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むっちゃんのお店

 むっちゃんがレトロゲームセンターを作ると決めてからの行動は早かったです。

 まず簡易的なテント、運動会などで使用される屋根だけの物を私のお店の隣に建てました。

 そして廃材などから、これまた手の空いていた人たちの協力を得て簡易的なテーブルと椅子を10程作成しました。

 それらを並べて最後に東先生の車に積んであったというボードゲームなどを並べてお店が完成となりました。

 わずか一時間の事です。

 今後繁盛すれば正式なお店へと変貌を遂げるだろうと思われるのですが、今は簡易的にという事になっています。

 

 こうして短時間で出来上がったゲームセンターでしたが、お客さんの入りはよくありませんでした。

 その理由として、覚えなければいけないルールが複雑すぎるという事。

 将棋や囲碁、チェスなどのゲームにトランプなど様々なモノをいくつも用意していたのですが、どれもルールなしでは遊べません。

 そこでむっちゃんが考えたのはどうすれば遊んでもらえるかという事でした。


 一つは簡単な物を教える。

 そのきっかけに使われたのはオセロでした。

 白が黒をはさめば裏返る、その逆もまたしかり、多くの駒を自軍の色に変えれば勝ち、それだけの事ですが奥深いこのゲームは数多くの人をひきつけました。

 次にトランプ、こちらは婆抜きなど大勢で遊べるものも有るので集客効果はあったようです。

 なので1ゲームいくらで1位は次のゲームが無料という金額設定を行っているようですね。


 もう一つは兵士の皆さんに戦略の勉強という名目で教える事。

 これには東先生と亮君が一役買っています。

 まず将棋やチェス、オセロや囲碁は陣取りや駒取り遊びであるため戦術が重要になってきます。

 それらを鍛えるための訓練の一環として兵士の皆さんに売り込みを行いました。

 その営業業務を行ったのが亮君、有名人であり今も一応現役の騎士である亮君の提案は、多少の課題はあったもののあっさりと受諾されたそうです。

 つまり騎士兵士をまとめるえらい方々に会議の場でこんな訓練ができるという売り込みをしたそうです。

 そして次に、ゲームのルールは東先生が授業を開きました。

 この授業は有料で行っていますが、一回の参加金額は子供のお小遣いで十分足りる程度なので皆さん快く参加されたそうです。

 こうして下地が整った将棋や囲碁は兵士を取りまとめるみなさんの間で訓練として話題になり、そしてあっという間に一般兵の方々へ、そしてそこから他の人達へと広まっていきました。

 今では大工の皆さんに頼んでチェス盤や将棋の駒の量産体制に入っており、ある程度の金額を出せば購入が可能になっています。

 ちなみにむっちゃんのお店の駒では日本で使われていた物、つまり漢字が掘られた物が使用されていますが、売り出されている物はこちらの世界の言葉で「王様」や「騎士」「砦」と刻まれています。


 さてこれらの段階を経てむっちゃんのお店が繁盛するまで、わずか半月の事でした。

 驚異的な速度でお店を軌道に乗せたむっちゃんでしたが如何せん女子高生という身分。

 多くの問題も発生しました。


 まず起こったのが金銭のトラブル。

 ゲームセンターですので遊ぶためにはお金が必要ですがこの料金を踏み倒そうとした人がいました。

 相手は成人した屈強な男性、亮君が以前話していたハンターという魔獣を狩って金銭を得るお仕事をしている方ですね。

 ジョンさんの同業者の方ですが、その方が料金の支払いを拒みました。

 その際に亮君が刀を手に仲介に入ろうとしたのですがぎりぎりまで待ってもらいました。

 今後この手のトラブルは頻発するでしょうから対処できなければお店をたたんだ方がいいと考えての制止です。

 それには東先生の同意もありましたので、むっちゃんにお任せしました。


「どうしても払わない? 」


「おうとも、こんな遊びに金を出していられるかってんだ」


「わかった、ジョージさん」


「えぇ、この方は料金を踏み倒す商人の敵、今後私の店への入店を制限しましょう」


 むっちゃんがこの時利用したのは仲良くなった商人の男性。

 5歳のお子さんがいて、その子は東先生の下で読み書き計算を教わっています。

 それ故にむっちゃんとの交流もあり、また遊び友達でもあるため非常に良好な間柄です。

 そして何を隠そうこのジョージさんのお店はこの国ならず聖国や帝国などの領地でも商売を行っている、とても顔が広く権力のある商人さんです。

 そんな方から出禁を食らったとあれば、様々なお店の援助が必要なハンターとしては商売にならなくなります。

 その事をむっちゃんは利用したのです。


「もし今の発言が冗談であれば、私も笑い話で済ませるところ」


 むっちゃんの圧力はすさまじい物でした。

 権力を最大限に生かした方法です。


「それと私に危害が加えられるようなことがあれば貴方をはじめとしたハンターや兵士の人にはお店の利用が出来なくなると思ってね」


 その一言がとどめとなり、ハンターの男性は大人しくお金を支払いました。

 これを皮切りに様々な問題に直面し、そしてそれを次々と解決していく姿には舌を巻きました。

 まさか女子高生がこれほどの手腕を持っているとは驚きです。

 もしかしたらこれがむっちゃんの能力なのかもしれませんね。


 他にも同じように金銭絡みで、賭け事が行われたりしていたのが問題となりました。

 国の法律上賭博は許容されていますが、賭博場を開くには許可が必要です。

 そのためむっちゃんは遊び場として開放していたのですが、中には無断で賭け事に勤しむ人たちがいました。

 そして賭け事となれば当然金銭の支払いによるトラブルが発生します。

 そこでむっちゃんが提案したことは私のお店との提携と、法律の抜け目を突いた方法でした。

 この国で賭博場の定義はお金をかけて競い事をすることと記されています。

 なので、賭けるのはお金ではなくお酒を賭ける事にしたのです。

 それはつまり、敗者は勝者にお酒をおごる事、そしてこのルールを適用する場合は店員を立会人として追加金を支払う事。

 この取り決めにより金銭トラブルは激減、そもそも兵士や騎士の皆さんが立ち入りしているので大事になる前に対処できたのが幸いだったようです。


結果、むっちゃんのお店には新たな従業員が増えて、そして私のお店の売り上げも伸びて万々歳です。


 それ以外にも大小さまざまなトラブルがありましたが、その大半を自力で、時に私たちの協力を得て解決する事で春になるころにはむっちゃんは立派なお店を構えていました。

 同刻、東先生も教員としての知識を生かして様々な方を相手に授業を開き立派な教室を構えていました。

秋刀魚からハロウィンに。

いい季節ですね。

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