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ヘブンズエッジ  作者: 夏坂 砂
Chapter3 – Awaking
17/46

空のまぶしさに目を細める。自分の知っているよりも高く感じる空は、カインを拒絶しているかのように冷たく澄んでいた。

(寒いな……)

むき出しの二の腕をさする。随分北へ着たようだ。

いつの間にか見知らぬ場所に着ていた。ひとつ国境を越えるだけでこんなに温度も文化も違うんだなあと少し感慨深く、再度カインはあたりを見回し、ため息をついた。随分と意識を失っていたようで、体がやけに重く感じた。

ふらふらと歩き回っている内に街の裏道に入り込んでしまったらしい。少し歩いて見たところ、この街は狭い坂道が目立つ活気のある街だった。だが迷い込んだここは完全に裏通りのようで、白い砂地の細い道の左右に小さな白い家が並び、木漏れ日の中静かにたたずんでいる。

―――歩くのは好きだ。楽しいから。

いたる所に面白いものは存在している。

賑やかな商店街、人の居ない通り、路肩に置かれたじょうろの陰、古い樹の洞。

何処にでも、いくらでも。

この世界は数え切れないほど沢山様々な存在があって、そのどれもが何かを内側に秘めている。何の変哲も無いと思っているものこそ、じっと見れば見るほど驚きが隠されている。

歩くのは好きだ。楽しいから。

(だけど)

足を止める。いつの間にか道は行き止まりになっていた。道の終わりは小さな空き地。奥は低い柵で、這った蔦が青い花をつけている。

カインは少し考えた後、その柵の手前に座り込んだ。丁度いい大きさの白い石が置いてあり、服を汚すこともなさそうだ。

深呼吸すると草の柔らかい香りが体中に入り込んでくる。

草の香りも土の香りも、肌に当たる風の冷たさだって好きだ。

見上げた空は青く澄んでいるし、街並みは独特で綺麗だし、沢山寝たから気分もすっきり。こんなにステキなものが揃っているから、鼻歌だって出てきそうなくらいな今なのに。

(なのに、……おかしいな)


今日はあまり、楽しくない。

唐突に喉の奥が震えて、慌てて口を引きむすんだ。思わず口に手をあて、俯く。

「……っ」

急に熱くなった目からぼろぼろと涙が膝に落ちて、驚きに目を見開く。

慌ててどうにか涙を止めようと、手の甲で頬を伝う流れを拭おうとしたが、口から手を話した途端にのどが震えて嗚咽が漏れそうになり、慌ててまた口元を押さえ込む。

(何で……)

「何でっ……」

溶けて失ったはずの腕は、そんな事実など無かったかのように何も変わらずついていて、こうして口を覆えば冷えた指先は熱を持った頬に冷たい。

全身から全ての力を出し尽くすような力の本流が流れ出した覚えがあった。人が一人生まれて死ぬまでの、その膨大なエネルギーの何倍も、何十倍何百倍も巨大な。

なのに、……自分は死なない。

(怖い)

何をするか分からない、自分が怖い。

何で、と上向く。透き通った青空が潤んだ目に凍みる。

「何で、俺なんだ……っ」

解ってしまった。気づきたくなんて、無かったのに。


喉の奥がツンと痛んで、カインは瞳を瞑り震える息を静かに吐き出した。






キャサリンが目を離した隙に居なくなったらしい。シンが部屋を覗き込むとカインが眠っていたベットはもぬけの空で、開け放した窓から入り込む冷たい風がカーテンを揺らしていた。

「逃げ出したとは思えないけどね。それに意味が無い、むしろ危険だって事くらいあの子ならわかってると思うし。でも護衛についててくれた人たちを巻いたらしいのよ。全く何考えてるのかしら」

そういってリズが頭を抱え、「探してくる」とキャサリンと共にモーテルから出て行った。「シン君は部屋で待ってていいわよ」と彼女は言ったが、シンも外へカインを探しに出ることにした。何もせずにいるよりも、何かする事があった方がいい。じっとしていると、意識がマイナスの方向へと行ってしまいそうだ。

(どこだろう)

彼がどういう場所を好んでいるのか、どこへ行きそうなのかなどシンは知らない。彼の雰囲気的に明るい場所を好みそうだ。賑やかな表通りで世間話でもしているのかもしれない。そう考え足を表通りへ向けかける。だが一瞬迷い、足を反対の裏通りへと向け歩き出した。

なんとなく、今彼は静かな場所に居るような気がしたのだ。ただ一人、蹲っている様に思えた。垣間見た、記憶の中の彼がいつもしていた様に。

そしてそれは間違いではなかった。

日が差し込み、どこか非現実的にまで明るい小さな空き地。その奥の柵の前に見知った人物が膝を抱え、座り込んで居るのをシンは見つけた。

立てた膝に顔をうずめじっとしていて、表情はわからない。

差し込む日の光に、膝を抱えた二本の腕がやけに白く見える。

声をかけようと口を開き、だがなんと言えばいいのか解らず逡巡する。その合間に相手はシンの気配に気づいたのか、のろのろと腕の中から顔を覗かせた。

「シンか。……何?」

最初の言葉はただの呟きで、幾分くぐもって聞こえた。そのあと顔を上げ小さく首を傾げる。胡乱げに。どこか疲れた様な表情で。

そんな表情をシンは初めて目にして酷く動揺する。不自然に黙り込んだシンに、怪訝そうに眉を寄せてカインはシンを見つめる。金の髪が僅かに傾けた首にそって揺れ、小さく光る。

泣いたのだろうか。涙さえ見えなかったが、その目尻は僅かに赤かった。

自分の沈黙を、どう解釈したのかは分からないが、カインは何も言わないシンの前で少し困った顔で視線を彷徨わせ、あ、と何かに気づいた顔をする。「あ、そっか、そっか」と一人で呟くと、再度シンに視線を向けた。泣いていた事実も、何かに疲れた表情も全て無かったかの様に笑う。

「おはよ」

「……っ」

嘘の笑顔だ。直感的にそう気づき、シンは唇を噛みしめた。

悔しいと感じた。そんな作り物の笑顔で誤魔化すカインに何故か憤りを覚えた。だが何をどう表現すればいいか分からずに、静かに重い息をのみこんで彼の元へ足を進める。

カインの座っている場所は丁度日が差し込み暖かく、薄暗い裏道を通ってきたシンの目には少し眩しい。すこし霞んで見えるほどに。

「そういえばどこいってたんだ?モーテルにはキャサリンさんしか居なかったみたいだけど」

近づいてくるシンを見上げカインが口を開く。

「国王に会いに……、各国がどうトスカネルを見ているのか等を」

内側からの情報しか持っていなかった俺に、国王自ら詳しく話してくれた。

日向に出た為、幾分の温かさを背に感じながらそう告げる。

カインは「それで?」と続きを促すように首を傾けた。ここ数日間見なかったが、たしかにそれは見覚えのある目元に笑みの浮かんだ表情で、けれども確かな違和感を感じシンは黙り込む。

「……何?」

不思議そうなきょとんとした顔を見せるカインに、なんと言ってこの違和感の訳を説明すればいいのか分からずにシンは戸惑った。それが表情に出ていたのか、目の前の少年はいつもの大人びた苦笑を浮かべる。

「そんな悩まなくても。言いたい事あるんだったら言っていいからさ」

そう言ってもう一度「何?」と尋ねる年上の少年にシンは戸惑い勝ちに口を開く。

「……いや」

そんな顔で笑うな、など言える訳もない。

偽物の笑顔など作るな、など。

小さく首を振って、国王との話を伝えようと口を開きかけ、薄着をしているだろうと持ってきた上着をカインに差し出す。するとほっとした顔を覗かせ、「随分寒いとこきたんだな」と良いながら彼は上着を着込んだ。案の定寒かったらしい。

それを確認してから再度シンは口を開く。

自分の中で燻る不穏な感情を、あまり深く考えない方が良いのかも知れないと、ぼんやりと思った。

均衡が崩れつつあると、国王フランツは言った。

大崩壊からの復興にだけ力を注ぐ時期は既に過ぎた。人々はまた争いを思い出してしまった。

トスカネルという国は、その口火を切るつもりなのだと言い、「もう既に何年も前から切られていたのかもしれない」と国王は言い直した。

一地方組織であった教会が、いつから能力者の研究を進めていたかは不明だ。だが、少なくとも教会の研究所から能力者が脱出をはかった十五年前の事件よりも前から、教会は能力者の研究を行っていたし、その力を使用した侵攻を視野に入れていたのだろう。そして、教会は母体である国家へと研究成果を売りつけた。

『教会は独自に行っていた特殊能力者の研究結果を持参し、国王に陳情でもしたのだろう。この力を有効利用しない手は無いとね。その結果君たち審判者、とくに姉君の方は表舞台に多く立つようになった。力の象徴として、彼女は国家間会議の度に我々の前に姿を見せていたよ。過剰なデモンストレーションとともにね』

展示室のほのかな明かりの中、ゆっくりと足を進める。

「国家側、もしくは教会が故意に流した情報だろうが、審判者にはD地区のバリアを除く力があるという噂も流れている」

その言葉にシンは首を振り「知りません」と答える。

姉がどうかは知らないが、シンは自分にそんな力がある等とは聞いた事が無い。

シンの反応を見てフランツはその皺の刻まれた、だが老いの感じない顔に笑みを浮かべる。目元に柔らかい皺がよった。

「トスカネルはD地区の利用をほぼ諦めたという逆の噂も流れている。何が入っているか解らないブラックボックスに資金をかけるよりも、自国が一番研究の進んでいる能力者の力を利用したほうが手早く力を手に入れられるしね。だが、噂の何処までが本当で、何処までが捏造なのか、あるいは全て嘘なのか、それさえもわからない状態だ。今、多くの国家が君の出てきた国に注目している」

(何処まで本物で、何処までが嘘なのか)

このローエンティアに存在する国家それぞれが、今は静観の状態を保っているが、動き出すのも時間の問題だ。

この世界地図さえも十分に出来上がっていない世界に残された、旧時代の文明。軍事施設と思わしき施設が集中しているのはトスカネルだが、他にも世界中に用途の解らない遺跡は無数に点在している。それこそ、数え切れないほど。その何処までトスカネル、そして教会は把握して動いてるのか。侵略を目的として動いている事は分かるが、何をもって切り札としてくるのか。

「うちの調査団も極秘裏に出ているが、まだ不明点は多い」

国王は機械の足を見上げていた視線をシン、そして後ろで腕を組んで黙って話を聞いていたリズへと向ける。

「君たちのような特殊な力を持った存在が各国でどんどん認知されだしている。能力者の存在が認められ出したのはここ最近の事で、それが世界にとって何を意味するのかは分からないが、その力は大いに驚異になりうる」

「……何故中立国家であるこの国がこんな協力を?」

「私がリズ君の身内であるという事もあるが、その程度では国は動かない。我々ミンディアがこの戦い……そう戦いに秘密裏にとはいえ、参加しているのは別の理由からだ」

「それは……」

「トスカネルは確実に侵攻を進めようとしている。それも能力者や過ぎ去りし過去の遺物すら目覚めさせようとしている可能性が高い。その可能性から目をそむけることが出来ないから、我々は警戒を解くことは出来ない」

――標的になるのは、中立国だろうが何だろうが、隣国である我が国だろう。

そういってフランツは目つきを厳しいモノへと還変える。

「過去の遺物が驚異となりうるのか。それは分からないが……」

そう告げてから国王は何度か躊躇うように口を開け、閉じるを繰り返し、しばらく後ゆっくり口を開いた。

「……聞いたことはあるだろうか。わが国が中立国家であることを選んだ訳を。わが国に歴史的資料が、他国に比べ数多く残されているその訳を」

「いえ」と首をふるシンにフランツは頷き、「これも噂、しかも真偽の確かめようも無い遠い昔の事だがね」と前置きする。

「我々の歴史を今と昔に分断したのは、はるか昔軍事国家だったわが国の防衛システムが誤作動したせいだといわれている」

息をのむ。

そんな事を口にして良いのだろうか。歴史を分断した責任がこの国にあると言っている様なものである。黙り込んだシンを見つめて国王はゆっくりと言葉を紡ぐ。

「だが、それはこの国の王だから言うのではないが、間違いだと思っている」

「間違い?」

「まさにこの私たちの下、この場所の地価にわが国の、当時の研究施設の遺跡が存在するが、世界を崩壊に導くものとは到底思えない」

当時の先端技術に近いものであったことはわかる。今の技術よりはるか先を進んでいた技術であることも。だが、かといって歴史を消し去ってしまうほどのものではない。

足を止める。天窓のステンドグラスから、色のついた光が静かに差し込んでいる。

「わが国には一つ、旧時代にまつわる言い伝えが残っている」

「……言い伝え」

「かつて用いられていた古代語で『イル ファンテ ラ ディーヴァ』――秘密は、ディーヴァが握る」

「ディーヴァ?」

聞きなれない不思議な響きに、その言葉を繰り替えす。リズも何の事だかわからない様で、首を振って肩をすくめて見せた。

「調査を続けているが、相当な知識を持つものでないとわからないのだろう。いまだ知っているものにめぐり合ったことが無い」

そしてもう一言。

「『リタ ルイーナ デスタ アザ ディーヴァ』――――狂ったディーヴァは、世界を許さない」

「……………何、それ」

リズの声に困惑が滲む。フランツは首を振り、判らないと答えた。狂ったディーヴァは、世界を許さない。

「――私はこの国を護らなければならない。ディーヴァとは何か判らないが、なんらかの形でわが国が、そしてディーヴァが大崩壊に関わっていたことも、きっと事実なのだろう。だからこそ事実を突き止め、もうこのようなことが無いようにせねばならない」

まだ大崩壊は何も終わっていない。

地を裂き地形を変え、歴史さえ分断したその力が今もどこかで目覚めるのを待っているのだとしたら、

――これ程恐ろしいことはない。

そういって、国王は口を噤んだ。






突然強く吹いた風の冷たさに二人、肩をすくめる。

カインはシンの話が終わってからも暫く黙り込み何かを考えていた様だ。ふいに吹いたその風で、漸く表情に笑みをのせシンに顔を向けた。

「なんか、大変だな」

「……」

発された彼の言葉に罪悪感を抱き、シンは表情を曇らせた。何の関係もなかった彼を巻き込んだのは自分。だがその彼が敵味方に巨大なバリアをはるほどの力を見せ付けてしまった以上、もうカインは無関係ではいられないのだ。

「だが、関係ない」

今のところは。言葉を選び、どうにかそうとだけ答えるとカインは「うん」と頷いた。

「ねーさんを助ける。その他の事はシンには関係ない。残りは後で考えればいいさ」

うん。

再度自分自身の言葉に頷いて、カインは瞳を伏せる。

(俺の事じゃない)

シンが関係ないと言いたかったのは自分の事ではなく、カイン自身の事だった。彼は関係無かった筈なのだ。なのに自分を助けたばかりに巻き込まれた。

「……」

俺じゃない、そう言いかけだが何故かシンは逡巡し、口をつぐんだ。

言いたくない。「関係ない」などと。

(……何を、考えているんだ)

あの力を教会やコマドリの前で見せつけた以上、カインが既に関係ない存在になっているとは思えない。そしてソレはカインも分かっているだろう。

だがそういう事では無かった。そういう所とは違う場所で、自分は関係無いと「言いたくない」。

思い至った自分の内面に動揺し、シンはその黒い瞳を僅かに潜めた。ほんの僅かな変化だ。カインは気づかない。

シンの動揺をよそに、カインは二度三度、瞬きを繰り返し、空き地の白い地面を眩しそうに眺めた。

「そうだ、シン」

少し得意げに笑うとおもむろに立ち上がり、シンから数歩離れる。「みてよ」と言って、彼はすっと片手を自身の横へ延ばした。

「……っ!」

ふわりと光る、エメラルドの光。

掌から水が零れ落ちるようにゆるゆると溢れ出るその光は、今までに二度、見たことのある光と同じもの。

それは淡く光りながら空気に溶け込んでいく。

「もう、自在に使えると思う」

「だがそれは……っ」

「大丈夫なんだ」

はっとして力の使用を止めようとしたシンの声を、有無を言わさぬ口調でさえぎる。そして再度「大丈夫」と言いカインは微笑んだ。その微笑にはそれ以上の追求を許さない何かがあって、シンは黙り込むしか出来ず、不意に感じた感情に口元を噛みしめる。

(悔しい)

何も言えない自分が。

口を挟む資格も、抱え込んだ悩みも、全ての関与を彼に許されない自分が。

「そういえばさ

シンの葛藤を知ってかしらずか、カインは突然自身から持ち出した話を打ち切るように切り替える。

目の前に自身の淡く光る腕をかざし、数度握り開くを繰り返していたカインは、ふっとその光を払うように腕を振って脇に下ろした。光の放出がやむ。

「隠してんの?」

「……?」

「話を色々聞いてると、お姉さんが有能で、お前はあんまり、みたいな事皆いってるみたいだけど」

「……」

憎めない笑顔を浮かべているハニーブラウンの髪をした少年は、そんな事を本人を目の前にしてさらりと言い出す。シンは思わず目を見開き、なんと返せばいいか分からず言葉に詰まった。そんなシンの様子を気にもせずに「でもさー」と続ける。

「…人の時間を覗くなんて力が大したことないなんて、おかしくない?」

「……それは」

険しさと鋭さを増したシンの表情にカインは瞳を細める。

「記憶を強制的に共有できてしまうなんて、他人にとっては脅威でしかない。だから?」

だから隠してるんだろ。

声を潜めそう囁かれた言葉に思わず体を強張らせる。そして瞬時にシンは何故記憶を消す試みを、再度しなかったのかと酷く後悔した。消せないにしても口止めをしておくべきだったのだ。

何故か安心してそれをしなかった自分の甘さに歯噛みする気分だ。

その表情を読み取ったのか、カインはさも面白いといった顔をしてシンの顔を覗き込んだ。アーモンド形の大きなエメラルドの瞳が、してやったりという笑みと共にキラキラとした光をたたえている。ドキンと、不意に高鳴った胸にシンが何も言えずにその瞳を凝視すると、目の前で綺麗に微笑んだ薄桃色の唇が薄く開かれた。

「大丈夫だって。隠しといてあげるから」

甘く、囁くように。

「……っ!」

弾かれたように顔を上げるシンへ、カインはニンマリとした笑顔を向ける。

(弱みを、握られた……)

シンが既に無理やりにカインの記憶を弄ろうという気には到底なれなくなっている事を、彼は知っているのだ。一度敵ではないと認識した相手の内面を勝手に覗くことなど出来ない、シンの生真面目な性格をも把握して。

脅迫だ。

(こいつは悪魔か)

天使みたいな外見をして、やることはしたたかで、かなりえげつない。「なんか、気分いいな!」

そういってカインが浮かべた強者の笑みに、シンはガクリと肩を落とした。




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