第二章:魔獣討伐任務編-第三話
靄がかったような不思議な感覚を握りしめる。
多少の回復にはなるがやはり『心配』という好意は弱すぎる。一時的な回復にしかなり得ない。
逆転には、もう一人隊長級の戦力が欲しいところだ。
しかし、護衛部隊とアデンはほかの魔獣に苦戦しているのだろう。姿が見えず、テルは部隊員を任されている以上援軍は望めない。
「ナズ、後方に向かえ」
「逃げろってことっすか?!」
「そう怒らないよ。最後まで聞いて、援軍を頼む。ヒーローかレオナードを呼んできて」
視線を魔獣からそらすことなく指示を出す。ほかの隊員には、現在の間合いを維持するようにと命令した。
能力に頼れないこの魔獣相手では、遅れを取る。そう判断しての決断だった。
「行け!ナズ!」
その一言とともにナズと魔獣が同時に走り出す。
相も変わらず避けるが、先の傷が開く。
「痛っ…」
一瞬の隙ができる。
魔獣はそれを逃さない。
___避けられない。魔獣の牙が光るのをただ見つめる。
「そこにレオナードさんが参上、っと!」
魔獣の首が落ちる。
血がどろりと垂れ、まるで元から死んでいたかのように腐敗臭をただよわせた。
名乗りをあげたその人物は、大剣に付いた血を払うようにしながら背中に背負いなおす。
「うえっ、魔獣の毛か?口に入ってきやがった…」
折れた角の目立つ褐色肌のその男は、空気を和らげる。
護衛部隊の副隊長、レオナードだ。
「遅かったじゃん、レオナード」
「はぁ?こっちの魔獣の大変さを理解してから発言しろよ〜?」
「はは、こっちも大変だったんだよ。」
「「動きが読めなかったから」」
二人の言葉と視線が合わさる。
「最強の方もか、こりゃあ仕組まれてるかもな」
「そうだね。
さて、残りの中型を…」
立ち上がろうとしたが、ふらついてしまう。
レオナードが支え、どうにか立ち上がるが、怪我は隠せそうにはなかった。彼の手には血がべっとりと付いていた。
「おい。この傷でどう戦うってんだ。後方へ下がれ」
「下がってられないよ。まだ私の部隊が戦っているんだ」
「そうか。知らんな」
気が付けば最強さんは、レオナードに担がれていた。
「お前らも、対応してる魔獣を討伐次第後方へ戻れ!奇襲部隊の役割は既に済んでいる。あとは護衛に任せろ!
お前らの部隊長の代わりに命令だ。他部隊とはいえ、副隊長からの命令だ。聞かないとは言わせないからな」
有無を言う暇すら与えず二人は後方へと姿を消す。
最終的に、この作戦は『成功』の二文字を掲げ終了した。
そして怪我をした彼女は__




