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お見舞い?

 あの後は皆さん口々に見舞いの言葉を口にして帰っていきました。

 亮君はおかゆを作ってくれたのですが、それからはちょっと用事がといってお出かけしてしまいました。

 ちょっと寂しさを感じていたところ、亮君に頼まれたということでむっちゃんと東先生がお見舞いに来てくれました。


 そして、暇を持て余していた私の遊び相手を務めてくれました。

 カツン、カツンと手に持った黒いお馬さんを目的のマスにポンッとおきます。


「あまいよ」


 そう言ってむっちゃんはお馬さんをどかして白い兵士をそこに置きました。

 あぁ……私のなナイトがとられてしまいました……。

 でも初めての割には善戦で来ていると思うんですけどね。

 とはいえむっちゃんはルークとクイーン無しというハンデを抱えているので本気を出されたら絶対に勝てないんですけどね。


「むぅ……」


 残った駒は……キングとクイーンビショップ二つにナイトが一つ、ポーンがいくつか……どうやって勝ちに持っていきましょう。

 うーん、こういうパズルみたいなのは大好きなんですけど相手は自分の意志で動く人間ですから定石では裏をかかれてしまいますよね。

 ……どうしましょうこれ。


「えーと、これでどうですか? 」


「蒼ちゃん、ちぇっくめいと」


「え……? 」


「ちぇっくめいと」


 思わず聞き返してからもう一度詰みを告げられて盤面を見ます。

 ……あぁこれ本当に詰められています。

 打つ手なしというやつですね。


「あー負けちゃいました、やっぱりむっちゃんは強いですね」


「むふん」


 嬉しそうに鼻を鳴らして胸を張ったむっちゃんに思わず吹き出しそうになりましたが、そんなことを気にするまでもなく東先生が先に吹き出してしまったので私も遠慮はしませんでした。

 子供らしさというのがあっていいと思います。


「で、蒼ちゃん次何やる? 」


「次ですか……でもそろそろ暗くなってきてますよ? 」


「えと、だけど……」


 むっちゃんが何か口ごもっています。

 これは何か隠していますね、それもお見舞いのタイミング的に考えて亮君がらみと考えるべきでしょうか。

 ついでに言うなら私がここにいなければいけないという部分も考慮すると、あの強盗さんがらみと……たしか帝国の暗殺者さんか何かでしたっけ。

 ということは今頃外で見張りをしているのでしょうか。

 

「東先生? 」


「ノーコメントでお願いします。

でもこの場所は安全だって考えてもらえればいいと思いますよ」


「この場所は、ということは外はどうですか」


「それは秘密ということで」


「……はぁ」


 これははぐらかす気満々ですね。

 私としては今すぐに飛び出して亮君の無事を確かめてからお説教でもしたいところですが、確証がない上に私は外に出ることができませんから。

 アスロックさんの話では1週間から1か月の時間が必要といっていましたからね。

 ……正直お店が大赤字で家計が火の車になりかねないですが。

 でも、今外で亮君が寝ずの番をしていると考えると私が起きたときあんなに疲れ切っていたことにも説明がつくんですよね。

 たぶん1週間禄に寝ないでお店に近づく人を見張っていたんじゃないんでしょうか。

 亮君ってこう一人で気負うタイプですから、自分が休んでいるのに誰かに頼むなんてとか言い出しそうですからね。


「わかりました、降参です。

つまり私は一晩ここに缶詰にされていればいいんですね」


「一晩といわずに、安全が確保されるまではそうしていてほしいとりょーが」


 むっちゃん、それ白状しているようなものです。

 でも……こうなっては私にできることはなさそうですね。

 

「安全が確保されるまで、ですか。

まったくあの朴念仁は……仕方がないですね、むっちゃん今何のゲーム持ってますか」


「え? えーと……オセロに囲碁に、人生ゲーム」


「じゃあ人生ゲームしましょう、東先生も一緒に」


「いいの? 」


「えぇ、みんなでやった方が楽しいですから」


「そうじゃなくて、りょーのことはいいの? 」


「いいんです、その代わり帰ってきたら少しお説教ですけどね」


 ふふふ、と軽く笑って見せるとむっちゃんと東先生が微妙な笑みを見せました。

 こう怯えとにやけの入り混ざったようなそんな笑みでした。

 さて、夜は長いですしついでにBGMでもかけておきましょうか。

 眠気を覚ませるように、外の雑音が聞こえないようなレベルのハードなデスメタルをね。

 

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