chapter36 不安が的中した
装備を支給されたぼくは、違和感を抱えたまま元の場所へ戻った。
受け取った装備を椅子の上に置き、小さく呟く。
「――ディスペル」
光魔法の一種、解呪の魔法だ。
淡い光が装備を包み込む。
すると、“なにか黒いもの”がじわりと浮かび上がった。
やっぱり、そういうことか。
黒い靄は光に焼かれるように縮み、やがて泡のように弾けて消えた。
支給された防具や武器は、“呪われた物”だったらしい。
召喚されたときから威圧的だった。
雫さんのこともあった。怪しいとは思っていたけれど――やはり、か。
異世界の物語ではよくある話だ。
ぼくたちのような召喚者は、人間兵器や操り人形に近い形にして、言うことを聞かせる。
召喚国からすれば合理的なのだろう。
魔物が跋扈する世界で、召喚者は元々いる人たちより強くなる傾向がある。
自国の利益のため。
神の利益のため。
あるいは戦争のため。
……みんなの装備も、きっと同じだ。
ぼくは静かに息を吐き、みんなが戻ってくるのを待った。
■ ■ ■
しばらくすると、みんなが帰ってきた。
「おかえりなさい」
ぼくが声をかけると、全員が支給された装備を身に着けている。
「なんか……この装備、気持ち悪い感じがするわね」
熊沢さんが顔をしかめた。
「確かに……言葉にしづらいですが、思考を刺激されているような感覚があります」
鳥沢さんも不安そうに続ける。
ほかのみんなも、表情に違和感を浮かべていた。
「みなさん、少しいいですか?」
ぼくは一人ずつ、解呪の魔法を施していく。
“軽い呪い”なのか、消費魔力は大きくない。
だが塵も積もれば山となる。
ぼくを含め二十一人分となれば、それなりの消耗だ。
それでも――雫さんが装着していた鉄の腕輪に比べれば、はるかに軽い。
あれは、相当強い呪いだったのだろう。
みんなの装備から、黒い靄が次々と浮かび上がる。
光に包まれ、泡のように弾け、消えていった。
「これでどうです?」
確認すると、しばらく沈黙が流れ――
「……楽になった」
「頭が、すっきりした」
次々と安堵の声があがる。
「ありがとう」
そう言われ、ぼくは小さく頷いた。
――やはり、警戒はしておくべきだ。
静かに、そう思った。
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