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第53話 力の譲渡


 頭で理解ができず、久しぶりにパニックになっている。

 ベインが何かしているようでもないし、これは一体どうなっているんだ?


「ちょ、ちょっと待て。一体どうなっている?」

「魔物にとっての名前というのは、力を分け与える意味も持つのです! ですので、グレアム様の力が私に流れているって感じですね!」

「聞いてねぇぞ。魔力の放出が止まらない……!」


 どんどんとベインに流れていく魔力を――俺は無理やり塞き止めることでどうにかして防いだ。

 このままでは全ての魔力を持っていかれかねなかったが、長年培ってきた魔力操作で何とか止めることができた。


「はぁー、はぁー。本当に焦った」

「グレアムさん、大丈夫ですか!?」

「あ、ああ。何とか止めることができたが……おい、ベイン。なんで説明しなかった」

「すみません。私も話を聞いていただけで初めてのことでして……。ただ、生まれ変わったみたいに体から力が漲っております。グレアム様、本当にありがとうございます!」

「…………悪気がなかったのならもういい」

「ありがとうございます!」


 アンデットとは思えないほど、キラキラと輝いていて肌艶も良くなったように見えるほど。

 軽い気持ちで名付けてしまったが、まさか魔物に名前を与えるとこんなことになるとは思っていなかった。


 そもそも魔物と交流すること自体普通はあり得ないことだし、知られていないのが当たり前か。

 アオイが止めてくれたのを素直に聞くべきだったが、ベインは喜んでいるようだしまぁいいか。


「とりあえず俺達はもう行く。バーサークベアとシルバーゴーレムは倒すからな。あと、魔王軍の者とやらには気を付けてくれ。ベインに近づく可能性は十分にあるからな」

「はい! 必ず追い返します! どうかグレアム様もお気をつけてください」


 俺の魔力を奪い、元気モリモリになっているベインに見送られ、俺達は旧廃道を後にした。

 魔力は寝れば回復するからいいのだが、今後は絶対に気を付けないといけない。


 とりあえず名づけについては置いておいて、明日以降のことを考えるとしよう。

 とりあえず明日は普通に依頼をこなし、明後日からバーサークベアの討伐のためにヘストフォレストに向かう。


 戻ったらギルド長に報告をし、俺達も色々と準備をしなくてはいけないな。

 怒涛の展開にのんびりとした生活が一変した感じはあるが、これはこれで楽しいからいいだろう。

 ジーニアとアオイもついてきてくれるみたいだし、二人の経験の場にもなったら嬉しい。



 翌日。

 バーサークベアの討伐を明日に控えているが、今日は普通に依頼を受ける予定。

 三人で冒険者ギルドへと向かい、受付嬢さんに依頼を見繕ってもらう。


「グレアムさん、いらっしゃいませ! 今日も依頼を受けに来たんですか?」

「ああ。何か良い依頼はきていないか?」

「採取依頼なら面白そうなものがありますよ! 南東の森でスイートビーが大量発生しているみたいでして、そのお陰で“麗しの蜜”が取れるらしいんです!」

「へー。その麗しの蜜とやらの採取依頼があるのか?」

「はい! 報酬も高くて、余分に採取できた時の恩恵も大きい! 南東の森ですし、安心して向かうことができます」

「そういうことなら、麗しの蜜の採取依頼を受けさせてもらおうか。ジーニアも大丈夫だよな?」

「はい! もちろん大丈夫ですよ」

「分かりました。それでは受注手続きをさせて頂きますね!」


 南東の森といえば、グレイトレモンを採取した森。

 ジーニアの相手にならない魔物しかいないため、今回の依頼は半分遊びのような感じになってしまうだろう。


 ただ、明日が本番のような感じがあるし、今日はこんな感じの依頼で良かったと思う。

 受注手続きをしてくれた受付嬢さんにお礼を伝えてから、俺達は冒険者ギルドを後にして南東の森へと向かった。



 軽く雑談しながら歩を進めること約一時間。

 あっという間に南東の森に辿り着いた。

 軽く索敵を行っているが、やはり強い気配は一切感じないな。


「なんというか……普通に楽しくて気が抜けてしまいそうです!」

「明日はバーサークベアと戦うんだよね!? こんな森で採取依頼なんか受けていていいのか心配になっちゃうんだけど!」

「いつも通りで大丈夫だ。準備は昨日の内に済ませてあるし、今日は普通に依頼をこなそう。今日のせいで気が抜け、明日二人が駄目だったとしても、俺が何とかするから安心してほしい」

「うぅ……グレアムさんなら、本当に一人でどうにかできちゃいますもんね」

「頼もしくも聞こえるし、悔しくも聞こえる!」


 変な心配をしている二人と談笑しながら、南東の森の中を進んで行く。

 久しぶりに来たけど、危険のない森というのは素晴らしいな。

 かなりの声量で談笑しているのだが、魔物が襲ってくる気配すらない。


「それにしても麗しの蜜ってどこにあるんですかね? アオイちゃんは何か知っていますか?」

「さあ? 採取依頼なんて受けたことがなかったし、その手の情報は何にも持ってない! でも、スイートビーって魔物が大量発生している影響って言っていたし、その魔物を探せば見つかるんじゃない?」

「確かにその可能性が高いだろうな。蜂みたいな魔物って言っていたし、見ればすぐに分かると思うんだが……もう少し奥にいかないといないか?」

「グレイトレモンが生えていた辺りにいそうじゃないですか? 花を咲かせていましたし、蜂なら花に寄ってきますよね?」

「なら、グレイトレモンが生えていたところまでひとまず行ってみるか」


 アオイの情報を元にジーニアが助言をくれ、その助言を頼りにグレイトレモンが生っていた場所までひとまず向かう。

 一応スイートビーの気配を探ってはいるんだが、気配が弱すぎるのか捉えることができないんだよな。

 まぁ時間はいっぱいある訳だし、ハイキング気分で楽しみながら探せばいいだろう。



ここまで読んでいただき本当にありがとうございます!!

『ブックマーク』と、広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけますと嬉しいです<(_ _)>ペコ

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