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約束

12月4日 二回目の投稿です

 5月と言えばゴールデンウィーク、というのはどれくらいの人が認識しているのでしょうね。

 私の中では子供の日でこいのぼりというのが5月のイメージです。

 いつぞやにお父さんから聞いた鯉の登竜門の話をイメージしてしまうのですが、私の敷地には実際に竜がいるので今度近くに鯉のぼりでも置いておきましょうか。

 といっても居酒屋は子供とはほとんど無縁ですから折り紙の鯉のぼりですけれど。


 さて、子供の日と言えばもう一つ、いえ二つ。

 ちまきと柏餅です。

 うちのお店では5月限定メニューでその二つを取り扱っています。

 どっちも手作りで、あんこも自家製の物を使用しています。

 蒸籠の問題でちまきは工場で量産された物を提供していますけどね。

 どちらも縁起物ですが、柏餅は子孫繁栄の意味があるので年頃の人にはちょうどいいのです。

 お酒のおつまみとしてはちまきが好まれますが、高齢の方が成人したお子さんとお店を訪れると柏餅を食べなさいなんて言っている光景も見たことがあります。

 ちなみにちまきは厄除けの意味があるので子供に食べさせるのもいいのですが、もち米ですから気を付けないと喉につっまてしまいますね。


 そして、甘い物と言えば特定の二人。

 先日緑茶と最中で和菓子の魅力にはまりこんでしまったサラさんと、サラさんからその話を聞いて和菓子を食べたがっていたパフェ好きのジョンさん。

 この二人がお店に来店された際に30ほどの柏餅を食して帰って行ったのですが……後日勉強に来たサラさんがお料理のレシピ本を見てそこに書いてある言葉の意味を説明するように言われてしまいました。

 えぇ、カロリーです。

 柏餅はその名の通りお餅を柏の葉っぱで包んだものです。

 そしてお餅は、切り餅、つまり四角く切ったお持ちで130キロカロリーを保有しています。

 うちの柏餅は大きめにしているのでだいたい200キロカロリーくらいでしょうか。

 そこに小豆を大量の砂糖で煮込んだ餡子をくるみますので300キロカロリーくらいあるんじゃないですかね。

 それをサラさんは10個ほど平らげていましたので……3000キロカロリー、女性の平均摂取カロリーの二倍です。


 つまり、間違いなく太ってしまいます。

 日ごろからケーキなどを食べているサラさんは糖尿病の方も注意が必要かもしれません。

 

「つまり……」


「ダイエットがんばってくださいね」


「また……またお肉が……」


 意気消沈したサラさんを見て申し訳ない気持ちになりますけどこればっかりは自業自得です。

 でもこういう女性って結構いるんですよね。

 甘い物の誘惑に耐えきれずに、という方は。


「運動しなきゃ……運動と言えば夜の方は? 」


「……サラさん、これからサラさんの料理にバター多めにしますよ」


「ちょっと待って! 変な意味じゃなくて二人は仲良くやっているのか気になったのよ! 」


「あらそうでしたか、夜の方はお答えしかねますがこれと言って悪くはありませんよ。

お店の方も手伝ってくれますし、スキンシップ……えーと一緒にいる事も結構多いですし、相変わらず優しいですから」


 最近の亮君は前みたいに寂しそうな顔をしなくなりました。

 それでもまだ悲しそうな顔をすることはありますけど、むっちゃんや東先生もいてにぎやかになったからでしょう。

 こればかりは私にはどうにもできない範疇の話ですからうれしい事です。

 家族に会えなくなった方々にいう事ではありませんから口にはしませんけれど。


「それならいいのだけれど、前にお邪魔した時には気づかなかったけれど茜の服装は女として……こう色気が足りないというか……」


「胸がないと言いたいならどうぞ、バターを用意しますから」


「そうじゃないわ、なんといえばいいのかしら……露出が少ないというか……仕事の効率重視というべきか……」


「まぁスカートであってもロングスカートくらいしかはきませんからね。

ミニスカートは仕事に不向きですし、そもそも私のようなおばちゃんが脚を出しても不快な思いをする人が多いでしょうからね」


「おばちゃんって、貴方まだ30にもなっていないじゃない」


「四捨五入すれば30ですよ、というより29歳ですからほどんど……」


 自分で言ってて悲しくなってきましたが最近は少し納得してきました。

 受け入れたというべきでしょうか、歳をとるのも悪くないと思い始めました。

 たぶん誕生日が来ればまた落ち込んでしまうんでしょうけれど、注射を終えた子供のような物なんでしょうね。

 嫌なことが過ぎて、次の注射目前までは元気になれるような。


「はぁ……私もそろそろ結婚を考えないといけない年頃ね」


 嘆くサラさんでしたが少しやる気を出せば簡単にお相手は見つかるでしょう。

 でも聞いたところでは相変わらず剣や槍を振り回しているそうなので、このままでは無理かもしれませんね。

 こちらの世界の男性は淑女がお好みのようですから。

 あれ、でもたしかこちらの結婚適齢期って20歳くらいが目安だったような気がします。

 ……深くは追及しないようにしましょう。

 藪をつついて蛇を出すのも面白くありませんから。


「そうだわ、今度来るときは私が服を持ってきてあげるからおしゃれしてみなさいな。

亮様を悩殺できるような服をたくさん持ってくるので」


「えーと、ありがたいとは思うのですがいいんですか? 」


「いいのよ、着ない服なんて腐るほど、それこそ市民の血税なのに無駄にしているほどにあるのだから。

このまま虫に食べられるよりはあなたに来てもらった方がいいわ」


「そういう事であれば……でも露出の高い服はお断りしますからね」


「えぇ、わかったわ」


 にっこりとほほ笑んでいるのですが悪魔の笑みに見えるのは私の目が悪くなったのでしょうか。

 とても嫌な予感がしますけど、注意しておきましょう。

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