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迷宮に囚われた男  作者: 火川蓮
第四章

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chapter30 祝福の裏側

女性陣がお風呂から上がると、熊沢さんがソファに座っている少女に気づいたらしく、ぼくに声をかけてきた。


「速水さん、あの子は?」


ほかのメンバーも、ちらちらと少女に視線を向けている。

なぜぼくに聞いてくるのかは分からないが、知っている範囲で答えることにした。


「どうやら、別の部屋から追い出されたみたいで……。 ちょっと“訳あり”っぽいんだよね。落ち着いたら、事情を聞こうと思ってる」


そう言い終えた瞬間、みんなの視線が一斉にぼくに集まった。

同僚たちからは「お人好しの君なら、そうすると思ったよ」という視線。

今日初めて会った人たちからは、「優しいんだね」という評価の視線。

……なんとも言えない空気だ。


■ ■ ■


そんなやり取りの最中、扉がノックされた。

ぼくがドアを開けると、そこには先ほどとは別のメイドさんが立っていた。

一礼してから、彼女は穏やかな声で告げる。


「みなさま、お食事の準備が整いました。お迎えにあがりましたので、ご案内いたします」


それを聞き、全員でメイドさんについていくことになった。


■ ■ ■


なぜか――ぼくが先頭を歩く形になり、右腕を白銀さん、左腕を雫さんに掴まれていた。

その後ろを、他のメンバーが列をなして続く。


……正直、めちゃくちゃ歩きにくい。

両腕に伝わる柔らかい感触に、思考が乱れそうになる。

雫さんは、まだ不安なのだろう。助けられたという意識もあって、離れたくないのかもしれない。

だが、白銀さんは――なぜ?

理由が分からないまま、三十分ほど歩かされ、食事の部屋へと案内された。


■ ■ ■


案内されたテーブルに着き、各自席に座る。

テーブルの上には料理がずらりと並び、どれも美味しそうだった。


周囲を見渡すと、次々と人が集まってきている。

日本人ばかりだ。――ぼくたちと同じ、召喚された人々なのだろう。

多くの人が、不安そうな表情を浮かべていた。

だが一部には例外もいて、異世界に来たことを心から楽しんでいる様子の者たちもいる。


「おい、としや! 異世界だぜ、異世界!!

魔法が使えるんだぞ! 楽しみだなぁ!」


「異世界といえば冒険者だろ!

高ランク冒険者になって、チヤホヤされたいよな!」


「迷宮とかもあるのかな? 行ってみたい!」


声のする方を見ると、男子高校生らしき少年たちが騒いでいた。

周囲からは迷惑そうな視線が向けられているが、本人たちはまったく気づいていない。

……ぼくも、隙を見てこの国から逃げ出すつもりだ。

その判断は、きっと正しい。


■ ■ ■


しばらくして――部屋の最前列、そのさらに奥。

バルコニーのような高所に、複数の騎士らしき人物が姿を現した。

その中央に立つ、金髪の中年男性が口を開く。


「ティルカナ帝国は、この世界を救うため――

我らの召喚に応えてくれたことに感謝する。

ささやかだが、礼を用意した。どうか受け取ってほしい」


年齢は四十代から五十代に見えるが……

カラスバさんの例もある。実年齢はもっと上かもしれない。

そもそも、召喚に応えた覚えはない。

“ささやかな礼”とは、この食事のことだろうか?

周囲は歓喜に包まれているが、ぼくには異様に感じられた。


――喜んでいる人たちは、決まって腕に鉄の腕輪をしている。

明らかに怪しい。

彼らはすでに、“あの人物”の毒牙にかかってしまったのだろう。

……仕事が早すぎる。


さらに数分が経ち、食事が始まった。

ぼくたちも手を付けたが――

この国のきな臭さが強すぎて、

とてもじゃないが、食事を楽しめる状況ではなかった。

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