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茜の寝起き

 どれくらいの時間がたったのでしょうか。

 まだくらくらとしていますが、ひとまず意識は覚醒しました。

 寝起きはよくない方ですが、長時間寝ていたためかすっきりとした目覚めでした。


「ん……」


 体を起こそうとすると何かにさえぎられて右半身が動きません。

 これは……あぁそういえば私はナイフで切られていたんですよね。

 それで気を失ったので……順当に考えれば毒でも塗られていたんでしょうか。

 そのせいで右半身が動かないとかであれば、お店に支障が出るので非常に困ります。

 そんなことを考えながら目を開けると、あたりは真っ暗でした。

 これは……結構眠ってしまっていたようです。

 こう暗くては何も見えないので、手探りで枕元に置いてある小さな電灯に手を伸ばして、紐をカチカチと引いて明かりをつけました。

 そして、間歩差に目をくらませながらもようやく右半身がどうなっているかを確認することができました。


「亮君……」


 そこには私の手を握りながら、うつぶせになって眠っている亮君の姿がありました。

 不思議なことに、握られているはずの右手は目で見てようやく握られているということに気が付きました。

 もしかして感覚がないのかとも思いましたが、そんなこともなくじわじわと亮君の暖かさを感じてきました。

 それと同時に恥ずかしさも少々。

 けどそんなことを言っている場合ではありません、ひとまず熟睡しているところ申し訳ないのですが亮君を起こして……起こしていいんでしょうか。

 ちょっと見ただけでも疲れているのが見て取れます。

 それにちょっと土埃のにおいに……鉄の香りがします。

 何か問題を起こしていなければよいのですが。


「………………」


 そういえばこんなに無防備な亮君は初めて見た気がします。

 いつも無防備に見せていてもどこか気を張っていたり、思い詰めていたり、とにかく一人で得全部抱え込んでいたようでしたから。

 おもわずその頭に手が伸びてしまいました。

 少しべたべたとした手触り、亮君さては今日お風呂に入っていませんね。

 まったく、飲食店ではもちろん、客商売であれば清潔であることも重要だというのに……それだけ私が心配をかけてしまったことでもあるのでしょう。

 反省をしつつ、そろそろ亮君に起きてもらいましょう。


「亮君、亮君」


 呼びかけながら肩をゆすります。

 けれど疲れているのか、なかなか起きてくれません。

 ……あ、いえこれ起きているけど寝たふりしていますね。

 今つばを飲み込みました、のどが動いたのが見えました。

 人間起きているときは唾が分泌されるので、それを飲み込むためにのどが動くんです。


「亮君、狸寝入りしているのはわかっているんで起きてください」


「……茜さん」


 顔を上げた亮君の目元にはくっきりと隈ができていました。

 一日二日でできるようなものではありません。

 ずいぶん長いこと眠っていなかったのでしょう。


「おはようございます」


「……うん、おはよう」


「起こしちゃってごめんなさい、そんな風に寝てたら疲れも取れないでしょう。

よければ一緒に、どうですか? 」


 今更一緒の布団で寝ることに抵抗はありません。

 少し狭いかもしれませんけれど、その方が疲れも取れるでしょう。

 聞きたいことはたくさんあるのですが、そんなことは後回しです。

 今は亮君の健康だけが心配です。


「いや、それは魅力的だけど今はやめておくよ。

茜さんが起きたことみんなに伝えなきゃ……」


 そういって立ち上がろうとした亮君でしたが、腰を浮かせた瞬間よろめいてしまいました。

 やはり相当疲れているようです。


「そんな体調でうろうろして、亮君まで倒れたら元も子もないです。

どれくらい眠っていたのか知りませんけど、今から半日くらい眠っていても誰も何も言いませんから、ね? 」


「っ……やっぱり茜さんにはかなわないな」


「そうですよ、亮君はおとなしく私のお尻に敷かれていてください」


「わかった、でもこれが最後の会話だったなんてことになったら本気で怒るからね。

それこそ死後の世界まで追いかけてゾンビになった茜さんをしかりつけるくらいに」


 死後の世界でゾンビにですか、まるで日本神話ですね。

 それとも北欧神話でしょうか、あれ? ギリシャでしたっけ。

 まぁ些細なことでしょう。

 どちらにせよ、すぐに死んでしまうような感じはありませんしたぶん大丈夫でしょう。

 

「安心してください、亮君にこうしてがっちりと捕まえられてしまっているので逃げようがありませんから」


 そういって右手に力を込めます。

 いつもよりも力が入らないのは、怪我のせいか寝起きだからかはわかりませんけれどね。


「なら……明日の朝までがっしり捕まえておく……」


 そういって亮君は私の右手を握りしめたまま左手を私のことを抱きしめてきました。

 そのまま器用に靴を脱いでベッドにもぐりこんできました。

 やっぱり少し狭いですね。


「寒くないですか? 」


「大丈夫、あったかい……あぁ、あったかいよ」


「そうですか、ねえ亮君」


「なに」


「どれくらい眠っていたのかわかりませんけど、ご心配をおかけしてしまったみたいですね」


「そうだね、心配したよ」


 今まで亮君が戦争に行ってしまった時も、私は相当心配していたのですが亮君みたいに目元に隈を作ることはありませんでしたからね。

 むしろ夜はぐっすり眠って、寝る前と寝起きに亮君は大丈夫かと思う感じでしたからね。

 

「大丈夫ですよ、亮君。

大丈夫、また明日の朝……お話し聞かせていただきますので……今はゆっくり休んでください」


 そういいながら亮君の背中をゆっくりとさすって、落ち着いてもらいます。

 そしてそのうち亮君の鼻をすする音や何かをこらえる音は、ゆっくりとした寝息に代わっていきました。

 あぁ、本当に心配させてしまったみたいですね……あした……しっかりと謝らないと……わたしも、もう一度、少しだけ眠りましょう……。

 おやすみなさい、亮君。

長らく更新を途切れさせてしまい失礼しました。

現在リアルの方で少々問題が起こっておりました。

詳しく語ることはできませんが、来月から半月ほど入院することとなりました。

毛巣洞という尾骨周辺の毛根が体内に入り込み、炎症に至る感染症にかかってしまい3月に患部の摘出手術を行う予定となっています。

幸い命などに別状はないのですが、そのためまた3月から交信が途絶える可能性があります。

その際は、あぁ病室にタブレット持ち込めなかったか通信状況が壊滅的なんだなと思っていただければと思います。


出版に関しましては活動報告にも記載させていただきましたが順調に進んでおります。

入院と同時期の出版となりますが、担当様、出版者様、イラストレーター様の御協力により順調ですのでご期待いただければと思います。

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