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迷宮に囚われた男  作者: 火川蓮
第五章

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chapter36 不安が的中した

装備を支給されたぼくは、違和感を抱えたまま元の場所へ戻った。

受け取った装備を椅子の上に置き、小さく呟く。


「――ディスペル」


光魔法の一種、解呪の魔法だ。

淡い光が装備を包み込む。

すると、“なにか黒いもの”がじわりと浮かび上がった。


やっぱり、そういうことか。


黒い靄は光に焼かれるように縮み、やがて泡のように弾けて消えた。

支給された防具や武器は、“呪われた物”だったらしい。


召喚されたときから威圧的だった。

雫さんのこともあった。怪しいとは思っていたけれど――やはり、か。


異世界の物語ではよくある話だ。

ぼくたちのような召喚者は、人間兵器や操り人形に近い形にして、言うことを聞かせる。


召喚国からすれば合理的なのだろう。

魔物が跋扈する世界で、召喚者は元々いる人たちより強くなる傾向がある。


自国の利益のため。

神の利益のため。

あるいは戦争のため。


……みんなの装備も、きっと同じだ。

ぼくは静かに息を吐き、みんなが戻ってくるのを待った。


■ ■ ■


しばらくすると、みんなが帰ってきた。


「おかえりなさい」


ぼくが声をかけると、全員が支給された装備を身に着けている。


「なんか……この装備、気持ち悪い感じがするわね」


熊沢さんが顔をしかめた。


「確かに……言葉にしづらいですが、思考を刺激されているような感覚があります」


鳥沢さんも不安そうに続ける。

ほかのみんなも、表情に違和感を浮かべていた。


「みなさん、少しいいですか?」


ぼくは一人ずつ、解呪の魔法を施していく。

“軽い呪い”なのか、消費魔力は大きくない。

だが塵も積もれば山となる。

ぼくを含め二十一人分となれば、それなりの消耗だ。


それでも――雫さんが装着していた鉄の腕輪に比べれば、はるかに軽い。

あれは、相当強い呪いだったのだろう。

みんなの装備から、黒い靄が次々と浮かび上がる。

光に包まれ、泡のように弾け、消えていった。


「これでどうです?」


確認すると、しばらく沈黙が流れ――


「……楽になった」


「頭が、すっきりした」


次々と安堵の声があがる。


「ありがとう」


そう言われ、ぼくは小さく頷いた。

――やはり、警戒はしておくべきだ。

静かに、そう思った。

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