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16 →撃沈

穂積(ほずみ) 真尋(まひろ)って男を知っているか?」


あの運命の日、大喜びで買いに行ってしっかと抱えて、私が命を落としたその時にも抱きしめていた、私がプレイすることが叶わなかったスノードロップのリメイク版、それに登場する新規追加攻略キャラこそが・・・穂積真尋、そんな名前だった。

今まで現れなかったから、すっかり忘れていましたよ!?



「攻略対象がふえるよ!やったね白羽ちゃん!」

「おいやめろ」


二時間目の授業が終わるなりギッとこちらの席に椅子を寄せて、私の机に頬杖をついて不吉なことを言ってくる友人を睨む。・・・ふむ、穂積 真尋か。正直彼についての情報は少ない、何せ攻略することは叶わなかったんだから。


「確か爽やか系だった様な?」

「ああ、そんな感じだったな」


公式サイトを見た程度の前世知識を何とか脳から引き出して、浮かんできたのは軽くニュアンスパーマをかけたふんわりしながらもサラサラな琥珀色の髪と切れ長な金の瞳、標準よりやや上の身長と適度に引き締まった身体はモデルか芸能人(アイドル)でもやっていそうな美少年然とした佇まい。


「あーハイハイ、勉強も出来るけど人当たりが良くて求心力もあってその実運動神経抜群で体育祭のヒーロー、みたいな?女子ウケもして少女漫画や乙女ゲーじゃ一人はいるタイプだな」


京歌は一言で言い切るとケッと毒づく、続けて「・・・ちょっと会長とキャラ被ってないか?」あーうん、それは私も思った・・・けど会長はどちらかというと王子系って言うか、お人好しで女性に優しいイメージ、反して彼は活発で明るい雰囲気かな。


「それはそうと、どうするんだ?」

「どうって、どうもしないわよ?」


数日前の私ならきゃっほーいとそのご尊顔を拝みに行ったかもしれないけど、今の私は先日の和ショックでこの世界は現実だって反省済みだし。それ加えてこれまで接してきた会長や蔵王くん、最上くん達にはかつてゲーム(スノードロップ)で何度も何周も楽しませてもらった、並々ならぬ愛情(萌え)という感情があるけれど・・・穂積くんに関してはこれといって何の感慨も無い。


「ふぅん?・・・ちょっと変わったな、白羽」

「変わったと言うか、元に戻った、憑き物が落ちたが近いかな」


生まれ変わってからは常時ハイテンションだったから、ここ数日の風邪はその疲労がドッと来たようなそんな気がする、生前の私はもう少し思慮深い人間だった・・・と言っても説得力は皆無か。「まあ穂積に関しては俺もその方が良いと思う」と京歌は目を細めてうそぶく。


「カンなんだが、どうもヤツには何かありそうなんだよな・・・腹に一物っていうか」

「京歌、同族嫌悪って言葉知ってる?」


どの口が言うんですか、失礼でしょうがと窘めると「チラッと見ただけだから何とも言えんな」と同族という言葉をさらりと受け流した・・・まあ触らぬ何とかに祟りなし、っと私から関わる気はないし、学年も違うからそうそうお近づきになることもないでしょう。



そんな風に考えていた時期が、私にもありました。


*  *  *  *  *


放課後、蒸しパンを持って京歌と一緒に生徒会室へと訪れる。これを渡して今日のミッションは終了だ、病み上がりの日って何だかひん死気味で一日が長い。生徒会室にはいつも不定数の生徒がいるから紙袋の中身を確認・・・うん、ちゃんと予備を用意してある。


「失礼します」

「お邪魔しまーす」


室内には既に生徒会長の陽高 晃人(ひだか あきと)、副会長の蔵王 惟真(ざおう ゆいま)、それから会計の吉居 宝(よしい  たから)ちゃんで正メンバーが勢ぞろいしていた。書記の京歌私と一緒に来たし、よかったこれなら一気に渡せる、宝ちゃんは和と同じ学年の同じクラスでゲームにも少し登場する・・・会長を巡ってのイベントが2、3あったりげふんげふん。基本的には容姿が整っていて可愛いらしい、性格は見た目と違ってさばさばとしてきちんと筋を通す、仕事が出来るいい子だ。


(はなぶさ)先輩こんにちは、常葉先輩風邪と聞きましたけどお体は大丈夫ですか?」

「うん何とか、ありがとう」


「吉居さん、あの人は生徒会の人なのかな?」

「ああ、黒髪でロングヘアなのが書記の英先輩、こちらの明るい髪色でセミロングなのが常葉先輩、正式な生徒会役員ではないけど時々お手伝いに来てくれるのよ」


よく見ると生徒会室に居たのは4人・・・うん、ていうかその顔は。


「吉居さん、そちらの方は?」

「お邪魔してすいません、俺は今日湊都高に転校してきた二年の穂積 真尋って言います」


やっぱり?京歌が笑顔で促すと宝ちゃんより先に本人が口を開く、当人は辺りに爽やかな笑顔をまき散らす。ニコリと笑っているのに凛々しさが残る表情は成程、女子ウケがいいだろう。彼に見えないところで京歌が表情を歪めたのを私は見た。


「彼は生徒会顧問の郷見(さとみ)先生に用があって来たんだよ」

「転校の書類諸々で聞きたいことがあったんですけど、どうも入れ違いになってしまって」


会長がさりげなくフォローする、郷見ちゃんと言えば担当は社会、お茶目で面白く生徒からは人気がある少々ふっくらしたおじちゃんだ・・・ちょっぴりサボり魔なところが玉に傷。ごく稀に授業すら放置するのが人気の秘訣かもしれない。「郷見ちゃんなら仕方ない」と言うのが生徒の中ではもう合言葉になっている。


「病み上がりが何の用だ」


それまでの和やかトークの流れをばっさりぶった切りにしたのは言わずもがな蔵王くん。PCを見つめたままこちらを見ようともしない。


「あんな風だけど惟真も君のことを心配してるんだよ、身体も辛いだろうし早く帰って安静にした方が良いんじゃないか・・・って、ね?」

「お二人ともありがとうございます」

「俺はそんなこと言ってないぞ」


謝辞だけ述べて本題を四角形に並べられた長机の誰も使っていない個所に置く。


「実は今回ご迷惑といいますか、お世話になった方にと僭越ながら蒸しパンを作って来たんです、良かったら皆さんで召し上がってください」

「わ、先輩私の分もあります?」

「うん勿論、穂積・・・くん?も嫌いでなければどうぞ」

「えっ俺まで良いんですか?」


多めに作って来たからと袋から取り出すと主に宝ちゃんから歓声が上がって、折角だから休憩しようと率先して書類を片付け始めた。やはり女子は甘味には逆らえないように出来ているのか、京歌も自分の席に着くとレーズン入りの物をサッと回収した。


「そうだね、ありがとう頂くよ・・・惟真もそれでいいだろう?」

「さっき授業が終わったばかりなのに、もう休憩か」


毒づきながらも割とあっさりパソコンを脇に移動させる、まあ一斉に食べてくれた方がゴミ処理しやすいし帰りやすい、そう思って棚からティーポットを取り出す。もう既に勝手知ったる生徒会室となっていて、大体何がどこにあるかは把握済みだ。


「じゃあ私お茶入れてきます、紅茶で良いですか?」

「常葉さん俺が行くよ、まだ体動かすの大変だろう?」

「いえこれくらい大した事じゃないですし、お礼ですから」


すかさず会長が立ち上がるけどそれを制する、お茶くみくらい一人でこなせる程度にHPは回復している。京歌はもう蒸しパンに齧り付いてるし、そっとドアをスライドさせると思わぬところから声がかかった。


「生徒がお茶なんて入れられるんですか?」

「え?・・・ええ、給湯室があるから」


いつの間にか私の隣に立っていた彼、穂積くんに話しかけられた。何だかお顔が興味津々だ。


「へぇー前の学校にはそんな所なかったですよ、先輩ちょっと見てみたいんで俺着いて行っても良いですか?」

「へ、別に面白いとこじゃないけど・・・見たいのなら一緒に行きましょうか」

「やった、ありがとうございます!」


端正なその顔を緩ませて笑う・・・あれ、近付かないはずだったのに何か妙に仲良しになってしまっている気がする?後輩系キャラの取っ付き易さ故か、ともかく連れ立って給湯室へと向かった。


*  *  *  *  *


「・・・ただ今戻りました、お茶どうぞ」


時間にしてたかが数分、やかんに入れた水がお湯へと変わるまでの僅かな時を経て、生徒会室へと帰ってきた。


「常葉先輩、案内してくれてありがとうございました」


にこっと、彼は先ほどと同じように凛とした表情で笑う、それに対して「いえ・・・お気になさらず」としか言葉を返せない。宝ちゃんが用意してくれたティーカップに人数分の紅茶を注ぐと、急に思い立ったように言う。


京歌(・・)、私ちょっとお手洗いに行ってくるわね」


何となく名前の部分にニュアンスを置いて呼ぶと、さりげなく意図を察してくれた彼が「それじゃあ私もお花摘みに」と応じてくれる、時々こういう京歌のカンの良さには救われる。


もう一度生徒会室を出て、近くの女子トイレに着くまで二人とも無言のままだった。私はひとしきり中を見て他に誰もいないことを確認すると、ぎゅっと腕を組む恋人にのようにそっと京歌の右腕を両手で抱きしめて、彼の肩に自分の額をコツンとひっつけた。


「やだもしかして私、襲われてる?」

「あほーう」


その状態のまま投げやりにツッコむと、京歌はふむと息を吐いてポンポンと軽く私の背中を叩く。まるで赤ちゃんをあやす様に、そのため私も肩に当てていた額を相手の首元まで摺り寄せる。


「・・・何があった?」


この状況でだんまりという訳にはいかない、恐る恐る口を開く。あ・・・ありのまま 今起こったことを話すぜ。


「転校生の追加キャラ、穂積 真尋・・・彼は」


忌々しげに、給湯室での出来事を思い返す。


「彼は爽やか系なんかじゃない・・・彼は、


 腹 黒 系 で し た ! 」


「ワァーオ」


楽しげな声を出す京歌もやや顔が青い。だってこんなのは想像の範疇外だ。


「しかもその腹黒系の標的(ターゲット)にされましたぁ!」

「わぁそいつは幸福だね!」


彼の腕に抱き縋って叫ぶ、幸い放課後だから人気も無い。つい先日とは全く違った意味で涙出そう!というかちょっとスノードロップの制作スタッフ!ほのぼのメインのこの世界観になんてクリーチャー送ってくれてるんですかぁぁ!

なかなか進みませんがやっと全キャラ出せました。

京歌、和、真尋で腹に一物トリオの完成ですw

これからその絡みも出していきたいと思います

評価、感想、ブクマ、有難うございます。

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