表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

閻魔の話

作者: Crying

冥府…それは死者がたどり着き最後の選別をうけるところ。そんなところに貴方と閻魔はいました。


たまたま死者が来ないので雑談をしていたのです

それでふっと閻魔は語りだしました。


ふと昔の事を思い出した。

日の光と風が気持ちよかったあの頃…まだこの俺が人間だった頃だ…。

いや、今も人間の形だし、構造もまったく変わらないから人間なのかもしれないけど。

そんなことではなくて“普通”だった頃のことだ。


俺は昔っから男勝りで、女っぽいところは全くないと思われていたっけな。

実際は可愛い服とか興味あったけど…まぁ周りがそれを許してはくれなかったっけな。


周りが言うに俺は美人だったらしい、どれくらいかは知らないけど…結構頻繁に告白しに男子どもがやってきたのは覚えている。


ことごとく振ってやったがな。


だって知らない人だったし。


そういえば世樹せいじゅ 利運りうんだけは告白してこなかったな。

あいつはオムライスが大好きで他人の家だろうとお構いなしにやってきたっけな。


あいつどうしてるだろう。死んでしまったのは覚えているのだが。


そういえば俺のことを何一つ君に話していなかったね。

俺の名前は…そうだな、今はヘルとでも呼んでいただきたいね。


昔は閻魔えんま つぼみって呼ばれていた。


可愛い名前とかいうとどっかのツボミさんと同じだからやめて頂きたい。


そして俺は不老不死だ、生きた不老不死…結構珍しいタイプの。

生きたとか死んだとかは後で話すとして。


なんで不老不死になったのかを話そうか。


そう、俺が高校生の頃。

突然やってきた白衣の爺どもが学年の子たちを研究材料とかいってつれていったのさ。

普通じゃありえなさそうだけどありえたんだ。


それで不老不死になる注射を受けた。

俺は最後だったから仲間の様子とか見ていたけど…あれは地獄だよ。

苦しみもがき引き裂かれて流血し、それでも死ねないで数時間苦しみ…そして逝く。

それを何人とかいう単位では表せないほど見た。


仲の良かった斉藤さいとう 磨真たくま太田おおた 華恋かれんも死んでしまった。


利運はすこしだけ他とは違ってすぐに死んだりしなかったし、苦しみもしなかった。

大親友だから死んでほしくなかったから安心したんだ。


だけど…


俺の番がきたとき利運はすこし笑って言ったんだ。

「何があっても成功するように祈ってるよ…」

ってね。


利運はすこし特別で、運がよかったというか…願い事が通じるっていうか。

なんかすごい奴だったんだ。

だからそいつ生きていたんだと思うんだけど…

俺にそんなこというもんだから…


俺が注射を受けたとき

俺の体は悲鳴を上げた。


体中のあちこちが痛くなったし血もでた…でもしばらくすると何ともなくなった。

平気だと俺が思ったと同時にベルがなったのさ。


利運の寝てる部屋のね。


病室みたいになっててさ。

病院でいうナースコール的なものがあるんだけど。

それが鳴り響いたんだ。


あわてて俺とほかの科学者が見に行ったんだよ。


そしたらそこには苦しむ利運がいてさ。

血の池だったんだ。


そして俺に言ったんだ

「ごめん、一人にして…待ってて。きっと輪廻してまた会えるから」

そういって俺の手を握りしめたんだ。


それで利運は死んでしまった。


残ったのは学年で俺だけだったのさ。


誰も望んじゃいなかったのにね。


とても悔しくて悲しくて、自分を抑えられなかった。


気が付いたら俺は科学者を殺していたのさ…

手にべっとりついた血が涙でかすんでさ…


その場で泣いてたのかもね。よくその辺は覚えていないんだ。


それで、待っててって言われたからどこで待とうかと考えて閻魔になったってわけ。


ああ、あのころの日常が今はもうここには存在しない。

今も一人でさみしくしてなきゃいけない。


待ってるけどなかなかあえなくて。

すごくさびしいのになぁとか。


なんだかんだで京は生きてるねそれ以上だとは思うけど。


ずっと生きたままここで死者の選別をしているんだ。

とってもさみしいし面倒だよ?


あ、ごめん話がそれてしまったね。

まあどうでもいいことなんだけど。


ん?生きた不老不死のこと?


あ~それはこれから話してあげるよ。


不老不死ってのは普通「刺されても死なない」とか「年をとらない」とかでしょ?

その原理ってなんだかわかる?


死んだ不老不死の場合「元々死んでいる」から「不老不死」なんだよ。

死んだ人間にナイフを突き立てても血は流れないし、痛みもない。

死んでるんだからまさか年を取るわけがないよね。


そうそれなんだよ。

死んだ不老不死は何らかの事象で魂のみにしてしまうやり方でできた不老不死のこと。

魂が食べられないように加工するだけで不老不死になれるのさ。

簡単でしょ?食べれないような細工なんていくらでもできるよ。

魂をあいまいな存在にすればいいのさ。


まあその辺は君にはわからないかもしれないけど。


で、生きた不老不死ってのは

肉体や魂や命があるにも関わらず死なないってことでね。

普通ならバリアとかそういうたぐいで攻撃が効かなかったりとか生きて死んでを繰り返していたりとか…

そういうのは珍しくないんだよね。


どうして俺が珍しいかっていうと。

生きた不老不死なんだよ本当に。

刺されて痛いけど死なない。失血してもぜんぜん死なない。

あまりにも失血すると気を失いかけるけど。まぁその辺はいいや。


だからって俺は生き返って死んでを繰り返してるわけでもない。

純粋に「生きている不老不死」なんだ。


だから珍しい。


分かった?


まあいいや…


最初とだいぶ話がそれたけど面倒だからいいや。

俺は疲れたよ。仕事の残りは君がやってくれるんでしょう?

頼んだよ?


ふあぁ…


何がいいか悪いかなんて言うのは閻魔である俺が決めること。

お前は何も考えなくていいのさ。

たかが100年も生きられない動物がそんなこと気にしてどうする。


人生そんなこと気にして生きていたら楽しめないと俺は思うよ。

でも先に言っておくとしよう


同格生物同士の殺し合いは間違いなく地獄。


殺したりしない限りは地獄なんてないと思え。


俺はそういってやるよ。


人間には考えられないかもしれないけどね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ