に影、もとい赤い鎧を身に纏ったジョナサンは煙草を取り出そうとして懐に戻す。

 歓楽街としての発展がはじまっていたが、先日蒼井が襲撃された事件をきっかけに人の往来はめっきり減っていた。

 それに合わせて人々の生活も、夜は火を消し夜の闇に任せて目を瞑り、翌日無事に目を覚ませることを祈る生活を送るようになっていた。

 それは今までのような、夜であろうとも酔っぱらいが肩を組み芸人たちが路上で技を披露し、商売人は酔っぱらいにふっかける、そんな生活に比べて静かで、暗いものだった。


「ちっ、煙草もろくに据えないほど暗いってなんだよ」


「気持ちはわかるがなぁ……」


 そう言ってコーヒーを一口すすった亮平はじゃりじゃりという音を耳にする。

 

「そっちはどうですか、ヴェリスさん」


「何もない、それよりサラ様が話があるそうだ」


「サラ嬢が……?

わかりました、裏口ですか? 」


「あぁ、いってこい」


 その言葉を受けて亮平は立ち上がり、コーヒーをジョナサンに押し付けて見せの裏手に回っていった。

 蒼井が倒れるまでは見事な花を咲かせていた植木鉢が、今は無残に雑草に包まれている。

 植物の手入れなどを知らない亮平が水だけは欠かさず与え続けた結果だったが、それよりも重要なのはサラのことだ。

 店の裏口を守っていたサラは、自発的に守護を申し出た。

 その際に巻き込まれたのがジョナサンとヴェリス、さらいについでで巻き込まれたヴェリスの部下たちであり、またその際に様々な手続きに追われたサラの父と国王がいたことは表ざたにはなっていない。


「お呼びかな、サラ嬢」


「えぇ、一つ提案なのだけれどそろそろ守りから攻めに転じてはどうかしら」


「攻め……? 」


「そうよ」


「どんな攻めですかね? 」


「お店を開ける」


 サラの言葉に亮平は一度天を仰いで、首を傾げる。

 何を言っているんだ、という思いとその意味はいったいなんだという考えが交差する。

 とにかくそれらの意味を理解しようとして、十秒ほど考えて亮平は口を開いた。


「ごめん、どういう意味」


 あっさりと降参した亮平だったがサラはにこりと微笑んでその額を小突いた。


「亮様は少し疲れすぎています。

いつ来るともわからない敵を見張って、無駄に精神をすり減らしています。

ついでに抱え込みすぎているので頭も回らなくなっています。

なのでまずは落ち着きましょう」


 そう言われて頭をかきながら亮平はバツが悪そうにしていた。

 反論しようにも、すべて正論であり何も言い返せなかったからだ。


「図星見たいですわね」


「あぁ、うん、えと……まあ確かにちょっと、疲れているかな。

茜さんがいつ目を覚ますかとか、敵がいつ来るかとか、いろいろ思うところもあったし……」


「そうでしょう、なのでまずはこちらが休めるように時間を作ります」


 時間を作る、それはたしかに今の亮平に必要なことだった。

 しかし重要なことというのは何時であっても一番難しいことである。


「まずは相手をゆすぶりましょう。

この自粛しているのか怖がっているのか知りませんが、引きこもっている状況の改善から」


「そうは言うが……」


「蒼井の持っている本であればここは不敵に笑って、お任せあれといってのけるところでしょう」


「……任せてもいいのかな? 」


「もちろん、とりあえず先ほどヴェリスには集会に回している兵士と非番の兵士を呼ぶように命令しました。

合わせて件の大道芸団に、商人たちをたたき起こして連れてくるようにともね」


 そこまで聞いて亮平はある程度、サラの考えを理解してしまった。

 この女は人々が敵からの襲撃に恐れている現状に無理やり人材を投入して盛り上げてしまえという、いわゆるサクラを使ってしまうという作戦を講じていた。

 それがどこまでうまくいくのか、という部分はあるが一度は活気の失せてた場所に再び火がともっていればそれは警戒か動揺を誘うことはできるだろう。


「……でもそれ俺たちが休める理由にはならないよね」


「なりますわ、なぜなら」


 その瞬間亮平は首に衝撃を受けて地面に倒れ伏すこととなった。

 それから数秒、途切れそうになる意識をつなぎながらサラの言葉を聞いていた。


「見張りの人数が結果的に増えますので一人くらい抜けても同ということはありませんわ」


 そう言いながら首筋に充てられたサラの手の冷たさを感じながら一瞬の息苦しさと同時に意識を手放すこととなった。

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