第247話 感じる気配
買い出しを終え、ギルド長室へと戻ってきた。
この間に冒険者が集められているのかと思っていたが、冒険者ギルド内はさほど変わりない。
「おお、戻ってきたかァ。もういつでも出発できるのか?」
「こっちはいつでも出発できるぞ。冒険者の方はどうなんだ? 人数は集まりそうなのか?」
「既にある程度は集まっているし、兵士も含めて、情報を持ち帰った冒険者主導で、もう魔物の元へ向かってもらっているぜ」
「もう向かっているのか? 随分と行動が早いな」
ギルド長の発言に思わず頷いてしまうほど、俺も動きの早さに驚いている。
冒険者ギルドが変わりなかったのは、既に動いた後だったからか。
「自慢じゃねぇが、魔物に攻められるのは慣れているからなァ。兵士も対魔物特化だし、もしかしたらグレアムの力を必要としないかもしれない。準備してもらったのに、そうなったら申し訳ねぇな」
「いや、俺が戦わずに済むならそれがベストだ。ただ、何があるか分からない。俺たちもすぐに向かおう」
「まぁそうだな。馬には乗れるか? とびきり速い馬を用意してある」
「いや、俺は馬じゃなくて大丈夫だ」
俺のその発言に、怪訝そうな表情で首を傾げたスペンサー。
どうせ二人とは足並みを揃えるし、馬に乗るほうが無難なのだろうが、片腕だと御すのが難しいし、馬にも負担をかけてしまう。
なら、俺が走ったほうがいい。何かトラブルがあったときにも対処しやすい。
魔物の軍団が魔王軍だった場合、何が起こってもおかしくない。
「グレアムさんのことは、グレアムさんに任せて大丈夫だ」
「意味が分からんが、ドウェインがそう言うならいいかァ。それじゃ向かおうぜ」
会話も程々に切り上げ、俺たちも魔物の軍団の元へと向かうことにした。
ギルド長とスペンサーは馬に乗り、俺は走りでの移動となる。
「おいおい! この馬たちと同じ速度で走れるのかよ!」
「だから言ってるだろ。グレアムさんは普通じゃないんだ。何なら、俺たちに合わせて速度を抑えてくれているくらいだからな」
「本当かよ! 化け物じゃねぇかァ。……ドウェインが敬称で呼ぶ理由の一端が、早くも垣間見えたぜ」
二人はそんな会話をしているが、俺は既に意識をこの先にいる魔物の群れへと集中させている。
敵を把握していないから悠長なことを話しているが、予想していた以上にまずいかもしれない。
つい数時間前までは何も感じなかった場所から、確かに魔物の気配を感じ取れる。
更に、数体はなかなか強い気配であり、魔王軍の可能性が一気に出てきた。
どこから現れたのかが一番気になるが、まずは無事にこの場を切り抜けることが最優先。
フリンブルから送られた冒険者や兵士の強さを把握しているわけではないが、Sランク級の人間がいなければ、死者が出てもおかしくない。
現れた場所や方法の特定ができていない以上、更なる増援が来ることも考えられる。
ここは俺一人でも先に向かったほうが良さそうだ。
状況からそう判断した俺は、ギルド長とスペンサーを置いて、先に魔物の軍団の元へと急ぐことに決めた。
「ギルド長、スペンサー。思っていた以上に強敵の匂いがする。俺は先に向かう。二人もなるべく早く駆けつけてくれ」
「先に向かう? そんなに強い魔物の気配を感じているのか?」
「グレアムさんがそう言うってことは、余程の魔物ってことか! 任せてしまって本当に申し訳ないが、先に向かって対処してもらえたら助かる」
「魔物の脅威というより、被害を出さないためって意味のほうが強い。それじゃ先に向かわせてもらう」
俺は手短にギルド長とスペンサーへ状況を伝え、全速力で先へと急いだ。
まだ交戦している様子はないから大丈夫だと思うが、いつ戦いが始まってもおかしくない。
他の場所にも警戒しつつ、とにかく足を動かす。
そして、二人と別れてから約三十分。
全力で走ってきたこともあり、前を進む冒険者と兵士の姿が見えてきた。
スペンサーが自信を持っていたのも納得できる。
それなりの実力者が集まってはいるようだが……パッと見のレベル的には数人がAランク級で、残りはBランク級といったところ。
平均値は高いが、この戦力では蹴散らされかねない。
「ちょっと止まってくれ。この先に魔物の軍団がいる」
楽観的な空気はなく、気は引き締まっているようではあるものの、雰囲気は置いてきたギルド長とスペンサーに似ている。
自分たちが負ける想定は頭になく、最低でも互角の勝負はできると思っている様子だ。
「ん? お前は誰だ?」
「俺は……スペンサーギルド長から今回の戦いを一任された者だ。この先にいる魔物の軍団は強敵だから、ここからは俺が先導して戦う」
「その話は本当か? 確かに助っ人を呼んでいるとは言っていたが……」
冒険者のリーダーらしき人物と、兵士のリーダーらしき人物の二人は、俺の全身をくまなく観察している。
隻腕、おっさん、覇気もなし。
俺から強さを感じられなかったのだろう。二人は疑いの眼差しを向けてきた。
実際、一任まではされていないし、疑われるのは仕方がない。
とはいえ、無駄な死者を出さないためには、先んじて俺が強い魔物を倒しておかないといけない。
「嘘じゃない。疑うなら……そうだな。この先にいる魔物のどれかを指定してくれれば、一瞬で倒してみせる」
「分かりにくいだろ。単純に俺と手合わせすれば話は早くないか?」
「これから魔物の軍団と戦うのに、味方同士で戦うというのか? どうしてもというならそれでも構わないが、戦力はなるべく減らしたくない」
手加減をしたら、俺の本当の実力を見せられない。
本当の実力を見せたら、怪我を負わせてしまう可能性がある。
これから戦いがあるというのに、そんな馬鹿げたことはしたくない。
ただ、死者が出るよりは怪我人が一人出るほうがマシだし、力で分からせたほうが早いのも事実。
「凄い自信だな。俺は数多の魔物の軍勢と――」
「バルキュラ、やめとけ。その方の言う通りだ。味方で争う必要はないし、要は一番先に戦いたいってことだろう? こちらとしてのデメリットが何もない」
一触即発の中、そう口を挟んでくれたのは、兵士の装備を身に着けた方の人物。
懐疑的な目を向けつつも、丸く収めてくれたのは非常にありがたい。
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