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ニルセン

「ところでニルセン、土産物ってなんだ」


「うむ、これだ」


 気を取り直したのか亮君がそう問いかけて、ニルセンさんはぺっっと何かを吐き出しました。

 大量の唾液が付いたそれを臆することなくつかんだ亮君は物を眺めてから目を見開きました。


「お前これって……」


「うむ、オリハルコンの原石だ。

それからミスリル、ヒヒイロカネ、アダマンタイト、ダマスカスなどの希少金属を多数取り揃えた」


「……これ木端な国の国家予算超えるぞ」


 そんなに希少な物なんでしょうか。

 唾液まみれの黒い石にしか見えませんけれど。

 でもどれも聞いたことがある名前ですね。

 特にダマスカスは料理人としてはあこがれの金属です。

 ダマスカス製の包丁はしなやかで切れ味がいいと評判ですから。

 私も一度使ってみたいものです。 


「つっても俺は必要ないし……買い取れる人間もそうそういないだろうからな……」


「ならば使えばいい」


「使うと言っても加工できるやつを探すのも一苦労だっての……」


「あ、なら私包丁がほしいです。

あとこの前お鍋焦げ付かせちゃったので新しい奴がほしいです」


 あまりもので御夕飯を作っていた時に火加減を間違えてしまってお鍋を焦がしてしまったんです。

 今は他のお鍋を使っていますけど、いまいち手になじまないんですよね。


「希少金属を使った調理器具って……というか普通のまな板だったらそのまま両断してしまうんじゃないかな」


「そういう事であれば世界樹の枝を持ってきているからまな板も作ればよかろう」


 世界樹……ゲームなんかではよく聞く大樹の名前ですけどこの世界にもあるんですね。


「世界樹のまな板とか……世界中の戦士が泣いて怒るぞ」


「知ったことではない、そもそも我らはこれらの金属や世界樹が闘争のために使われることを快く思っていない。

人の命をつなぐための、調理器具となるならばこれほど喜ばしい事もない」


 ニルセンさんがとても優しい目をしています。

 おばあちゃんの事を思いだしますね。

 戦争の時の事や、その後の苦労話を聞かせてくれた後は決まってこんな目をして私の頭を撫でてくれていました。


「さて、そろそろ腹が減ってきた。

何か食わせてはくれないか」


 そう言えばニルセンさんはそれも目当てでしたね。

 残っているのは私たちが御夕飯にしようと思っていたおでんだけ……それだけでは流石に足りないでしょうし、私たちも何か食べないといけません。

 そうなると作り足す必要がありますけど……材料もそんなに残っていないんですよね。


「亮君、残っている食材を持ってきてもらっていいですか」


「もう東さんが持ってきてくれてる」


 流石東先生です、先読みが鋭い。

 とりあえず確認すると御餅がたくさんあります。

 私が良く摘まんでいますし、小さく切って油を使ってカリカリに焼いたものをおつまみにしたりしていたのもあって結構仕入れていたんですね。

 炊き出しでも使えるのでキロ単位で用意してあります。

 全部小袋に分かれているのでカビの心配もありません。

 今回はこれを提供しましょう。

 海苔も有るので磯辺焼きにしてしまいましょうか。

 けどどうやって焼きましょうか……あ、そういえば以前おばあちゃんが作ってくれたのがおいしかったのであれを再現しましょう。

 ごま油とお醤油をトレーに流し込んで、御餅を浸します。

 それを海苔でくるんで真っ黒な塊にしてしまいます。

 それをさらにアルミホイルでくるんで焚火に放り込みます。


 しばらく焼いたものを取り出して、爆弾焼きの完成です。

 御餅が膨れた分丸っこくなるので爆弾焼きです。

 膨張する分海苔をゆったりまかないといけないのですが美味しいんです。


「ニルセンさん、浅めの穴を掘ってもらっていいですか、亮君はその穴の中で火を起こしてください」


 そうお願いして私は下ごしらえをしていきます。

 東先生や他の人達にも手伝ってもらってホイル包みを完成させませた。

 それらを焚火に放り込んで、焼けたら軍手をはめてホイルをとってニルセンさんの口に放り込んでいきます。

 たまにこっそりつまみ食いをしている人がいましたけど黙認します。

 むっちゃんは食べすぎですけどね。

 ひとりで5個くらい食べていましたね。

 そんなに食べると太っちゃいますよ、というのは乙女にとっては禁句ですね。


 結局つまみ食いだけでお腹がいっぱいになってしまったのでおでんもニルセンさんの口に吸い込まれていきました。

 最後に一言、満足そうな様子で「美味しかった」と言ってくれたのはうれしかったです。

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