第255話 上下関係
力みが取れたグリーは、その後問題なく残りの二体のゴブリンも討伐し、薬草採取も終えて、初めての依頼を終えた。
基本的には俺たちも同行するし、グリーの方は何の問題もない。
前々から気になっているのは、どちらかといえばルーカスの方だ。
元々冒険者だったこともあり、最初から俺の手から離れているからな。
一応、パーティメンバー探しは手伝ったものの、その後のことは順調だということしか聞いていない。
トラウマもあるなか、メンバーもかなり特殊だったし、本当に順調なのかも怪しい。
明日は依頼に向かうと言っていたし、明日はルーカスの依頼についていこうと思う。
ということで、今日は気を取り直して、三人での依頼を行っていこう。
「グリーの依頼、中々良かったね! 初めて依頼を受けたときのことを思い出しちゃった!」
「アオイも最初は緊張したのか?」
「もちろん! まぁ苦戦はしてないけどね! グレアムはどうなの? さすがのグレアムも最初の依頼は緊張した?」
「ん? 最初の依頼はジーニアと一緒だったし、別に緊張はしなかったな」
「えっ!? あれがグレアムさんにとっても最初の依頼だった……? あ、そういえばそうでしたね! 私が初めてのパーティメンバーって話でした!」
当初のことをすっかり忘れていたようで、一人で勝手に驚いているジーニア。
まぁ、冒険者になったのがビオダスダールに来てからというだけで、フーロ村では実質冒険者みたいなことをしていたけどな。
「そういえば、ジーニアとグレアムのランクって同じだもんね! ってことは、グレアムは最初っから強い天才だったってこと!?」
「いや、違うぞ。俺の住んでいた村では冒険者っぽい活動をずっとしていた。腕を失ったことをきっかけに村を出て、ビオダスダールで冒険者という職に改めて就いたってだけだ」
「へー! 私は初めて聞いたかも! ……ってか、グレアムが腕を失うって、改めてどんな化け物と戦ったの!?」
「エンシェントドラゴンという、大きな龍だな。アオイには話したことがなかったか?」
てっきり説明したと思っていたが、ジーニアとギルド長にしか話していなかったかもしれない。
「初めて聞いた! レッドドラゴンの上位互換的なやつ? 想像もつかないんだけど!」
「まぁ、簡単に言ったらそうだな」
上位互換という話では済まないだろうが、別に間違ってはいない。
それからジーニアとアオイにエンシェントドラゴンについて話しつつ、俺たちは依頼をこなしたのだった。
翌日。
無事に依頼を達成して浮かれているグリーを見ながら朝食を済ませ、その後、予定していた通りルーカスの依頼へとついていくことにした。
またジーニアとアオイに依頼を任せることになって悪いが、まぁ二人だけでも問題なく依頼はこなせるはずだ。
ルーカスに案内してもらい、集合場所である広場の噴水前へとやってきた。
「……あれ? 前にいた人だよね。なんで今日は一緒なの?」
「グレアムだ。今日は一緒に依頼についていかせてほしい」
「す、すみません。僕のことが心配みたいで、様子を見に行かせてほしいと頼まれたんです」
「……ふーん。ついてこられるなら別にいいよ。足を引っ張ったら置いていくけど」
「その点は問題ないはずだ。これでもBランク冒険者だからな」
「……なら、問題ないね。依頼を受けにいく」
ドロシーはそう言うと、早足で冒険者ギルドへと向かっていった。
口数の多いタイプではなさそうだったが、移動中はほぼ無言。
ルーカスも居心地が悪そうにしているが、何も発しないため、これが平常運転なのかもしれない。
そういうことなら、俺も何も言わない方がいいのかと思ったが……流石に無言は気まずい。
「ルーカス、いつも何も喋らないのか?」
「そ、そうなんですよ。最初は僕も話しかけていたんですが、空返事しか返ってこないので、話しかけるのも気まずくなってしまったんです」
「そんな状態で依頼はちゃんとこなせているのか?」
「依頼についてはちゃんと話してくれるので問題ないんですが……楽しさはないですね」
そう言って、どこか寂しそうな表情を浮かべたルーカス。
その表情を見れば、前のパーティが和気あいあいとしていたことは聞かなくても分かった。
「……ねぇ、早く」
「あっ、すみません! 今行きます!」
冒険者ギルドの入口でジト目で見ながらそう言ってきたドロシーに対し、ルーカスは平謝りしながら走って向かっていった。
まだ数回しか依頼をこなしていないはずだが、既に序列は決まっているようだな。
同じパーティになったわけだし、対等に扱われるのが理想なんだが……。
ランク差もあるわけだし、性格的にもルーカスが下になってしまう理由はよく分かる。
「……この依頼でいい?」
「はい! その依頼でいいと思います!」
掲示板を見て、特に吟味することなく決めたドロシーに対し、ルーカスも意見を出さずに承諾した。
受注ランクだけを見て決めたように見えたが、もう少し考えた方がいいと思うけどな。
「その依頼でいいのか? 討伐系ならマーブルメイジの方が近い場所で終わるぞ」
「……ん、んー。そっちにする」
俺が指さした依頼と見比べ、マーブルメイジの討伐依頼の方が楽だと判断したのか、一瞬で受ける依頼を変えた。
無口なこともあり、確かに怖い印象は受けるが、別に自己中心的というわけではなさそう。
そうなってくると、受け身で居続けているルーカスに問題があるようにも見えてきた。
しっかりと観察して、できるアドバイスはしていこうか。
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