喧騒の日々
亮君が帰ってきて二日が過ぎました。
お昼になったのでお店を開けます。
最近では居酒屋ではなくお食事処になっていますね。
ご飯の提供が増えています。
「よーう、亮平」
今日第一のお客さんはジョンさんでした。
無事だったんですね。
「おうジョナサン、らっしゃい」
「いらっしゃいませ」
「チョコパフェ頼む」
「はい、かしこまりました。
亮君はそのままでいいですよ」
まだ疲れが抜けきっていないのでしょう、亮君は覇気がありませんから休んでもらってます。
たまにかき氷作ってもらったりしていますけどね。
夏限定メニューです。
「お待たせしました」
「おぉきたきた、くぅうめえ!
これだよなやっぱり! 」
元気そうで何よりです。
亮君はあきれたような表情ですが、口の端っこが上向いていますよ。
「そういや亮平帰ってきて真っ先にいちゃついていたらしいじゃねえか。
どうよ、どこまでいったよ」
「ぶふっ……」
ジョンさんの突然の言葉に亮君が噴き出しました。
それと同時にお店の扉が開かれます。
「いらっしゃいませー」
そこにはたくさんの騎士さんがいました。
そして皆さんが同時に亮君に詰め寄ります。
「英雄殿!
我らが帰還の為に行軍している間に女といちゃつくとは何事か!
詳しく具体的にいろいろと、サイズとかも説明お願いします! 」
「うらやま……なんてけしからんことを」
「もげろ」
「あなたは世界中のもてない男を敵に回した」
「異端者を吊し上げよ! 」
「おぺろきふぁるけろす! 」
最後の方はもうはや言葉になっていません。
というよりみなさん私的な怨念が強いようですね。
なんでしょう怒るべきところなんでしょうけど、そんな余裕がありません。
「あー亮君、お任せしますね」
「ちょっ、蒼井さん待って。
1人にしないで」
「ご注文は亮君にお願いしますね」
そう言って厨房に逃げ込みました。
必死になった男の人ってあんなに怖いんですね。
しばらくして精神的にすり減ったのか、青い顔をした亮君が厨房に来ました。
「ジンジャーエール四つ、コーラ二つ、生ビール三つ、カシスオレンジ二つ、焼酎五つ、他注文多数。
俺ソフトドリンク用意するから酒の用意お願い」
「了解です」
げっそりとした亮君を尻目にお酒の準備と調理を始めます。
注文は、やっぱりこの時間だとご飯系が多いですけどおつまみも結構ありますね。
枝豆の醤油焼、フライパンに軽く茹でた枝豆を丸ごと投入して醤油をかけて香りづけをしたメニューが人気ですね。
今回は量が多いので中華鍋で作ります。
今まで必要なかったのですが、お客さんが増えた時にいっぺんに調理できる大きいフライパンがほしかったので代わりに使えそうなこれを購入しました。
他にも冷奴の塩昆布乗せや、焼ラーメンなども作ります。
全部簡単に作れるけど良いおつまみなんですよね。
「おまたせしました」
調理を終えたモノから順番にお客さんに出していきます。
みなさんそれらをがつがつと、親の仇のように口に放り込んでいます。
しばらく様子を観察していると、食べ終えた騎士さんに手招きされました。
「なんでしょか」
「いや、英雄殿は否定したんだけど本当に何もなかったのかなーと思いましてね」
騎士さんがそう言った瞬間、他の人たちもピタリと動きを止めてこちらに視線を向けてきました。
騎士になるための条件って無礼な事とか、デリカシーがない事が含まれているんでしょうか。
「女性にそう言う事を聞くのは失礼ですよ。
でも、お答えするなら何もありませんでした。
ちょっと、触られたくないところに顔をうずめられたりもしましたけど。
主にお腹に。
「……英雄殿、ちょっと表に出てくださいますか」
「面、貸してくれますよね」
「いてこましたる」
「ぎょりかれすきごん」
さっきからまともにしゃべれていない人がいますが、それも連れていかれた亮君も無視します。
そしてジョンさんの注文したマンゴーパフェを作りに厨房に向かいました。
結局亮君が戻ってきたのはそれから10分くらい経ってからでしたね。
恨みがましそうな目線を向けてきましたけど、ウインクで打ち返しておきました。
なんだかこの喧騒があると、平和だなと感じるようになってきました。




