『異世界ポン酢戦記 第1章 第1話』
こんにちは!本作『異世界ポン酢戦記』は――
「異世界×料理×神々×酸味(!?)」
という、正直どうしてこうなったのか自分でもよく分かっていない作品です。
主人公・味谷だし男が転移したのは、「調味料」が信仰と戦いの中心にある異世界。
彼は「ポン酢の女神」ポンヌとともに、しゃぶしゃぶに革命を、世界にさっぱりとした感動をもたらす……予定。
ギャグあり、熱さあり、ときどきキュンとするラブ(?)ありで、ポン酢の奥深さを真剣に、そして不真面目に描いていきます!
酸味とともに、あなたの味覚と感情を刺激できたら嬉しいです。
よろしくお願いします!
『異世界ポン酢戦記』
〜はじめがき〜
春の午後、ラノベ作家・味谷だし男のスマホが鳴り響いた。
――着信:担当編集・ゆずぽんさん
「お疲れさまです、味谷さん。今日は……とびきりの報告がありまして」
「……まさか!?ポン酢戦記の……?」
「はい。アニメ化、決まりました!」
電話越しの言葉に、思わず手が震える。三年前、自室のこたつで書き始めた物語がテレビに映るのだ。
「ポン酢は、世界を救う」
そんな信念のもと、僕――味谷だし男は、異世界ファンタジー小説『異世界ポン酢戦記〜運命のしゃぶしゃぶ〜』を書き上げた。
アニメ『異世界ポン酢戦記』は深夜枠で放送開始。
SNSでは「異世界でポン酢は草」と話題になり、書籍は爆売れ。たった3か月で50万部の増刷。
そして……アニメ放送終了と同時に、ソシャゲ化、カフェコラボ、海外展開、etc...
そんなある時、僕はアニメイベントの舞台に立つことになった。
イベントの目玉は、液体窒素と特製ポン酢を使ったサプライズ演出。
スタッフが「安全です」と言っていたが、内心では「大丈夫か?」と不安だった。
そして、演出が始まった瞬間、
――ドカーン!
大きな爆発音とともに、僕の視界は真っ白に染まった、、、
気がつくと、僕は見知らぬ草原に寝転んでいた。
空は青く、風は心地よい。
しかし、何よりも驚いたのは、目の前に立つ少女の存在だった。
彼女はポン酢を思わせるような黒い髪のポニーテールで綺麗な瞳を持ち、そしてポン酢の香りをまとっていた。
「ようこそ、ポン酢の加護を受けし者よ」
彼女の言葉に、僕は思わず口を開いた。
「えっ、ここって……まさか……」
そう、ここは僕が書いた小説『異世界ポン酢戦記』の世界だったのだ。
そして、目の前の少女は、物語のヒロイン、ポン酢の女神・ポンヌだった。
「あなたが、味谷だし男ね。私が呼んだのよ」
彼女の言葉に、僕は頭を抱えた。
「なんで、よりによって自分の書いた世界に…転生じゃなくて転移なのかよ!」
こうして、僕の異世界での冒険が始まった。
ポン酢の女神とともに、世界を救うための旅が。
第1話「だし男とポンヌ、旅のはじまり」
草のにおい。木のざわめき。そして、柑橘の香り。
それが、俺――味谷だし男の異世界初日の記憶だ。
だ「うう……ここは……どこだ……」
ポ「異世界よ」
だ「異世界か……って、えぇっ!?」
ポ「ねぇ、なんで今びっくりしたの?さっき半分納得してなかった?」
だ「いや、体が後から追いついたというか……」
ポ「リアクションが、、後から、、追いかけてくるよ。じゃないわよ!!」
「いやいやいや、意味不明だし。てか誰!? どこから!? なんか柚子の香りしない!?」
「あなたを呼んだ者よ。ポンヌ。ポン酢の女神」
「えっ、ポン酢の神様!? マジで!? ポン酢って祀られてたの!?」
「少なくとも、ユノカラ大陸では崇拝の対象よ。特に、火を通した料理との相性は神格的評価なの」
「なにその理屈……ポン酢界隈ってどうなってんの……」
「あなたは“味の加護”を受けた存在。“五滴の神酢”を集め、この世界に味の均衡を取り戻す使命があるの」
「ふ〜ん……ところで元の世界に帰れるの?」
「それは、五滴をすべて集めたら、かもしれない」
「マジかよ……俺、印税生活するはずだったのに……」
「ポン酢で異世界救う話を書いたんでしょ?」
「いや……まぁ、そうだけど……。あれ、ギャグだったんだけどなぁ……」
ポンヌ「だし男……あなたが記したその物語、いまやこの世界の“神話”として語り継がれているのよ」
だ「…………へ?」
ポ「神殿では“始まりの献立”として崇められ、祭では朗読劇、子どもたちは“だしの祈り”を暗唱してるの。
全部、あなたの文章が元になって」
だ「え、待って、え、あれノリで書いた“異世界ポン酢戦記〜運命のしゃぶしゃぶ〜”だぞ?!」
ポ「ええ。それが今や、“創酢神話”の第一章として神殿に奉納されてるわ」
だ「いやいやいや! 黒歴史が宗教に昇華されてんの!? 俺、完全に“中二ポエムが教典になっちゃった人”じゃん!」
ポ「ツッコむところそこなの!?」
だ「……あ、ところでポン酢の加護ってなに?」
ポ「いや反応おっそ!まあいいわ、だし男。あなたに与えたのよ――ポン酢の加護を!」
だ「なんかそれ、ありがたいような、酸っぱそうなような……」
ポ「バカにしないで!ポン酢の加護はね、ただの酸味じゃないの!“酸”という漢字には、“サンキュー”の“サン”が入ってるのよ!」
だ「いや強引だな!?」
ポ「この加護を得た者は、“さっぱりとした勝利”“爽やかな人間関係”“何にでも合う万能感”を手にするの!まさに、異世界の味変革命!」
だ「“味変革命”って何だよ……国ひとつ潰れそうな勢いなんだけど」
ポ「いい?例えば“酸味斬”は、敵の防御を“さっぱり”貫通する必殺技よ。相手はびっくりして『うわ、今の攻撃…さわやか…!』ってなるわ!」
だ「ダメージ食らいながら感想がカルピス!?」
ポ「さらに“香気の結界”を使えば、あら不思議。毒も瘴気も“ゆずの香り”で浄化よ!敵が『ん?なんか今、空気うまくね?』って深呼吸しちゃうの!」
だ「戦闘中にアロマテラピー始まるのやめろ」
ポ「そして最後の奥義―“ポン酢フラッシュ”。
料理にひと垂らしするだけで、どんなボス料理も一発で“ミシュラン星付きクラス”に昇格!神々も泣いて喜ぶ究極の一滴よ!」
だ「戦いでも料理でも泣かされる世界なの!?」
ポ「だし男……あなたはこれから、酸味の伝道者としてこの世界をさっぱりさせるのよ。さあ言って!レッツ☆ポン活ー!!」
だ「ポン活って何ーーーっ!?」
こうして意味不明展開に頭を悩ませつつも俺はこの世界を冒険する事にしてみた。
女神であるポンヌと、ポン酢の神話をなぞり、五滴の神酢を探す冒険へ。
できることなら帰りたい。
でも――後で知ったんだけどこの世界のポン酢、めちゃくちゃうまいんだよな。 つづく
☆次回第2話予告
「その城壁、まさかの柚子皮!?」
異世界に現れたのは、巨大な“発酵柚子の皮”でできた防壁――その名もユズレ村。
そこに眠るは、伝説の第一神酢。だし男、いま最も酸っぱい運命に踏み込む!乞うご期待!
ここまで読んでいただきありがとうございます!
これが……私の魂のポン活(ポン酢活動)第一歩です。
「なんで異世界でポン酢!?」と言われそうですが、書いてる本人もずっとツッコんでます。
でも、本気で書いているからこそ、笑えて、ちょっと切なくて、読んだあとに「なんかポン酢使いたくなったな」って思ってもらえたら本望です。
次回はさっそく伝説の“柚子防壁”が登場!
敵も香る、村も酸っぱい、だし男の旅は始まったばかり!
感想・ご意見・「ポン酢派?ゴマだれ派?」など、なんでもお待ちしてます!