Prolog5 召喚された国
ぼくたちが水晶に翳し終えると、神官服の女性は再び口を開いた。
「みなさま、ご協力ありがとうございます。
それでは、この世界について説明させていただきます」
凛とした声が広間に響き、ざわめいていた人々がぴたりと静まり返る。
彼女の話によると、この世界の名前は “テイラルス”。
そして、ぼくたちが召喚されたこの国の名は “ディルカナ帝国” というらしい。
その後も彼女はいくつか説明を続けたが、頭に残ったのはその二つの言葉だった。
「みなさまには戦う力が与えられました。
ですが、魔王を倒すにはまだ力が及ばないでしょう。
――しかし、ご安心ください。我らの国が、あなたたちを必ず強くします。
どうかこの世界のために……力をお貸しください。勇者様方!」
最後の言葉とともに、広間に雄叫びが響き渡った。
拳を突き上げる者、涙を浮かべる者、隣と抱き合って喜ぶ者。
召喚者たちの熱気が、大気を震わせる。
――けれど、ぼくの胸は熱を帯びることはなかった。
声を上げるでもなく、拳を振り上げるでもなく。
ただ一歩引いたところから、その光景を眺めていた。
「勇者、ね……」
口の中で小さく呟いたその言葉は、熱狂の渦にかき消されていった。
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