第25話 旧廃道
「なんだか凄いところまで来ちゃいましたね……!」
「この道の先に例の魔物がいるな。ジーニアは体力の方はどうだ?」
「進むにつれて魔物が強くなってきましたので、正直限界が近いかもしれません。でも、その魔物を見たいです!」
「なら、ここからは俺が倒して魔物だけ見に行くか?」
「はい! 見に行きましょう! どんな魔物なんですかね?」
「アンデッド系の魔物ではありそうだが、実際に見て見ないと分からないな」
旧廃道にいる魔物は襲うことがないだろうし、ここから先は完全に無駄でしかないが……ジーニアが見たがっているし向かうか。
それに俺もどんな魔物なのか少しは気になるしな。
ジーニアと代わって俺が前に出て、ここからはいつものように斬撃を飛ばして魔物を狩っていく。
旧廃道に入ってから現れた魔物は、影の騎士、ゴーストファイター、デッドナイト、亡霊貴族と、廃道に出現していた魔物からはワンランク強くなった魔物が出てきた。
この程度の魔物なら、問題なく斬撃を飛ばしていれば簡単に狩ることができるが、ジーニアが相手するには少し大変な相手だったため俺に代わって良かったと思う。
そんなことを考えつつ、進むにつれて増えていくアンデッドを次々に斬り飛ばしていく。
前衛を俺に代わってからは移動速度が格段に上がり、あっという間に旧廃道で感じていた魔物の下まで辿り着くことができた。
魔物自体も大したことがなかったし、ここを根城にしている魔物の気配もそう大したことはないから、サクッと倒してビオダスダールに戻るとしよう。
「な、なんか……急に背筋が寒くなってきましたっ! グレアムさん、近くに何かいますよ!」
「ああ。俺がずっと感知していた魔物がもう近い。あのゴミ溜まりの中心にいるな」
旧廃道を進んだ先は開けて場所となっており、そこにあったのは長年不法投棄され続けたであろうゴミ溜まり。
最近は流石に近づくものすらいないからか、捨てられているゴミは全て古いものなのが分かる。
そんなゴミ溜まりのど真ん中にいるのが、今回追っていた魔物。
今は姿が見えないが、見えないだけで存在していることは気配と漏れ出ている魔力で分かる。
「中心って、今見えているところですか? 私には何も見えないんですが……」
「姿を消しているだけだな。多分、光を屈折させて見えないようにしているだけの低級魔法を使ってる」
「透明になれる魔法なんて聞いたこともないんですけど、低級魔法でそんな芸当ができるんですか!?」
「俺もやろうと思えばできるぞ。無駄だからやらないが」
魔法で姿を消すというのがそもそも無駄でしかない行為。
気配を消さなければ、廃道に入った瞬間から俺に存在を気づかれているのが意味のない証拠であり、仮に気配を消していたとしても魔法を使ったら魔力で簡単に位置が割れる。
その点、ゴブリンの別種であるブラックキャップは厄介極まりなかった。
スキルで姿を見え難くすることができる上に、隠密行動がズバ抜けていたからな。
意外と苦戦させられたブラックキャップを懐かしみながら、俺は隠れたつもりでいる魔物に忠告する。
「姿を隠しているつもりのようだが、全くもって意味のない行為だぞ。……まぁ言葉が分からない相手に言っても仕方がないだろうが」
何気なく魔物相手に話しかけた俺は、刀を抜いて戦闘態勢を取る。
どうせなら姿が見たかったのだが……隠れたままなら隠れたままで別に構わない。
そう割り切り、斬りかかろうとしたその瞬間――。
ゴミ溜まりの中心から声が聞こえてきた。
「ほっほっほ、ハッタリではなく本当に私の姿が見えていたのですね」
そんな声と共に姿を現したのは、質の高い黒いローブや高価そうなアクセサリーを身に纏った魔物——デッドプリースト。
姿は先ほど討伐したコープスシャウトやリビングデッドと酷似しているが、デッドプリーストの最大の特徴は魔法使いのような装備を身に着けており、実際に魔法を扱うことができる。
「ぐ、グレアムさん! この魔物、言葉を話しましたよ!」
「言葉を話せる魔物ってことは、意外にも上位種の魔物なのか」
魔王軍の中にも、時折人間の言葉を話せる魔物がいた。
率いている隊の長は大抵喋ることができたし、知能が高い魔物は言葉を話せる魔物自体に驚きはないが、この程度の気配の魔物が喋るとは思っていなかったな。
「私をご存じではありませんでしたか。まぁ知っていたらわざわざ近づいては来ませんもんね。私はデッドプリーストという種族の魔物で、アンデッド族の最上位種です。そして――この辺りを一帯を取り仕切らせて頂いております」
「俺の知識とはズレがあるな。デッドプリーストごときがアンデッド族の上位種だったって覚えはない」
「ほっほっほ、強がりもここまで来たら面白いですね。剣で攻撃をしようとしていながら、私を“知っている”というのは無理がありますよ。これは私が出る必要もなさそうですね」
デッドプリーストなんて、先陣を切って攻撃を仕掛けてきたアンデッド軍の一体でしかなかった。
その程度の魔物が、なぜここまで上から来れるのか不思議で仕方ないが……まぁすぐに殺すしいいだろう。
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