第1章:昇級隊員編-第二話
本日二度目の怒号が響き渡る。
「そこの最強!!!そこになおれ!!」
叫ぶ直前に肺いっぱいに空気を溜めていたのだろう。その怒号はA級訓練所どころか、城内にまで響いたかもしれない。
「やっぱりカンカンだったろ?それよりもうるささが目立つけど」
「なっ?」と同意を求めてくるヒーローに対し、
「想像していたより酷い。どうしよう。助けてヒ〜ロ〜」
と泣き言をこぼす最強さん。
「はいはい、寝坊しなきゃこうならなかったかもね〜」
さっきまで走っていたくせに、今はとぼとぼ歩きながら無駄話をしている。
痺れを切らしたユダがまた怒鳴る。
「何歩いてんだ、さっさと来い!!」
般若の面相で詰め寄って来るが逃げる訳にも行かず、「怖すぎるよぉ…」と泣き言をこぼす結果となった。
ようやく三人のA級隊長が揃う。
試験の開始時間から優に二時間は経過している。
「本っ当にお前は…!」
呆れたように、もしかしたら怒りが一周した呆れかもしれないが、ユダは溜息をつきつつ愚痴をこぼす。
その感情は棘のような痛みで手のひらを襲う。
「ごめぇん、ほんっとうに今日だけは早く起きるつもりだったんだけど…」
と最強さんが言う。すると
「生活習慣のたるみでは?」
と、奇襲部隊の副隊長である彼、アデンはそのツギハギの顔に呆れの感情をうかべさせながらこたえつつ、こう続ける。
「最強サマ。こんなこともあろうかとボクは昨日予め言ったよね?<起こしに行こうか?>って、そしたらあなたなんて言ったっけ?」
アデンは最強さんに詰め寄る。
先程の痛みが増幅する。
アデンもなかなかに怒っているようだ。
「え、えーっとぉ…だ、<大丈夫!さすがに大事な日はちゃんと起きるよ!>…って言ったような、言ってないような…」
「昨日はちゃんと目を見て言ってくれたのに、今日は目を逸らしまくってるね。
どうしたの?」
「アデン〜、圧が凄いよぉ…」
彼女の同僚達はいつもの光景を見るような暖かい目をして眺めた後、
今日が顔合わせ兼、試験であることを思い出しそれぞれの役割に従事する。
「まぁ、今日はここまでにしといてだな…、試験に入らないとじゃないか?」
「うん。ただでさえ遅れているしな。さすがに始めなければ。テル、人数の確認と報告を」
最強さん以外の隊長が軌道を修正する。
「ユダ隊長。情報部隊、新入隊員全員揃っています。」
「ヒーロー隊長。こっち…護衛部隊も全員揃ってるぜ」
それぞれの副部隊長が受験生の出席の確認を行い、報告する。
「ちなみに、奇襲部隊も問題なく揃ってるよ。最強サマ」
「ん、ありがと〜アデン。じゃあ始めよっか」
他の部隊から一足遅れて、A級部隊の昇級試験が始まった。




