第251話 お礼
確認をし終えたスペンサーたちと合流してから、俺たちはフリンブルへと戻ってきた。
誤解も完全に解けたようだし、こちらの力も理解してもらえたのは大きい。
一時はどうなるかと思っていたが、結果的にこのタイミングで魔物の軍勢がやってきたのは良かった。
もしかしたら、フリンブルの街にも被害が及んでいたかもしれないしな。
「帰る前に寄ってもらって悪ぃなァ。今回の件、改めて礼をさせてもらう。本当に助かった」
スペンサーから呼び出されたため、ギルド長室へとやってきたのだが、部屋に入るなり頭を下げられた。
既に散々お礼は言われているため、もうお礼の言葉はいらないんだけどな。
「もうお礼はいらないぞ。こちらの提案に協力してくれた恩もあったからな」
「グレアムさんの言う通りだ。協力関係にあるんだから、助けるのは当たり前だ。そもそも他国といえど、危険が迫っていたら助けていたし。……まぁ俺は何もしていないんだが」
「だとしても、今回の一件はいくら礼を言っても感謝を伝えきれねェ。明らかに魔物の質も数も、これまでの数段上だったからなァ」
みんなの反応を見ても、そんな感じはした。
実際に魔物は粒が揃っていたとは思う。
とはいえ、軍を率いる明確なリーダーがいなかったため、今回は楽に殲滅することができたが。
「タイミングは良かったと思う。訪れる日や帰る日がズレていたら、参戦することができていなかったからな」
「魔王軍側も、ここぞというタイミングで攻勢に打って出たのに、あっさりと殲滅されて今頃焦っているんじゃないか?」
「それはどうか分からねぇが、タイミングに救われたのは間違いねェ。グレアム、本当にありがとう」
もう大丈夫だと言ったのに、すぐにまた頭を下げてきたスペンサー。
これ以上は言っても無駄だろうし、俺は反応せずに質問をすることにした。
「それより、魔物がどこから湧いてきたのかは分かったのか?」
「ああ。国境近くに抜け道のような場所が作られていた。今回はそこから進軍していたらしい」
「抜け道? あれだけの魔物がやってきたってことは、相当大きなものだったんじゃないのか?」
「恐らく、大きな抜け道だとは思うぜ。今は入口だけ塞いで、兵士を配備させている状態だから詳しい調査ができてねぇんだ。体制を整えてから、調査が済み次第ドウェインには手紙を送る」
ワープゲートや魔法ではなく、単純に抜け道があったわけか。
実際にこの目で見ていないから分からないが、色々と怪しさも感じてしまっている。
「了解した。スペンサーからの報告を受け次第、グレアムさんには俺から伝えさせてもらう。ということで、今回はもう帰らせてもらうぞ」
「あー、ちょっと待ってくれ。大したものは用意できてねぇんだが、礼の品を準備させてもらった」
帰ろうとした俺とギルド長を呼び止めると、おもむろに後ろに置いてあった大きな袋を出してきた。
何が入っているのかは分からないが、確実にお礼の品を大量に用意してくれたことだけは分かる。
「おい、スペンサー。一体何を用意してくれたんだ?」
「まずは討伐してくれた魔物の素材だ。こちらで剥ぎ取って、価値の高いものをまとめておいた。それから、幻の酒を入れてある。ドウェインの好物だろう?」
「幻の酒ってことは『シュヴァリエ・コンテ』か!?」
「そんなに有名なお酒なのか?」
「ああ! 一本で家が建つと言われているくらい珍しくて高価な酒だ!」
ギルド長が珍しく興奮している。
俺が力を見せたとき以外は冷静でいることの方が多いため、余程珍しい酒なんだろう。
「グレアムには救ってもらったからなァ。『シュヴァリエ・コンテ』は礼だ。他にも、価値のありそうなものを詰めておいたぜ。街に戻ってから確認してみてくれや」
「ありがとう。遠慮なく頂かせてもらう」
「あー、それと。うちの兵士長がビオダスダールに行くと言っていた。近々訪れるだろうが、歓迎してやってくれたらありがてェ」
「あの話の分かる兵士か。もちろん歓迎させてもらう。幻の酒までもらったら、断れないしな」
ギルド長は幻の酒を抱いており、離す気がないように見える。
酒はあまり飲まないが、ここまで目の色を変えているとなると気になってくるな。
「それじゃ今後は協力していこうぜ。グレアムも何かあったときはまた助けてくれ」
「もちろん。要請してくれれば助けに来る」
「そりゃ心強い」
俺はスペンサーと握手を交わしてから、用意してもらった袋を持ち、今度こそギルド長室を後にした。
思いのほか大きな騒動に巻き込まれたものの、怪我人すら出さずに解決できたのは良かった。
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