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新たな仕事

 祝賀会はそれから更に二日間続きました。

 つまり三日間ぶっ通しで行われていたわけです。

 みなさんよく体力が続きますね。

 人によってはその場に素泊まりでという人もいたようです。


 ちなみに一日目の途中で抜け出した私たちは散々冷やかされました。

 思わず否定しようとした私の肩を抱いて亮君が肯定したため、更に冷やかされることになってしまいましたけど。


「それにしても……まだ結構人が残ってるな」


 祝賀会そのものは既に終わっていますが、まだ何人かの人が残っています。

 この人たちは飲み足りないのでしょうか。

 よく見ると王様もいます。


「全員貴方に話がありますのよ」


「私ですか? 」


「えぇ、蒼井はこの辺りの土地を所有しているでしょう?

その土地を借りて商いをしたいという者が何名かいるのです。

そしてその後押しとして、さらに所有地を与える代わりに増税をという事で国王陛下がこの場に残られました」


 土地を貸して商売ですか……いわゆるしょば代というやつでしょうか。

 お店に引きこもっていたのでこういう話はよくわからないんですよね。


「ちなみにお値段はいかほどで」


「これくらい」


 いろいろな資料の中から何枚か抜き出した物を受け取って言葉を失いました。

 みなさん毎月金貨単位でお金を支払ってくれるとのことです。

 対して増税額は年間で金貨50枚ほど。

 流石にこの場にいるみなさん全員に土地を貸すことはできませんが、書面だけ見ればひと月の収入でおつりが来ます。


「こちらの儲けが多すぎて裏があるのではないかと不安になるのですが……」


「そうでもありませんよ、商いを行うにあたってこの周囲に簡易的であっても柵を設けます。

それから各自ちゃんとした建物を作る事。

治安維持のための兵士を派遣する必要があるのですが、そちらは私の家から私兵を出す事。

私兵を含めてこの地で働く者には厳正な審査と国王陛下の面接、蒼井との面接、審査を通したうえで行う事。

それらを無視した場合は重罪として国外退去に加えて罰金です。

また亮様は貴族の地位を持っていますのでこの地を治めていただくことになりますし、蒼井は今までの税金に加えての増税、そして仕事の他に面接などもしていただきますから結果的に仕事は増えますよ」


 話を聞いているとめまいがしてきました。

 つまり私の仕事と税金が増えるという事ですよね。

 ただし収入は爆発的に増えますね。

 面接をするなら午前中でしょうか。


「どう、蒼井悪い話ではないと思いますが」


「即答は難しいのですが……王様が残っている以上すぐに答えを出すべきなんですよね」


「その方が喜ばしいですわ」


「……わかりました、では試験的に数名から始めましょう。

お店の内容によって考えさせていただきます。

あと私兵の方とも話してみたいですね」


 仮にも私の敷地を守る人たちですから、思想や理念勤勉さ雄弁さを知っておきたいと思います。

 仕事を迅速にこなせるかも知っておきたいですね。


「あとこれだけの人数がいるのですが、全員は無理です。

なのでグループ分けをして、くじ引きでもしていただきましょう。

商売内容でグループ分けをしましょうか」


「そうね、それには賛成ですわ。

この場にいる者達は全員審査も通り、問題ないと判断しています。

あとは蒼井次第です」


「段取りをお願いしますね、サラさん。

こちらは面接とかよくわからないので今回はそちらにお任せします。

それと王様、私が頂ける土地はどれくらいですか」


「うむ、しばし待て」


 王様がそういうと旗を持った数名の兵士さんが一斉に駈け出しました。

 そして人が豆粒サイズに見えるような距離まで移動したところで旗を掲げました。


「あそこまでの所有を許そう、今後必要があれば領土の拡大も視野に入れている」


 ……はっきり言って広大です。

 坪単位だとどれほどなんでしょうか。


「蒼井、準備できましたわよ。

くじ引きとやらはどうするのですか」


 そうしている間にグループ分けが終わったみたいです。

 この人数ように紙を切ったりするのも手間がかかるので、あみだくじでも作りましょう。

 幸いなことに一つのグループは十人くらいですから、皆さんに協力してもらえばいいですね。


「亮君は何か意見有りますか」


「お店経営は専門外だからね、その辺りはお任せするよ。

ただ一つ確認をとっておきたいんだけど、蒼井さんに危害を加えるような、暴力だろうが陥れるようなことだろうが関係なく、そう言った行為をした奴はどうする」


「場合によっては死刑ですわ」

「死刑じゃな」


 いきなり物騒すぎる話です。

 しかもいつの間にか私重要人物にされていませんか?


「蒼井はこの国に多大な利益を与えていますからね。

そこら辺の木端な貴族よりも重要ですわ」


「うむ、彼女がいなければ帝国との小競り合いでもあれほどに被害を減らすことはできんかった。

……まぁ砦には残り香という被害が出たが些細な事であろう」


「場合によっては俺が直接手を下すけどそれは? 」


「かまわん」


「よし、ありがとうな王様」


 いつの間にか物騒な話もまとまってしまったみたいです。

 途中から耳が痛い話も出ていたのでこっそり紙を取りに行ったりして話を聞き飛ばしていましたけど、定規とペンで適当なあみだクジを作っておきました。


「サラさん、この線の下に代表者か商店の名前を記入してもらってください。

それからこの線と線の間に適当な線を一本書きこんでもらってください」


「えぇ、わかりましたわ。

皆さん聞いていましたね、順番に記入を済ませてください」


 サラさんの言葉にグループごとに列を作って並び始めました。

 そして順番に名前と線を書きこんでいき、ついに全員が終わりました。


「蒼井、これはどうやって決めるのかしら」


「この線を辿って行くんですよ。

えーと、まずは1グループ目、で食べ物ですね。

このグループなら3組くらいでしょうか。

サラさん、王様、適当な線の上にマークをつけてください」


 その言葉に従って二人がマークを書きこんだのを見て私も左端にマークを書きこみました。

 なんとなく猫の顔を書いてみました。


「えーと、ここがこうなって、こっちに行って。

まずはこの人です」


「ダンジェラ商会! 」


「よっし! 」


 名前を呼ばれた人が前に出てきました。

 それから順に二組も呼び出して、更にグループごとに人数を変えて前に出てきました。


「今回はこの人達で決定ですね。

他の方は次回以降に、そうですね少し優先的にしましょうか。

サラさん、お任せしてもいいですか? 」


「任されましたわ」


「それじゃみなさんお話合いをしてどこを使うか決めてください。

その上でサラさんに提出してくださいね」


 サラさんに面倒な仕事を丸投げしました。

 餅は餅屋ということで、貴族らしい仕事をしていただきましょう。


 ……ちょっと睨まれましたけど気にしないでおきましょう。

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