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ギルティブラッド  作者: 古炉奈
第一章 黒い犬と罪の血
3/7

黒川 夜水

家を出ていつも通り登校する。

高校二年になってもやることは変わらないことに少し憂鬱になる。

「そういえばうなされてたけど悪い夢でも見てたの?」

うなされてた? あまり覚えがないな。

「さあ 覚えてないな」

そう答えたが、何かすごく恐ろしい夢を見ていた気がする。

「ふぅーん……まあ思い出せないなら大したことでもないんだろうね」

「でも すごく怖い夢だった気がする」

「何それ!」

と少し微笑んだが、俺の顔を見て真面目な表情になった。

「どうした?」

俺が聞いてみた。

「思い出さなくていいよ……怖い夢なんてきっと損をするだけだと思うよ」

真剣な顔で言った。

きっと俺もそんな顔だったのだと思う。

(あかね)は、少し足を速めた。

気付くと学校の近くまで来ていた。




長い始業式が終わり。

クラス分けの掲示がされていた。

自分は、6組だった。

茜の名前を探すと4組の所に名前があった。これで2年連続違うクラスになる。

「残念だったね」

気付くと後ろに茜が立っていた。

「また違うクラスだな……」

「私が居ないからって変なことしちゃだめだよ!」

「なんだよ! 変なことって」

「まあ 別に大丈夫だろ。一年の時も何とかなってるし」

そう言った瞬間 茜とても悲しそうな顔をした気がした。

「クラスは違っても、帰りは一緒に帰ろうね。」

「ん? ああ そうだな……」

気のせいか……

クラスを確認したので教室まで行こうとした時だった。

(あきら)君!」

いきなり呼び止められて少しビックリする。

「絶対に一緒に帰ろうね。約束だよ……」

「おう! 約束だ!」

俺は、力強く返事をした。

クラスに入るとすでに教室に入っている生徒がたくさんいた。

殆どの生徒は、すでにグループを作っていてその中で楽しそうに話していた。

一年の時から人と喋るのは苦手なの特に誰とも話すこともなく。

俺は黒板に書いてある席順を頼りに席につく。

窓際の一番後ろとてもいい席をもらった、すでに隣の席の生徒は席について読者をしているのがわかった。

特に気にせず席につこうとした時だった。

「はじめまして」

落ち着いた声だった。

隣の読者をしていた生徒が挨拶してきたようだ。

「ああ はじめまして……」

すこし覚束ない感じの返事なった。

挨拶をしてきた生徒は、本を置いてこちらを真っ直ぐ見ると。

黒川(くろかわ) 夜水(よみ)といいます。よろしくお願いします」

落ち着いた雰囲気の少女だった。

髪はショートカットで瞳はぱっちりと言うより儚げ、眼鏡をかけていて知的なイメージがある美少女だった。

「夜神 彰だ よろしく……」

素っ気ない自己紹介だった。

「よろしくお願いします」

そこで会話が途切れた。

数分経った後に突然…

「あのー……すみません」

消え入りそうな小さな声だった。

さっきの子だ。

「ん? なんだ?」

「実は、お願いがあるんです」

はぁ… …なんだか嫌な予感だ少し緊張する。

「私と、友達になっていただけませんか?」

なんか律儀というかなんというか

俺は、こういう子がなんとなく苦手だった。

「別にいいけど……」

素っ気ない返事になった…

「えっ? いいんですか⁉」

黒川は、思ったよりも喜んでいた。

「ああ……別にいいぞ」

「よかったーー! ありがとうございます!」

そんな感謝されると、なんか困るな…

「まあ……よろしくな。」

「はい! こちらこそ。」



その日は、黒川と何気ない話をした。

おとなしい感じの子だと思っていたが、話すと明るい子でなかなか楽しい時間過ごせた。

その後は、担任の教師が簡単挨拶をして学校は終わった。

「それじゃあ……俺は帰るから」

そう言うと、なぜか黒川は落ち着きのない様子になった。

「あのーえっとその……」

なんだか不思議な様子にちょっと不安になる。

「どうした? なんかあるのか?」

すると決心したように俺を真っ直ぐ見ると。

「あの……夜神さん今日一緒に帰りませんか?」

ちょっと予想外の発言に少し驚く。そして

「ごめん……他の奴と約束してるんだ」

「あ! さっき話に出た幼馴染の方ですか?」

「ああ……ごめん誘ってもらったのに」

すると黒川は悲しそうな顔をしたが、すぐに笑顔で……

「それなら仕方ありませんね。少し残念ですけど。またのお楽しみということで!」

元気に言った。

その笑顔のおかげで少し心が軽くなった感じがした。

俺は教室から出ようとした時に、

「そういえば聞きたいことがあったんだ!」

「はい……なんですか?」

俺は、一呼吸置いて


「これからは夜水って呼んでもいいか?」


友達になるのに苗字で呼び合うのに抵抗があった俺は、出来れば名前で黒川のことを呼びたかった。

「……………」

なぜか返答が無かったので俺は、黒川の反応見てみた。

黒川は、目を見開いて……



怯えていた……



次の瞬間には黒川の表情は笑顔になっていた。

「別にいいですよ。友達なのですから」

俺は、なぜか黒川の笑顔が恐ろしくて仕方がなかった。

「それじゃまた明日な……」

「はい!また明日」

俺は教室をあとにした。







黒川夜水は、教室に一人で佇んでいた。

「また明日か……」

とても、嬉しい言葉だった。

友達はもう作らないって決めたのにな……

今日、心の奥底に閉じ込めていたはずの思い出したくない過去が蘇った。

「「これからは、夜水ってよんでもいい?」ってまるで同じセリフですよね……」

(大丈夫もうあれは過去のこと……もう前に進める)

そう前に進むためにあの決断をしたのだ

もうあとにはひけない。

自分に言い聞かせても、心は落ち着かなかった。

「受け入れてくれますか? 私の罪を?」

呟いた声は、誰の耳にも届くことはなかった。






あぁー! くそ!

帰り道に考えても、黒川のあの表情の意味がよく分からなかった。

とてつもない不安に襲われて今にも泣き出してしまいそうな、そんな表情だった。

考えてもどうにもならないことだと思うが、どうしても気になったのである。

「また明日か……」

呟いた声は、力がない感じがした。

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