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公女様の婿選び

 ここはタナトス大陸を横断する、大山脈の北側にある大国エル・ヴァサロ

 ――――のさらに北の森林地帯の領土を保有するドレーヌ公の領地。


 冬の寒さは半端ない。

 広大な針葉樹の森が、北の海から来る風を防いでくれていた。


 アイリッサが生まれたのは、こんな土地だった。

 父と母は、出会ってすぐに恋に落ちたらしい。

 周囲の反対を押し切って、父は母をドレーヌに連れ帰った。

 その代わりに、望まぬ結婚もしたのだ。


 だから、アイリッサには半年違いの異母妹がいた。

 義母はともかく、この異母妹とは仲が良かった。


 周囲の事情が分かる頃には、妹の方からは話しかけて来なくなった。

 アイリッサは気にしない。

 これまでと同じだった。


 15歳の時に、王都に住む王家に近い侯爵家の姫とアイリッサのどちらかに未来の王妃にという話が持ち上がった。


 父の正室のイルージア夫人など、悔しがるだろうとの、大方の物は思っていた。

 が、イルージア夫人は広大な領土の方が目当てだったらしい。


 アイリッサが、王都に出向く際には、わざわざドレスをあつらえて来てくれたくらいだった。


「何でしたら、もう帰って来なくても結構ですわ」


 歪んだ笑顔で言われたが、


「悪いな。お父様とおばあ様が恋しがるから、帰って来なくちゃならない」


「他所者女の子のくせに!!」


「お父様に愛されてないからって、私に当たらないでくれ」


 アイリッサが言うと、イルージア夫人はますます顔を歪めた。



 比較的気候が温和だという王都には行く前に結果ができてしまった。

 裏から、ドレーヌ公が手を回したこともあったが、アイリッサの見た目がどう見ても10歳くらいだったために、18歳の王子の相手にはならないと、あっさり断られてしまったのだ。

 流石に一度も会わずに断られるのはショックだったが、アイリッサはめげてはいなかった。


 アイリッサには、心の中の恋人がいたのである。


 公爵の館の近くに冬でも凍らぬ泉がある。

 その泉の近くの小屋に流れ者の、老婆が住み始めたのは5年前だ。エライザ婆が、アイリッサの不思議な力を引き出してくれた。


 アイリッサが泉を覗くと、いつも違った世界が見えた。それは、近い未来の事もあったし、分からないこともあった。


 その中で、いつも怒ってるようなカッコイイ青年がいた。かなりの頻度で、現れていた。


 アイリッサはもう、勝手に運命の相手と決め込んでいた。



 山脈の南西域で、1人の青年が盛大なくしゃみをした。



(完)







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