chapter5 シェアハウスする人たち その3
東西南北のソファーに腰かけたぼくたちの自己紹介が始まった。
最初は東側の真ん中に座るぼくから。そこから時計回りに進めていくつもりだ。
「速水颯哉だ。職業は剣士。よろしく」
先輩もいるけど、ここはあえてラフに名乗っておこう。
黒髪黒目、身長177cm。スーツ姿の男――それが今のぼくだ。
右隣の白銀さんに視線を向けるが、彼女は俯いたまま動かない。
仕方なく、肘で軽く小突いた。
「……ひゃっ!? 白銀優依華と申します。職業は魔法士です。よ、よろしくお願いします…」
声が震えている。緊張しているのが伝わってきた。
知らない世界で、いきなり共同生活。不安がない方がおかしいだろう。
白銀さんは肩まで伸びた茶髪に整った顔立ち。会社ではマドンナ的な存在だった。
スタイルも――いや、今は考えるな。
「そぉ…!」
ぼくの視線に気づいたのか、彼女が赤くなって腕を掴んできた。名前を呼ぼうとしたのを手で制し、苦笑いでごまかす。
そんなやりとりを見ていた熊沢さんが、呆れ顔で目を合わせてきた。次は自分の番だと合図を送ってくる。
「熊沢晄邏よ。職業は回復士になるわ。よろしくね」
落ち着いた声で名乗った彼女は、黒髪ロングの女性。シンプルな服装ながら、所作に品がある。控えめに見えて、その奥に芯の強さを感じさせる人だ。
自己紹介は、そのまま南側のソファへと移っていった。
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