物語の結末。
暗闇で少女と出会ったあの日から、俺の夢の中に時折彼女が出てくるようになった。
あの時とは違い話しかけることも触れることも出来ない。ただ彼女を傍観するだけの夢だ。…けれどその夢から決して目を離すことだけは出来なかった。
少女は沢山の本が保管されている、図書館の中で1人泣いていた。彼女以外の人間がいないその空間で、たった1人で全ての物語に目を通して記憶する…誰かに話しかけられることも、話しかけることも出来ない真の孤独。
『誰かと会いたい、1人は寂しい』
と声も出さずに泣く彼女の姿に、俺に何か出来ないものかと悶々した感情がじわりと滲み出た。
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それからの冒険も決して楽ばかりではなかった。物語の筋書きに抗っている為、敵の強さも今までと違い仲間が大怪我を負ってしまうことも少なくなかった。過去の選択を後悔する訳ではない、けれど仲間を巻き込み傷付けてしまっているこの状況には思わず胸が痛んだ。
そんな葛藤を続けながらも、物語は最終局面を迎えようとしていた。
今はもう廃城になっているそこに、この物語のラスボスである魔王が待ち構えている。
俺は今日まで苦楽を共にした仲間達と最終決戦に臨み、そして勝利した。体力も魔力も限界まで消耗する、まさに死闘とも言えるものだった。
崩れ落ちていく魔王の身体を何処かぼんやりと眺めていたその時、まだ完全に崩壊していない魔王の左腕が、仲間に向かって渾身の魔弾を放った。
仲間達は攻撃を防ごうと身構えているが、体力や魔力を使い果たしている今の状況では気休めにすらならない。
───このままでは、間に合わない。彼らが死んでしまう…!!
(そうだ、ここで彼らを守らなくては…!)
そう思った瞬間、俺は残された魔力を全て身に纏い仲間の元へと駆け出した。
限界を超えた加速に、疲弊した身体のあちこちが悲鳴を上げるが気合いで我慢した。本来なら間に合わない魔弾に追いついた俺はそのまま仲間を庇う為にその身を投げ出した。
────結果的に仲間は助かった。
しかし魔弾の直撃を食らった俺の身体は、致命傷を負っていた。仲間達が涙を流しながら語りかけてくるが、何を言っているのかはもう分からない。
視界が暗くなっていく中、仲間と共にあの時の少女の姿が見えた。
───ああ、そうだ。まだ彼女を、救えていない。
そんな考えが頭をよぎった時、思わず言葉が零れ落ちた。
「大切な仲間を守れた、この世界を、多くの人を救えた。……だから今度は、たった1人の女の子を救いに、俺は行くんだ。」
もう仲間達の姿は見えない。だけど確かにそこにいる安息から、俺はそっと目を閉じて自分の人生に幕を降ろした。




