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紅き月  作者: 桜酒乱酔
2/5

覚醒、そして仲間たち

ソフィアの力については追々明らかにしていきます。拙い文章ですがお楽しみください

ヴァンは焦っていた。

この王国の王族は滅ぼしたはずだがもし生き残りがいたら?そして王族の直系がいたら?それは彼以前の玉座に座っていた者は誰も考えて来なかった事だ。皆国と政権を乗っ取り、自分の一族の発展に酔いしれていたからだ。100年もの年月が過ぎ去った今玉座にいる彼はなりを潜めていた王族が国をひっくり返す気がしてならなかった。王族は皆16歳で即位権を得る。その前に、その前に消してしまいたかった。

「まだ見つからないのか!」

そう呟いて机を叩いたヴァンの表情は恐怖と猜疑心に満ちていた。


夜ソフィアはベッドに入り今日の出来事を振り返っていた。何をどうしてああなったのか自分が全然わからない事に驚いていた。確かに自分がした事だが何故何をしたかもわからないのか。ソフィアはそれを考えると寝つけなかった。ふと窓の方を見るとぼんやりと紅い光が射し込んでいた。

「紅い…月…。」

そう呟いた時ソフィアは体に電流が走ったかのような衝撃を感じた。何かに突き動かされるように彼女は部屋を飛び出し表へ出た。

「目覚めの儀を、ソフィア姫。」

ソフィアが外へ出ると眩い金の髪をしたエメラルドの瞳の少年が立っていた。その声に従うようにソフィアは呟いた。

「私ソフィア・アインベルドは王族の血の下に民を導く者なり。」

ソフィアがそう言うやいなや彼女の体は光に包まれ瞳はルビーのように鮮やかな赤へと変わった。ソフィアは驚愕した。頭が妙に冴えているのだ。5歳より以前の記憶を一気に思い出したのだ。ソフィアは滅んだとされている王族の直系であり、正当な後継者なのだ。ソフィアは自分が孤児院にくる前の事を思い出した。ヴァン達から逃れるように隠れ住む日々、そのストレスから体を壊し母が床に伏し、亡くなった事。亡くなる直前にソフィアの記憶を消し孤児院に預けた事も。

「お会いしとうございました、ソフィア様。」

少年はそう言うとソフィアの前に膝をついた。

「私は代々王族にお仕えしている一族のカイン・アーデリアでございます。今夜は紅い月の晩、ソフィア様の目覚めの儀のために馳せ参じました。」

ソフィアはカインの態度に少し戸惑ったがカインに微笑み返した。

「紅き月の夜血が目覚めるとはこの事だったのですね。」

王族にはある特殊な血が流れていた。この王国がある大陸を作り出したとされる神の血が流れているという。神の血は長い年月を経て人と交わり脆弱になっていった。だが200年に一人元の神の力と血を持つ王が現れる。

「それが私だって言うのね。」

カインは頷いた。だが今は大臣の子孫によって圧政を強いられているこの国で目覚めたとして何が出来るものか。ソフィアはあまり希望を抱いていなかった。

「ソフィア様、貴女には力がある。」その力は弱き者を守るためにある。」

カインは真剣な眼差しでそう言った。


「ソフィア様、貴女には革命を起こしてもらいたい。」ソフィアは耳を疑った。ソフィアが神の血を継ぐ王族なのはわかった。だが今は別の者に政権を執られている国の一民衆でしかない。それにソフィアはまだ16歳の子供だ。革命など起こせるはずもない。第一一人で何ができるというのか。権力者に仇成す者として処刑され散っていくのは目に見えている。


「ソフィア様は一人ではございません。」

カインはそう言うとソフィアの手を引き教会の裏の森へと入っていった。森を奥へ奥へと進んでいくと大きな岩があった。カインが岩に何やら手をかざすと岩はゆっくりと動き出した。岩の下には大きな空洞があり、奥へ続く石段は歩きやすいように舗装されていた。カインは先に石段に降りるとソフィアへ手を差し出した。ソフィアはどこへ続いているのかわからない洞穴に入るのは少し気が退けたが覚悟を決めるとカインの手を取った。


石段を下りきるとそこには大きなホールのような空間があり、街の男衆が集まっていた。皆こんな時間に何のために集まっているのか。ソフィアは何一つ状況を飲み込めていなかったがカインに導かれるまま歩いた。

「皆、静粛に。」

カインがそう言うと皆さっきまで騒がしかったのが一気に静かになった。

「先ほど王国の真の継承者ソフィア・アインベルト様が目覚めの儀を終えられた。」

空間内がざわめく。そして全ての視線がソフィアへ向けられる。ソフィアは集まっていた人々を見た。いつも大きな魚を譲ってくれていた魚屋のおじさんもいた。

「今こそ我ら革命軍、旗揚げの時!」

革命軍、ここに集まっている人々はソフィアと同じく圧政に怒り、状況を変えようとしている同志なのだ。さっきまで一人では何もできないと思っていたソフィアに勇気の火が灯った。


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