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辺境の村の英雄、四十二歳にして初めて村を出る  作者: 岡本剛也
第2章

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閑話 ベインの魔法


 ベイン。ベイン!ベイン……!

 グレアム様から頂いた名前を心の中で連呼し、喜びを何度も何度も噛み締める。


 デッドプリーストとしてこの世に生まれて落ちてから、一番嬉しい出来事かもしれない。

 最初は無知な冒険者がやってきたとしか思っていなかったが、私の下僕であったゴーストウィザードを瞬殺されたことで自身の考えを一転。


 すぐに服従の意思を示せたからこそ、グレアム様のお力の一端を授かることができたといっても過言ではない。

 絶対的な死の支配者であり、人間を見下していた自分が人間の下につくことになるとは考えもしていなかったが、グレアム様のお陰で心に根付いていた人間への敵意も薄れているし、良い事尽くめだったと思う。


「デッドプリースト様。シルバーゴーレムの偵察に行っていた部隊が戻ってきました」

「私はもうデッドプリーストではない。グレアム様からベインという名前を授かった。全ての者に私のことはベインと呼ぶように伝えてくれ」

「そ、そうだったのですね。今日からベイン様と呼ばせて頂きます。それでですが、シルバーゴーレムの偵察部隊の件についてはどう致しますか?」

「お前が報告を聞いて、情報をまとめてから私の元に持ってきてくれ。ちょっと今日は色々と疲れていてな。今日は久方ぶりに寝させてもらう」


 アンデッドは睡眠を取る必要がない。しかし、眠ることはできる。

 精神的な疲労を感じた時に眠り、休ませるのだが……今回は初めて肉体的な疲労も感じている。


 名づけて頂いた時から、体の内側から渦を巻くような感覚があり、体も常にギシギリと揺れ動いている。

 感じようによっては体が壊れるような感覚なはずなのだが、これまで感じたことないパワーが満ち溢れていることもあり、本当に何とも言えない感覚。


 とにかく今は体を休ませて、この不思議な感覚が収まるのを待ちたい。

 その一心で業務を全て下僕達に丸投げし、私は眠りについたのだった。




 ――どれくらいの時間眠っただろうか。

 いつもなら長くて三時間ほどの睡眠なのだが、今回は相当な時間眠ったということが体の感覚が違うことから分かる。


 ただそのお陰か、体の内側から渦巻いていた感覚や、体がギシギシと揺れ動いている感覚は消え去っており、生まれ変わったみたいに体がスッキリと軽い。

 ……いや、というか生まれ変わっているのか?


 腐肉で骨も見えているような腕だったはずが、青っぽい色ではあるが綺麗な肉がついているのだ。

 腕だけでなく、体全体に肉がついており、まるで――人間のような体になっている。


 自分の身に何が起こったのか理解できず、とりあえず黒いローブを身に纏ってゴーストウィザードの下に向かった。

 ゴミ溜まりの定位置にはゴーストウィザードが立っており、私の姿を見るなり頭を下げてきた。


「頭を下げなくていい。それよりも聞きたいんだが、私の体はどうなっている?」

「ず、随分とお変わりになられたかと思います。……ベイン様なのですよね?」

「ああ。ベインだが……そんなに変わっているのか」

「姿形も違いますし、何より纏っている魔力が膨大すぎまして……」


 ゴーストウィザードに言われ、私も纏っている魔力の量のおかしさに気が付く。

 とりあえず試してみなければ始まらない――そう考えた私は、空に向けて魔法を放ってみた。


 なんてことのないただの【ファイアーボール】。

 初級魔法であり、魔法を扱おうと思った際に一番最初に使う魔法。


 そのためゴブリンなら一発で倒せる――ぐらいの威力なはずなのだが……私の手から放たれた火球は唸りを上げるように燃え盛り、空を真っ赤に染めてから空中で爆発した。


「………………………………」

「………………………………」


 ゴーストウィザードだけでなく、魔法を放った私自身も口を開けて放心するしかない状態。

 グレアム様から名前を頂く前は、上級魔法でもこんな凶悪な威力ではなかった。


 それが、ただの【ファイアーボール】でこんなことになっているのだから、口を開けて驚くことしかできない。

 こんなことになっているのは、確実にグレアム様から名前を頂いたからだよ……な。


 ネームドの魔物が強くなることは知識として持っていたが、別種の魔物かと思うほど強くなるような極端な例は聞いたことがない。

 寝起きで頭が回っていない中、更に困惑するようなことが起きたせいで頭が痛くなってきた。


「ベ、ベイン様。い、今の魔法は……!」

「わ、私にも分からない。【ファイアーボール】を使っただけだと思うんだが……」

「【ファイアーボール】!? あ、ありえませんよ! 私が今から使いますから! ――【ファイアーボール】」


 私の言葉を信じられない様子のゴーストウィザードが、私と同じように空に向かって【ファイアーボール】を放った。

 同じような軌道を描いて空に放たれたのだが、まず大きさからして違う。


 拳大の小さな火の玉が空を浮遊し、一定の距離まで飛んだあとにフッと息を吹きかけられたかのように消えた。

 私の【ファイアーボール】と見比べると、あまりにもみすぼらしい【ファイアーボール】。


 先ほどの業火球を見ているからか、ゴーストウィザードも心なしか恥ずかしそうにしている。

 ……ただ、私の知っている【ファイアーボール】はゴーストウィザードが放ったものであり、名付けてもらう前の私もあの【ファイアーボール】しか使えなかった。


「は、恥ずかしいですが……こ、これが【ファイアーボール】ですよ!」

「確かに、見覚えもあるのはそっちの【ファイアーボール】だな。……もしかしたら何かの間違いかもしれない。もう一度使ってみよう」


 私はもう一度空に手のひらを向け、【ファイアーボール】を唱えたのだが、やはり放たれたのは巨大な業火球。

 唸るように空を舞い上がり、空高く上がった後に爆発した。


「…………ベ、ベイン様は、す、凄まじい力を手に入れたのですね。もしかして魔王に匹敵する力を手に入れたのではないでしょうか?」

「流石に魔王はないと思うが……四天王と呼ばれる魔物に匹敵する力は得られたかもしれない」

「そんな力を授けた、ぐ、グレアム様って一体何者なのですか?」

「あの御方を私なんかが測れる訳ないだろう。……と、とにかくグレアム様には絶対服従だ。失礼のないように、下の者に徹底的に指導しておいてくれ」

「わ、分かりました。絶対に失礼のないよう、私が徹底的に指導しておきます」

「よろしく頼む。私はまとめてもらった報告を聞いた後、今の力がどうなっているのかの検証を行う」

「はい。細かな作業は私にお任せください」


 ゴーストウィザードにそう言い残し、私は一度報告を受けるために奥に向かった。

 正直、今報告を受けても頭に入る気がしないのだが……旧廃道の長としてのやるべき最低限のことはやる。


 それにしても、グレアム様は本当に凄まじい御方だ。

 この身が朽ち果てようとも忠誠を誓うと心の中で決め、私は早く今の力を試したい気持ちを押し殺してから、上がってきた報告を聞きに向かったのだった。



ここまで読んでいただき本当にありがとうございます!!

『ブックマーク』と、広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけますと嬉しいです<(_ _)>ペコ

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