約束の結果
12月4日 3度目の投稿です
サラさんが服を持ってきてくれると言ってからひと月ほど経って、梅雨に入って頃です。
この世界では雨期乾季はありますが、この辺りは多少の前後があるのか5月の方が降っていた気がします。
今日はお店がお休みで、更に晴れていたので溜まってた洗濯物とお布団を表に干していたところでした。
「茜、約束の服を持ってきたわ」
ちょうど着る物が減っていたところだったので渡りに船というべきでした。
迂闊だったとは思いますけどね。
「亮様、そちらでしばしお待ちを。
奥方をちょっとお借りしますね」
そう言うが早いかサラさんは洗濯物を全て亮君に押し付けて私をお店の奥へと引き摺りこみました。
そしてあっという間に服を脱がされてしまいました。
「あら、上下柄の違う下着なんて……そういうところは結構ずぼらなのね」
「ほっといてください……」
同性とはいえ恥ずかしい物は恥ずかしいです。
ついでに下腹のお肉とか摘ままれると羞恥心を通り越して怒りがわいてきます。
「まあいいわ、まずはこれ! 」
「ドレスじゃないですか、そんなの着て仕事なんてできませんよ」
サラさんが取り出したのは純白のドレス、見様によってはウェディングドレスみたいですけど私は白無垢の方が好きですね。
でも裾が広がっていますし白は汚れやすいので好きじゃないんですよね。
個人的には濃い茶色が好きですね。
「いいじゃない、着るだけならただよ」
「まぁそうですけど」
用意してくれた手前断るのも忍びないので手伝ってもらいながら着てみましたけれど、やはり結構重いですね。
それに裾が広がって歩きにくいです。
合わせて用意された靴もハイヒールなので歩きにくいですね。
「これで完成、亮様ちょっとこちらへ」
最後にヴェールをかぶせられて花束を持たされて気付きました。
これはウェディングドレスのようなものではなく、そのものずばりという事でした。
そう言えば最近熱心に読んでいる少女漫画の最終話がこういう内容でしたね。
……という事は血税がなんたらと言っていたくせにこれを仕立ててもらったのでしょうか。
やけにサイズがぴったりだとは思いましたが……。
「茜さん……」
「亮君……」
背中を押されながら入ってきた亮君に呼びかけられて思わず名前を呼び返してしまいます。
赤面しているでしょうが白いドレスのせいで際立ってしまいそうですね。
「茜さん、結婚しよう」
「もうしているじゃないですか、なに錯乱しているんですか」
何を思ったのか再びプロポーズされてしまいました。
いや本当に何を思ったのでしょうか。
「サラさん……恥ずかしいのですけど」
「あらそう、なら次ね。
もうここで脱がしてしまってもいいかしら」
とんでもない事を言い出しました。
旦那さんとはいえ男性の前で服を脱がせるとか上段でも言っていい事ではありません。
「脱がすなら俺が」
「お二人とも、笑っているうちにやめておきましょうね」
人間怒ると笑みを浮かべてしまいますね。
本来笑みとは威嚇行為で云々という話を思い出しました。
結局二人とも冗談だと言っていましたが、亮君の目つきは本気のそれでした。
上下揃っていない下着姿なんて見せられません。
「まったく……こういう事も有るから下着はちゃんとセットで着なさいな」
「ふつうありませんからね」
そう言いつつも再び脱がされて次の服に着替えます。
いつの間にか普通に着替えさせられていますけど気にしたらいけないのでしょう。
もうやけくそです。
次の服は市民の間で人気の格好だと言われた物です。
私が好きな茶色のロングスカートに半袖の黒シャツ。
シンプルでいいですね、これならお仕事中でも着られますし目立つことはないでしょう。
「市民スタイルですよ亮君」
「いいね、そのスカートの中にもぐりこみたいよ」
「はったおしますよ? 」
嬉々として恰好を見せびらかそうとした私がバカでした。
結局男性というのは恰好よりも裸の方が好きなんでしょうか。
でもコスプレというのも有りますし……男心というのは難しい物です。
同様の理由で男性は乙女心を理解できないのでしょう。
「ならこっちはどうかしら」
そう言ってサラさんは私の腕を捩じりあげるようにして拘束しました。
動かなければ痛くはないのですが、下手に動いたら関節が悲鳴をあげそうな方法です。
「なにを」
「いえいえ、間違いなく貴方は抵抗するでしょうから無理やりにでもとおもってね」
喉を鳴らして笑うサラさんに、従うしかないと悟ったので大人しく更衣室となっている寝室に入ります。
そしてスカートをおろされてシャツを脱がされて、ブラジャーのホックをはずされて、羞恥心で死にそうです。
「これを巻いて、下はこれを穿かせてっと」
そう言ってサラさんが用意したのは一枚の布、チューブトップっていうんでしたっけこれ。
露出度高いのは嫌だと言ったと思うんですけどね……。
下は短いタイトスカートと、ストッキング……これ間違いなくまんがで得た知識を基に作った物ですよね。
本当に血税の無駄遣いもいいところです。
「あ、これ結構貴族の間ではやっているから無駄遣いではないわよ。
ちゃんと市民に還元されているわ。
夜の営みの時に男性が燃え上がると人気よ」
「……男って」
「そんなものよ、ほらこれ着けて行ってきなさい」
最後にカチューシャをつけられて亮君の前に押し出されました。
何か違和感のあるカチューシャですね。
窓ガラスを見てみると角のようなものがついていました。
……小悪魔コスプレでしょうか、はっきり言って似合わないです。
無理しちゃだめだよおばちゃんという言葉が自分の中で反芻されます。
「申し訳ないサラさん、俺はもう抑えが利かない」
「えぇ、あとはごゆるりと。
残りの服も好きにしていいのでどうぞ」
……約束をしたときにもう少し注意しておけばよかったです。
今度本当にバター増量ケーキを御馳走してあげましょう。




