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なぜかうちの店が異世界に転移したんですけど誰か説明お願いします  作者: 蒼井茜


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8/88

出禁

 あれから家に帰って鍵をかけてから仕込みをしてすぐに寝てしましました。

 慣れないパーティやらダンスやらで疲れていたんだと思います。

 

 翌朝はいつも通り6時に起きて、洗濯機をかけて植木に水やり、お店の準備と進めていたら亮君が来ました。


「おはよう、蒼井さん」


「おはようございます亮君」


 朝の挨拶は大切です。

 挨拶するだけで職場の雰囲気というのは格段に良くなる物です。


「それじゃあ、今日はお仕事を覚えてもらいますね。

お皿の洗い方からお客さんへの対応までみっちりと教えさせてもらいますからね」


「よろしくお願いします先生」


「はいよろしい、ではまずお皿ですがこのようにまとめて……」


 まずは洗い物から、順に接客までを教えていきます。

 接客をした経験はなくても、接客される側、つまりお客さんとしてお店に行ったことはあるため呑み込みも早いです。

 ゴミ捨てなんかも結構面倒くさいのですが、一定期間ごとにゴミ箱が空になるのはうれしい特典ですね。

 今のところ一週間ごとなのか数日なのかひと月なのかわかりませんが、昨日のごみはそのまま残っていました。


「蒼井さん、これはどうすればいい? 」


「あぁ、それはあそこに置いてください。

それとお肉などの生ものは早めに冷蔵庫へ、冷凍庫だと解凍に時間がかかってしまうので気を付けてくださいね」


 質問も積極的にしてくれるので非常に助かります。

 そうこうしている間に11時を過ぎてしまいました。


「亮君、お昼ご飯は何がいいですか」


「おひるか……精をつけるために肉料理なんてどうかな」


 お肉ですか、私は小食なのですが亮君は男の子ですからね。

 少し多めに作りましょう。

 生姜をすりおろしたものとスライスした物を用意します。

 それを醤油ベースのたれに漬け込んで、お肉にかけながら焼いていきます。

 本当なら漬け置きした物を焼くんですけど、今回はお昼まであまり時間がないので簡易的に作ります。

 

 それからお味噌汁を温めてキャベツを千切りに、付け合せにコーンをバターで炒めて醤油をちょっぴり垂らして風味をつけて、最後に盛り付けて完成です。

 口休めに御新香を小皿に載せておきます。


「では亮君、私は席に着きますのでお客さんだと思って接客してみてください」


「了解。

えーとまずはお盆に料理を乗せて……お待たせしました。

ご注文の生姜焼き定食です」


「亮君、ご飯とお味噌汁の位置が逆です」


「失礼いたしました」


「よろしい、完璧とは言いませんが問題はなさそうです。

リカバリーも及第点ですね。

では熱いうちに食べてしまいましょう」


「ふぅ、んじゃいただきます! 」


 そう言って亮君はまずお味噌汁に手を伸ばしました。

 それから御新香を一つ齧って、生姜焼きを口に含みました。

 味わっているのでしょう、何度も咀嚼してから呑み込みました。

 

 それからもう一度生姜焼きをつまんで、今度はご飯に載せてかきこみました。

 もうなんというんでしょうか、この愛犬が餌をがっついているような。

 そんな光景を空視します。


「美味いわ、マジ美味いわ。

日本食最高! 」


 生姜焼きを日本食と呼んでいいのかは甚だ疑問ですけど喜んでもらえたなら何よりです。

 それにここまでおいしそうに食べてもらえるなら料理人冥利に尽きるという物です。


 結局それから亮君は二回おかわりをして、満足したようです。


「あー満腹だ。

御馳走様」


「お粗末さまでした、では亮君。

研修の続きです。

お皿を下げるところから、後片付け、お客さんが帰った後の対応までやってみてください」


「はーい、こちらおさげしてもよろしいでしょうか」


「どうぞ」


「失礼します」


 ここまでは問題ありませんね。

 ではその後は……あらら、真っ先に皿洗いにうつってしまいました。

 ダメとは言いませんけれど周りの状況を見て動いてもらう必要がありますからね、すこし意地悪してみましょう。


「お会計お願いします」


「あ、えっと、はい! 」


 そう言って亮君は今しがた濡らした手を拭いてレジの前に立ちます。

 このレジ、今は役に立たないんですよね。

 日本円換算だし、硬貨の大きさの問題で収納できないんであまり役に立たないんですよ。


「おいくらですか」


「えーと生姜焼き定食が一皿500円だから……銅貨3枚です」


「はい、どうぞ」


「ありがとうございました、またのご来店お待ちしております」


 ふむ、まあいいでしょう。

 ただ注意する点はいくつかありますね。

 お店を出たふりをして片づけの様子を見ると、やはり先に洗い物を片付けようとしました。


「亮君、優先度で言えば洗い物は最後でいいですよ。

この場合はお皿は水につけておくだけで、お客さんの様子とかを確認してからの方がいいです。

でないとさっきみたいに濡れた手で御金の受け渡しをすることになりますから」


「わかりました」


「では再開してください」


 そう言って手を叩くと亮君はテーブルの片づけを始めました。

 

「丸く拭かない、ちゃんと四隅も拭いてくださいね」


「はい……スパルタ」


「なにかいいましたか」


「いえなにも」


 実はちゃんと聞こえていたんですけどね。

 でもこのくらいはスパルタのうちに入らないと思いますよ。


「うん、よろしい。

では皿洗いを……っと、もうこんな時間ですか。

衛兵さんが押し掛ける時間ですね。

亮君は皿洗いの続きをお願いします。

私は暖簾を出してきますから」


「はいはーい、一応気を付けてね」


「大丈夫ですよ、軒先に出るだけだし引き戸は開けっ放しにしておきますから」


 そう言って外に出た瞬間でした。

 ぼふっという感触と共に壁に頭をぶつけました。


 見上げるとそこにはでっぷりとしたガマガエル……ではなくニキビと脂汗を大量に浮かべる男性が立っていました。


「失礼しました」


 一言謝罪を入れてから背を向けて暖簾を掲げた瞬間、お尻を撫でる感触。

 確かめるまでもなく今のガマガエルの仕業でしょう。


 居酒屋さんではよくある事なので無視して店に入ります。

 するとガマガエルも私の後に続いてはいってきました。

 失礼なあだ名ですけどお尻を撫でたことの対価です、直接言わないのでこの程度は許してもらいましょう。


「いらっしゃいませ、お好きな席にどうぞ」


「ぐひひ」


 ガマガエルは奇妙な笑いを浮かべてカウンター席に座りました。

 それからぞろぞろと衛兵さんが入ってきましたが、ガマガエルを見つけると敬礼して出て行ってしまいました。

 なんでしょうこれは、営業妨害でしょうか。


「貴族のコメリダ・ベリス・エルメジアですよ」


 こそっと亮君が教えてくれました。

 まあ……素行がよくないというのは手に取るようにわかります。


「ご注文をどうぞ」


「読めん」


「では召し上がりたいものはございますか」


「肉じゃ、肉を持ってこい」


「お肉ですか、現在取り扱っている物ですと生姜焼き、かつ丼、焼き鳥、牛丼、肉じゃが、から揚げですね。

このような物が食べたいとご要望があれば合わせたものを作らせていただきます」


「全部じゃ」


「……かしこまりました、亮君は肉じゃがと牛丼を弱火で温めて。

それから焼き鳥が冷蔵庫に入っているから、タレのはいったトレーと何も入っていないトレーを一つずつ出しておいて」


 亮君に指示を出して手伝ってもらいます。

 そうしている間に焼き鳥を火にかけて、今朝漬けた生姜焼き用の肉を炒めます。

 それからキャベツの千切り、これも昼食の時に多めに切った物を用意して、トンカツも冷蔵庫から出した物を軽くを解凍します。

 凍っているわけではないので短時間常温で放置しておけば大丈夫です。


「亮君、牛丼と肉じゃがあがり」


「お待たせしました、肉じゃがと牛丼です」


「ぶふぅ」


 ガマガエルが一声鳴いてから出した料理を手にがつがつと食べ始めます。


「亮君、卵溶いておいて。

あとからあげレンジにお願い。

おまたせしました生姜焼きと焼き鳥です」


「ぶっひっひ」


 またお尻を撫でられそうになったのでさっと躱して厨房に戻ります。

 あとはトンカツを鍋に入れて、溶き卵と醤油、みりん、砂糖を混ぜた卵を半分流し込みます。

 その間にチンっとレンジが音を立てたので亮君に目配せして取出し、盛り付け用のお皿に移します。

 ある程度かつ丼用のカツと卵が温まったところで残りの卵を流し込んで、ふわふわとろとろに仕上げます。


「どうぞ、からあげとかつ丼です」


「ぶひゃひゃひゃ」


 狙い澄ましたように胸を撫でられそうになったのでまたさらりとかわします。

 少々不服そうな顔が見えましたけど無視してお冷のお変わりを持っていきました。


 それからわずか五分ほどで全て平らげたので、お皿を下げに行きます。


「こちらお下げしますね、他にご注文はありませんか」


「ふむふむ、お主」


「はいなんでしょう」


「注文じゃ、お主の事が気にいった。

わしの嫁に来い」


「ふふふ、お断りしております。

残念ながら私はメニューに載っていませんので」


「知らん、来い」


 そう言ったガマガエルに腕をつかまれました。

 ん、力が強くて振りほどけそうにありません。

 それ以前に振りほどこうとしてはいけないいんですけどね。


 お客さんですから下手な事をしてけがをさせたら問題ですからね。

 こういう時は手首と肘の間位を指二本で強く抑えます。


「ぶひゃ!? 」


 電気が走ったような痛みだったと思います。

 思わず手を放したガマガエルに微笑みを向けながらお皿を持って厨房に戻りました。


「蒼井さん何やったんですか? 」


「ここにツボがあるんですよ。

あとでやってあげましょうか、結構痛いですよ」


「……いや、やめておきます。

あと蒼井さんを怒らせるようなまねはしないように気を付けます」


 力が無くても抵抗する手段というのは結構ある物です。

 護身用として使えるほどの物はありませんが、お店の中で酔っぱらったお客さんを嗜める程度の事はできますからね。


「亮君、ちょっとの間お客さんの対応お願いしてもいい。

ちょっとお米用意しておきます」


「わかりました」


 亮君がガマガエルの対応をしてくれている間にお米を研いで、使っていなかった炊飯器にセットします。

 するとお店にガシャンという音が響き渡りました。


「どうかなさいましたか」


 すぐに確認に行きます。

 すると亮君が頭から水をしたたらせて立っていました。

 どうやらガマガエルがコップを投げつけたようです。


 地面には割れたコップの残骸が散乱しています。


「蒼井さん、奥にいてください」


「お主!

わしの物になれと言っているのがわからんのか! 」


 あぁ、なるほど。

 ガマガエルが癇癪を起こしたんですね。


「お客様、本日の御代は結構です。

どうぞお引き取りを。

それから今後当店への入店をお断りさせていただきます」


 そう言った瞬間の事でした。

 椅子に座ったままの姿勢でガマガエルが入口に向かって吹き飛びました。

 そして閉じていたはずの引き戸がガラリと開き、ガマガエルが飛び出すと同時にぴしゃりとしまってしまいました。

 その後にドンドンガンガンと音が聞こえますが大きな打撃音の後に引きずったような音がして、静かになりました。


「……亮君見てきてください」


「いえいえここは店主である蒼井さんが」


「いやいや、私護衛対象ですよね。

だったら亮君が適任ですよ」


「……ちくしょう」


 ぼやきながらも亮君は外に出てきょろきょろと辺りを見渡しました。

 それから何かに気が付いたようで、私に待っていろとジェスチャーをして外に出ていきました。


 やる事もないので今のうちにテーブルを拭いてしまいましょう。

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[気になる点] 最初からツッコミ所満載やけど、いや亮君国王からの指名で勇者で護衛よね? 意味なくない? そこの設定が仕事しないなら貴族の設定意味なくね?
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