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転生人生、海辺の国家の第四王子  作者: 疲労感
第一章 幼少期編
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第1話 『ココは異世界らしい』

 一ヶ月だろうか。

 この世界で目覚めて、恐らくそれだけの時間が流れた。


 ココは異世界らしい。

 目覚めてから一週間後、赤ん坊である僕はすることが無いので窓の外を眺めていたんだが、ドラゴンが外を飛んでいた。

 奴は窓の直ぐ傍を飛んでたんだ、で、目が合った。目力ありすぎ。

 思わず全力で泣いたよ。


 それからも魔法やら何やらを駆使して丁寧に常識をすり潰された結果、ココは異世界であると判断するに至る。

 文明レベルとしては結構な昔…だろうか。

 良くファンタジーに出てくる中世ヨーロッパモドキの世界をそっくりそのまま再現してある。

 赤子の今はそれ程関係ないが、文明の利器に慣れてしまった身としては将来的に少々不便を感じてしまうだろう。


 まぁ、それはどうでもいいんだ。ココが異世界だろうがなんだろうが、構わない。

 問題は――


「はい、授乳の時間ですよー」


 これ。

 赤ちゃんなら当然必要な時間である。今のところ哺乳瓶等は見たことがない。

 これと排泄関係の処理は未だに慣れないし、慣れてしまうと人間として大切な何かを失ってしまう気がする。

 僕の苦悩を無視して、乳母のお姉さんが優しげな笑顔で近づいてくる。

 あぁ、分かってるよ。抵抗に何の意味もないと。


 心を無に。心頭を滅却すれば火もまた涼し。

 無理だ、泣きたい。

 黒歴史時代は誕生から5ヶ月間続くこととなる。





 いつも決まった時間の授乳が終わると、全力でお昼寝タイムに入る

 現実逃避では断じてない。

 僕が空腹で泣かないことから赤子の鳴き声で授乳のタイミングを判断するのではなく決まった時間になっているようだ。

 お昼寝が終わると自由時間であり、のんびり空を眺めたり、メイドさんに本を読んで貰ったりしている。


 流石にまだ言葉はしゃべれない――異世界なのに会話は日本語と、親切設計なので聞き取ることに問題はないが、赤ん坊は呂律が回らないので言葉にならない。舌足らずとかそんなレベルじゃなかった。あー、とか、うーとか、後泣き声の三パターンしか声を出せない。要練習。出せてもべらべら喋る生後一ヶ月とか不気味でしかないので喋る気は無いが――ので、メイドさんの気分によって完全に判断される。赤ん坊に決定権等無かった。


 現在は中心的に世話をしてくれる若いメイドさん二人と、授乳の時に登場する前述二人より年上のメイドさん。

 加えてたまに登場する母親。恐らく前世の僕より若い。父親は明らかに年上だったのに…

 ちなみに前世の最終年齢は27です。


 以上が狭い赤子の世界で数少ない交流のある人々である。

 交流と言うか僕が一方的にお世話されているだけだけども…


 誕生の時から薄々感づいていたが、この身は王子らしい。メイドさん達にもロイド王子と呼ばれているから間違いない。

 今住んでいる部屋は完璧に専用の個室になっていて、関係ない人は一切来ない。交流のある人が少ないのはそのためだ。

 未だに外に出してもらえない。これ、何て、軟禁?




 目まぐるしく、月日は流れる。

 誕生から7ヶ月。ついに練りに練った計画を実行する時が来た。

 四足歩行計画である。普通に言えばハイハイ。

 思ったより成長の速い体に、行けるかなー行けるかなーと期待を込めながら、まったく小さなベッドから下ろしてくれない大人勢に上目使いで願いを送ること一ヶ月。

 ついにベットの下、絨毯の引かれたフカフカの大地へ、母親に行き成り抱き下ろされただけだが、たどり着くことが出来た。

 少し離れたところに座った母親が期待を込めた目で見ている気がする。メイドさん達もだ。

 これはあれだ、四足歩行計画を大人勢も期待しているんですね。間違いないでしょう。


 いざ行かん、母の元へと。

 決意を持って僕はハイハイを実行した。

 …ふんぬぅあああ、思ったより、難しいぞ、これ。

 ハイハイと言うより、胴をベッタリとつけた前進…匍匐前進みたいなものになってしまった。


「お…おぉ!!流石ロイド様!やりました!やりましたよアシュリー様!」


 願ったものとは違ったがそれでも十分な成果だったようで、メイドさんの一人は大興奮。たっかいテンションのままに母親の方を揺さぶっている。首が大丈夫か心配になるぐらいガンガン揺らしてる。

 母親も涙を流して喜んでいる、筈。苦痛で涙を流してはいない、きっと。


 ちょっと大げさすぎる気もするけど喜ばれるのは純粋に嬉しい。

 気合を入れて母親の元までたどり着くと、優しげな微笑を浮かべながら抱き上げられた。


 何も無く退屈な7ヶ月だったが、これからはもう少し行動範囲が広がる。

 中々の達成感をもたらす一大プロジェクトだった。

 ではもう下ろしてもいいですよと、母親を見上げて意味の無い音を発してみた。


 ぐるんぐるん回りだした。母親が全身を持って喜びを表現しているかの要に、結構なスピードで回りだした。

 うっぷ、気持ち悪い。目が回る。

 母親もメイドの一人と同じで全身稼動タイプだったらしい。覚えておこう。





 誕生から、8ヶ月。

 タイミングは…今だな。

 以前、四足歩行計画から学んだが、活発な方のメイドさんも母親も、何かを成し遂げるとかなり喜んでくれるようだ。7ヶ月時点で完璧なるハイハイを披露した際も同じように高速回転を食らった。

 流石に5ヶ月時点の離乳食移行時は食後を考えてか高速回転の刑は無かった。

 活発メイドさんと母親がいると、危険だ。正直辛い。

 その点、今は都合が良い。

 普段は主に本を読んで相手をしてくれる、喜び方の静かなクール系メイドさんしか居ない。

 今日も絵本を読んでくれているメイドさんの下へとハイハイを駆使し移動する。


「どうしました?」


 普段は貴重な情報源としてだが、黙って静かに読み聞かせを聞いている僕が行動を起こしたことが不思議なのか、首を傾げている。

 あぁ、ついに、人類最大の発明をお見せしよう。


「あー、エ、リカ」


 大分拙いがちゃんと呼べているはず。流石に赤ん坊で敬称はありえないので付けない。

 どうだ、クール系メイド改めエリカさんよ。

 存分に味わうが良い、人類最大の発明、言葉を。


「ロイド様…やはりご成長が早いですね。アシュリー様とラナを呼んでまいります。少々お待ちください」


 あ、はい。

 思ったよりさっぱりしてますね。

 四足歩行時は天敵二名とは比べるまでも無いが、それでも結構ニコニコ喜んで賛辞を言って下さってましたが。言葉では戦力不足なのか。

 まぁいい、これからはコミュニケーションが取れるんだから。

 エリカさんは一礼すると、精錬された動きで部屋を出て――


「アァアアッシュリー様!ラァナ!ロイド様が言葉を、名をー!!お早く、どうか!!」


 廊下から大きな声が聞こえた。

 エリカさん、お前もか。


 その後淑女にあるまじき走りで部屋に駆け込んで来た母親と活発メイドに、私の名前を!とせがまれて拙いながらもミッションを完遂すると、高速回転のご褒美を頂いた。


 乳母のメイドさんは授乳期の終了と共に来なくなったので、現在僕の部屋に訪れるのは、メイドの金髪に青い瞳のエリカさんと茶色い髪と瞳のラナさん、加えて母親の三人。たまに壮年の恐らく父親、が登場するのみだったので他の人にもあってみたいな。それこそ異世界的な明らかにファンタジーな人とか。




 誕生から11ヶ月。

 そろそろ魔法について学びたい。


 今日のメイドはラナさんである。

 ラナさんは主に魔法で相手をしてくれる。

 今も水の魔法だろうか?を使って空中で水人形をくるくる回している。あ、回転を見ているとトラウマが。


「どうですか、この操作技術。まだまだ行きますよ~、とぅ!や!」


 興味津々で見ていたからか、ラナさんが得意げに水人形を増やす、加えてバチバチいってる電気的な人形と炎で出来た人形、光や土で出来た人形など様々な素材の人形を作っていく。

 どうですかと聞かれると素直に凄いと思える。他の魔法使いをよく知らないからでもあるが。

 エリカさんと母親は魔法を使わないので今のところはラナさんだけが交流のある魔法使いだ。


 さて。問題はどうやって魔法を教わるかだ。

 赤ちゃんが魔法を教えてくださいなど言えない。


 今日も打つ手が無いのでラナさんが楽しそうに魔法を繰り出しているのをのんびり見ながら自由時間を過ごした。





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