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夜食

 日付が替わって、ようやくすべてのお客さんが退店されました。

 これからやっと私たちのお夕飯です。

 時間的にはもう夜食といってもいいですね。

 晩酌も兼ねたものなので、簡単に作れて塩気の強いものを作りましょう。


 さて簡単ですけどちょっと時間のかかるものから作ります。

 まず残ってしまった肉じゃがに塩と醤油を加えてしょっぱくします。

 味を安定させるためにちょっと煮込んでおきます。

 その間に耐熱皿にオリーブオイルを塗ります。

 そして朝食用の食パンを四枚ほど敷き詰めて、拳で押し付けながら潰していきます。

 そこに、残り物の餃子と焼売の種をのせて、オーブンへ投入。

 お肉が焼けるまでまって、その間に先ほど温めていた肉じゃがをザルにあけて水気を切ります。

 またここで時間がかかりますので、餃子の皮にケチャップを塗ったもの、マヨネーズを塗ったもの、何も塗っていないものの三種類を用意します。

 ケチャップを塗ったものには細かく刻んだベーコンと、チーズ。

 マヨネーズを塗ったものには刻んだサラダ用の野菜。

 何も塗っていないものは刻んだフライドポテト、チーズ、ベーコンをのせます。

 それらをフライパンで焼いて、水を入れて少し蒸すことでなんちゃってピザの出来上がりです。

 それぞれスタンダード、サラダ風、ジャーマンポテト風です。

 皮はカリカリで、とても美味しいんです。


 次に汁気をきっていた肉じゃがをボールに移してお玉でごしごしと潰していきます。

 これを残った餃子の皮に包んで、ほくほく和風餃子と、先ほどピザにも使ったサラダ用の野菜を包んだベジタブル餃子の二種類を作ります。


 そしてちょうどオーブンに入れていたなんちゃってミートパイも焼きあがったのでバジルをまぶしてナイフで耐熱皿から取り出して、パン用のノコギリ型包丁でキコキコと斬って完成。


 でも三品目だとちょっと物足りないですね。

 亮君はよく食べるのでなにか追加したいところですが……余り物も使い切ってしまいました。


 ならば奥の手です。

 私秘蔵のおつまみを用意します。

 もともとお店のメニューとして考案していたのですが、原価が高すぎるのでボツになった料理です。


 料理と言えるほどの品ではありませんけどね。


 裏手に置いてあったダンボールを漁らなければいけませんでしたが、オイルサーディンを用意します。

 これはイワシをオリーブオイルに漬けた缶詰です。

 流し台でオイルを少し捨てて、みじん切りにした玉ねぎをこれでもかと盛り付けます。

 そして缶ごとオーブンへ!

 3分くらいするとオイルがふつふつと泡を立て始めるので、すかさず醤油を流し込みます。


 そしてさらに3分ほどすると玉ねぎが狐色に焼きあがってきますので、お箸でずりずりと引きずり出してお皿にのせます。

 完成です、オイルサーディンの缶焼き。


 玉ねぎのシャキシャキとした食感と、イワシのふかふかした食感が良く合うんです。

 当然、お魚に醤油が合わないわけがありません。


 夜食というにはカロリーが高くて塩分過多ですが、まあいいでしょう。


「おまたせしました」


「ごめんね、蒼井さんばっかり働かせちゃって」


「いいんですよ、亮君は美味しそうに食べてくれるから作る側としても楽しいんです」


「そう言ってもらえると気持ちが楽だよ」


「では冷めないうちに食べちゃいましょう」


「うん、いただきます! 」


 亮君がまず手を伸ばしたのはなんちゃってミートパイでした。

 やっぱり男の子はこういうどかっとした料理が好きなんでしょうか。

 作った私が言うのもなんですがちょっと重いんですよね。


「うんうまい」


 私も一切れ、小さめに切ったやつをかじります。

 パンで作った生地はオリーブオイルを塗った面はサクサク、生地自体はお肉の肉汁を吸ってジュワッと、餃子と焼売の種はふかふかで、にんにくやお野菜がいいアクセントになっています。

 我ながら満点の出来栄えです。


 つづいてなんちゃってピザ、スタンダードはケチャップを使ったので酸味が強いですね。

 今度はトマトソースを作ってみてもいいかもしれません。

ジャーマンポテト風は、もうちょっとフライドポテトに下味をつけたほうがいいかもしれませんね。

 サラダ風は、うんまずいわけじゃないですがほかの二つと比べるとか可もなく不可もなく。

 なんというか……普通にサラダとして食べても良かったかなという感じでした。

 こっちは改良の余地有りですね。


 餃子の方はなかなか美味しいです。

 特にベジタブル餃子は荒く切ったお野菜を使ったのでシャキシャキとした歯ごたえもあって、柔らかい料理が多い中で食感の変化を楽しませてくれます。

 ぎゃくに肉じゃがを使った和風餃子はホクホクとしたおいもの食感と、肉のジュワッとした味わい、そしてたまに入っているしらたきの歯ごたえがいい感じです。

 でも肉じゃがは砂糖やお酒を入れているので、甘味を消しきれないのでカラシをつけるべきですね。

 ピリっとした味わいが全体の味を深くしてくれます。


 最後にオイルサーディンの缶焼き。

 これはもう失敗のしようがありません。

 だってほぼ買ったままの缶詰ですから。


 けど応用の幅が結構広いんですよね。

 今回は餃子の皮で作ったなんちゃってピザがあったので、こちらの調理法にしましたがチーズとケチャップとパン粉をのせてピザ風にしても美味しいんです。

 塩気が強い分ケチャップの酸味が強く感じることもありませんので。


 亮君もガツガツと食べてくれています。

 時折ビールで流し込んでいるように見えるのは……もっと味わってもらいたいと思うんですけどね。

 こうやってみていると亮君ってアレですね。

 子供と仲良くなれそうな人です。

 こう、ゲームを一緒にしたり、サッカーを一緒にしたり、絵本を読んであげたりと良いパパさんをしている様子が目に浮かびます。


「ん? ふぁひ? 」


「なんでもありませんから口に物を詰め込んで喋らない」


「ん」


 あぁ、精神年齢が子供に近いんでしょうか。

 でも時折見せる寂しそうな表情は……いえ、それはその内いろいろ話してくれるでしょうからそれまでゆっくり待ちましょう。

 いまは、この料理を亮君が食べ尽くす前に私もお腹を満たすことに専念します。

 そして明日から減量を考えようかなと思います。

 えぇ、明日からです。

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