chapter34 夜中の出来事
翌朝
なんだか懐かしいものを見ていた気がする――でも思い出せない。
「あ、昨日の夜のこと」
ぼくはそう呟き、昨夜のことをみんなに聞こうと起き上がろうとした。
だが――体に柔らかいものが触れているのに気づく。
その方向を見てみると――雫さんがぼくを抱き締めて寝ていた。
(あれ……困ったな。これじゃ動けない)
こんな光景を見られたら、面倒なことになるだろう。
ぼくはそう考え、なんとか腕を動かし、掛け布団をかけた。
どうしようか――この状況。
(そもそも、なんで雫さんは……ぼくの布団に入り、抱きついて寝ているんだ?
……わからん)
そう思っていると、みんなが続々と起きはじめた。
「おはよう」
「おはようございます」
「おはよう、諸君」
熊沢さん、鳥沢さん、部長の声がした。
「あら、速水くんも起きてたのね、おはよう」
熊沢さんがぼくに気付き、声をかけてきた。
「お、おはようございます」
ビックリして思わず、声が上ずってしまう。
「どうしたの? 慌てて」
「いや、なんでもありません」
ぼくは言葉を濁す。
「そういえば、あの子知らないかしら?」
「え? 雫さんですか?」
「夜中にベッドから出ていったのは、覚えているのだけれど、さっき起きたらいなかったから」
「ぼくは見てないですよ。
すでに起きて、どこかにいるのでは?」
ぼくは、熊沢さんにそう返した。
(……言えない、“ぼくに抱きついて寝てますよ”なんて、言えるわけがない。
部長からも昨日、節度を弁えるように、と言われたばかりだ。
誤解とはいえ、大変なことになるのは間違いない)
「そう、速水くんもはやく、布団から出て来なさいね」
熊沢さんはそう言うと、リビングの方へ去って行った。
(なんとか、危機は脱したな)
ぼくは、安堵する。
まだ――全員起きたわけではないけど、面倒なことになる前になんとかしなければ。
(可哀想だけど、起こすか…)
ぼくは寝ている雫さんの体をそっと揺らして、起こした。
■ ■ ■
しばらくして――
「おはようございます」
雫さんが起きた途端、なぜかぼくに体をくっつけて甘えてくる。
(勘弁してほしい。ぼくも男なんだけどなぁ…)
ぼくはそう思いながら、雫さんの頭を撫でた。
すると雫さんは微笑み、ホールド状態から解放してくれた。
「もう朝だから起きようか」
ぼくはそう言って起床する。
■ ■ ■
先にぼくがベッドから出ることにした。
雫さんには、時間差で出てきてもらう。
でないと、怪しまれるからだ。
ぼくは――雫さんが誰からも見えないように、細心の注意を払い、ベッドから出る。
そして、何気ない顔でリビングへ向かった。
「おはようございます」
そう声を出して入ると、何人かが思い思いにくつろいでいた。
(ほかの人たちは、朝弱いんだろうか?
それか――不安で寝付きが悪かったのかのどちらかかだろうな)
昨日は色々あったしな、無理もない。
数分が経ち、雫さんと白銀さんが起きてきた。
「おはよう」
「おはようございます」
白銀さんがぼくを見つけるやいなや、腕に抱きついてきた。
「おはよう、颯哉くん」
そう声をかけられた。
眠気が残ったままなのか、安心できるものを確かめるような仕草だった。
(本当に――勘弁してほしい)
雫さんも白銀さんも自分の立場を理解しないんだろうか?
心臓に悪いからやめてほしい。
「おはよう、白銀さん」
ぼくは理性で抑えながら、そう返事する。
そして――背中に人の体温と重みを感じた。
首を動かし、確認すると、雫さんがぼくに抱きついていた。
ぼくは、ブルリと体を震わせる。
そんなやりとりをしていると、続々と起きてきた。
全員揃ったのを確認したぼくは、“昨日の夜の出来事”を話すことにした。
■ ■ ■
ソファーに移動し、座るも、雫さんと白銀さんはぼくにくっついたままである。
東側のソファーに座り、真ん中がぼく、右側に白銀さん、左側に雫さん。
雫さんの隣が熊沢さん、白銀さんの隣が鳩川さんとなっている。
鳥沢さんが鳩川さんの近くのソファーの肘掛け部分に座っている。
南側のソファーには、部長、鷹橋さん、鶴馬さん、巳島さん、カラスバさんが座り。
西側のソファーには、犀田さん、海蛇田さん、カメオカさん、コンドウさん、ヒョウヤさんが座り。
北側のソファーには、猫島さん、犬崎さん、カザクラさん、エンダガワさん、サギジマさんが座っていた。
「それでよ。 話ってなんだよ、速水」
みんなが揃ってソファーに座った瞬間、犀田さん一番最初に言葉を発する。
「昨日の夜なんなんですが、なんか“変な振動”ありませんでしたか?」
ぼくはみんなに尋ねた。
「変な振動?」
「なんだよそれ」
「地震じゃなくて?」
白銀さん、犀田さん、鳩川さんが声をあげた。
(“あれ”の説明難しいんだよなぁ)
ぼくはそう思いながら、続ける。
「そういうものではなかったですね。
なんて言えばいいいかな、なんかこう――
“世界がうねる”ような感覚でしたね」
ぼくがそう言うと。
「なんだよそれ」
犀田さんが笑いながら言った。
「気のせいじゃねぇの?」
「だと、いいんですけどね」
犀田さんの言葉に気なりつつもそう返すと、扉がノックされる音が聞こえてきた。
その音はどこか“重く”感じたのだった。
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