生徒会長の話
その人は、噂通り美しかった。
髪は長く艶やかで、美しい宝石を散りばめたかののような美しい瞳。
すらっとした体型でお嬢様と言う感じがした。
しかし、口調は気取らずに明るく接しやすい感じがした。
まあ関西弁だからな……
でもさすが生徒会長と言ったところか。
「さて何から説明しようか」
「じゃあ。あの化け物の事から」
なぜか生徒会長は、少し悲しそうな顔をした。
そして俺の寝ているベットに腰掛けて来た。
俺も体を起こして生徒会の少し離れた所に腰掛ける。
生徒会長は、は俺が腰掛けるのを確認してから話を始めた。
「まずあの黒い犬の正体は犬飼守や」
「え!? 何だって?」
俺は、素っ頓狂な声を出した。
いきなりおそろしい話が出てきた。
「まあ無理もないな」
「どういう事か説明してもらえますよね」
俺の喉はすでにカラカラなっていた。
「当たり前や……ええっと…どこから説明したらええかな」
「なぜ犬飼は、あんな姿になっているんですか?」
「そりゃ『罪』のせいや」
「つみ?」
つみって何だ?
「『罪』って言うのはな簡単に言うと超能力のことや」
「超能力…… 超能力ってあの物を浮かしたり炎をだしたりするあの?」
俺は、聞いてみた。
「その通りや! 」
「マジですか……」
普通の人なら不信に思うだろうが、犬飼あの姿を見たからか俺は、この話が変には思わなかった。
「で『罪』の事やけど、『罪』は、ただの超能力じゃないんや。変なところが二つあるねん」
「二つ……」
「まず一つ目。超能力って何で目覚めると思う?」
「超能力……? 脳をいじくったり研究所で不思議な研究で目覚めたりとかですか?」
首を傾げながらもなんとか答えた。
「そうやな。たぶん普通の超能力とかはそんな感じやと思うわ」
「『罪』は違うんですか?」
「『罪』は、名の通り何か悪事を働いた時に目覚めるんや」
「悪事??」
「たぶん悪事をした時の心の大きな変化や葛藤なんかの影響で『罪』が目覚めるんじゃないんかな」
「…………はあ……でもその方法でその『罪』ってのが目覚めるなら、たくさんの人が『罪』に目覚めてるんじゃないんですか?」
話が大きくなってきたな。
「ああ。普通はそうやな、でもな『罪』はおそらくやけど小学生や中学生ぐらい年齢の間にしか目覚めないねん」
「そう……なんですか……」
「それに誰もがみんな『罪』に目覚めるわけじゃないらしいわ」
「はあ……」
やばいな頭がついていかない。
「なんか全く意味が分からないっていう顔してるな」
「ええ……」
生徒会長は、ニコリとすると話を続けた。
「まあ、しゃーないか。でも説明は続けるで」
「はい……」
「とりあえず二つ目を説明するわ」
「お願いします」
「『罪』はな暴走するねん」
生徒会長は、淡々と言った。
「暴走……? 何で暴走するんですか?」
「それは『罪』は、使い方次第で強大な力やけどな所詮悪事を働いて手に入れた力、使う度にその過去を思い出し苛まれる。」
強大だがリスクが大き過ぎる力。
「そして『罪』に押しつぶされる訳や。そして『罪』の強大なパワーがバーンと暴走するねん」
「……それで暴走した人はどうなるんですか?」
「自我を失い『罪』を限界まで使って無差別に色々な人や物を破壊する」
「そうか……犬飼は……」
「ご名答。絶賛暴走中やね」
生徒会長は、悲しそうな顔をしていた。
この人は、本当に優しい人なんだと改めて思った。
「それってやばいんじゃないんですか?」
「だから私達生徒会がいるんや」
「生徒会……」
「生徒会の事も知りたいんやろ?」
「まあ……」
「生徒会とは『罪人』で結成された組織や」
「へっ!?」
「ああごめん『罪人』って言うんは『罪』に目覚めた人のことな」
『罪』に目覚めた人で『罪人』か……
生徒会長も『罪人』なんだろうな。
「いやそれはなんとなく分かりました。でも生徒会が『罪人』の組織……? 何でですか?」
「私達『罪人』の存在は世間には全く広まってないねん」
少し以外だった。
「え!? でも超能力が世間に広まらないなんて……」
「広まらん理由は『罪人』が自分の存在を主張せんからやろな」
「そうなんですか?」
「悪事を働いて手に入れた力を堂々と誇示する奴はなかなかおらんやろ」
今思うとそうだった。
「そうか……」
「それに『罪人』は、もしかするとあまりこの世界に存在してないかもしれんな」
確かにこの世界にたくさんの超能力者がいるとは考えられない。
「なるほど」
「まあ、そんな話は置いといて。生徒会の話に戻ろうか。聞きたい事があるんやろ?」
俺が頷くと生徒会長は、話を始めた。
「何で生徒会に『罪人』を集めたのですか?」
「さっき言った通り「罪人」はこの社会には認識されていない存在や。でも『罪人』の暴走はいつ起こるかも分からへん。その時に対応するためや」
生徒会は即答した。続けて。
「まあ生徒会になれば情報とかが入ってきてやりやすいと思ったけどそれ以上に忙しいねんな。こんなことなら生徒会長にならんかったらよかったわ」
笑いながら言った。
「警察に任せるって言う選択肢は無かったんですか?」
「もちろんあったよ。でもそれはもしかしたらたくさんの人に『罪人』の存在を知らしめる事になるんや。インターネットやニュースで報道されるかもしれん」
「それはダメなんですか?」
「考えてみい。突然事件で『罪人』が暴走してたくさんの人を殺したっていう報道を見た『罪人』は、どう思う?『罪人』は、はっきり言って超デリケートなんや。いつかは自分が暴走するかもしれんと不安になるやろな。その不安は確実に『罪人』を追い詰めていくその結果……溜めてたもんが一気にボンって訳や」
生徒会は、息を大きく吸い込んで続けた。
「そして『罪人』が孤独な生活を確実に強要されるようになってしまう。それだけはは絶対にあかん」
「それは確かにそうですけど……」
「それに警察は、この件に関してはあまり役にはたたん。現にこの通り魔事件は、全く手掛りを掴めてへん」
手を上に挙げてお手上げのポーズとって言った。
「………。」
「『罪』には『罪』で立ち向かうしかないねん」
「そうですか……」
生徒会長は俺を見据えると、続けて言った。
「犬飼が通り魔なんてなぁ」
俺は、言葉を返せなかった。
生徒会長は、まるで泣きそうな顔をしていた。