第77話 絶対零度
ジーニアは危なげなく五体のシルバーゴーレムを斬り裂いてみせた。
アオイの方も非常に危なかっしかったが、俺の回復魔法によるサポートもあって、五体のシルバーゴーレムを拳で破壊してみせた。
残るゴーレムは八体であり、戦闘だけを見ていたらこのまま二人だけで倒せそうな気もしたのだが……。
ジーニアは魔力切れ。アオイはスキルの連発で体力切れを起こしており、これ以上の戦闘は不可能な状態となっている。
「二人共、ここまでよく戦ったな」
「グレアムさん、後はよろしくお願いします!」
「はぁー、はぁー。後はよろしく。戦いっぷりを休みながら見てる」
二人の肩を叩いて労ってから、俺は歩いて奥にいるゴーレムの下を目指して歩いていく。
俺がここまででやったことと言えば、抜け穴探しとジーニアへの回復魔法だけ。
俺が言い出した善行なのに、今回はまだ何もしていないに等しいからな。
肩を回しながら気合いを入れつつ、奥で鉱石を貪り食っているゴーレムのも下までやってきた。
手前にいた十体のゴーレムが戦っている時も、素知らぬフリをして微動だにしていなかったゴーレム達。
無機質だから仲間意識というもの自体がないのか、誰も助けに動くようなことはしなかったな。
視認できる距離まで近づいた俺に対しても完全スルーを決め込んでいるため、刀を抜いてちらつかせてみると……さっきのシルバーゴーレムと同じように一斉にこちらを向いた。
手前で銀鉱石を食っているのがシルバーゴーレムで、一番奥で金鉱石を食っているのがゴールドゴーレム。
ゴールドゴーレムは核の部分に紋章のようなものが描かれており、四足歩行で体もどこか獣っぽさを感じるフォルム。
機械的な動きをしているシルバーゴーレムとは違い、動きも滑らかなため別種の魔物にしか見えないな。
「まずはシルバーゴーレムから倒すとしようか」
俺は小さくそう呟いてから、左手を正面に向ける。
重力魔法でもいいのだが、シルバーゴーレムは違う魔法で倒すとしよう。
「【絶対零度】」
【絶対零度】は水属性と風属性の複合魔法である氷属性魔法であり、広範囲を一気に凍らせることのできる魔法。
ジーニア達がいるため後方に魔法がいかないように注意しつつ、洞窟内の地面に沿うようにシルヴァーゴーレムを一気に凍らせる。
この状態にして動きを止め、シルヴァーゴーレムにトドメを刺そうと思っていたのだが、どうやら核まで凍り付いたようで死んでしまっているようだ。
魔法の加減が本当に難しく、重力魔法の時もそうだったが戦闘に入る前に片付けてしまう。
凍らせてしまうと素材の質も落ちそうだし、ゴールドゴーレムには氷属性の魔法は使ってはいけないな。
凍り付いたシルバーゴーレムには目も暮れず、四足歩行の状態で突っ込んできたゴールドゴーレム。
生物なら確実に逃げられている場面だったため、いくら獣っぽい動きをしていようが無機物のゴーレムであることが行動から分かる。
そんなことを思考しつつ、ギリギリまで引き付けた俺は次なる魔法を発動。
「【重力魔法・増】」
【重力魔法・減】とは反対に、対象者の重力をかける魔法。
【重力魔法・衝撃】と似てはいるが、【重力魔法・増】は調整がしやすく、あくまで動きを止めることに特化させた魔法。
軽快な動きをしていたゴールドゴーレムも動きが一気に鈍り、様子を見ながら重力をかけていく。
潰したら意味がなくなってしまうため慎重に負荷を強くさせ、完全に動けなくなったのを確認してから、俺は重力に必死に耐えているゴールドゴーレムに近づく。
そして、無防備となっているゴールドゴーレムの核目掛け、刀で綺麗に抜き取ってみせた。
魔力核を抜き取ると同時に魔法を解除。
生命を維持できなくなり崩れ落ちたが、ゴールドゴーレムの外殻部分も綺麗に残っている。
高く売れるように倒し方にもこだわったため、今にも動きそうな状態で仕留めることができた。
実際に抜き取った核をまた埋め込めば動き出すと思うし、これは売り値にも期待できる。
一人ニヤニヤにしつつ、シルバーゴーレムを凍らせていた魔法も解除。
解除してもなお凍り付いたままだが……このシルバーゴーレムはこのままでいいだろう。
どちらにせよ持ち帰ることはできないし、このまま凍らせておいて気が向いた時にまた取りにくればいい。
ここからの最大の問題だが……どうやってこのゴールドゴーレムをビオダスダールまで持ち帰るか。
せっかくだし解体したくないのだが、全長四メートルほどあって持ち運ぶのは流石の俺でも難しい。
仕方がないが、節の部分を斬って持ち運べるように解体するしかないか。
再びくっつけられないかは街に戻ってから試すとして、今はゴールドゴーレムの解体を行う。
ジーニアとアオイを待たせているため、俺は刀で素早くゴールドゴーレムを持ち運びできる大きさに解体してから二人の下に戻ったのだった。
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