第226話 試行錯誤
【バッテンベルク】に代わり、俺たちが前へ出てダンジョン攻略を行っていく。
魔物の強さ的にも、ジーニアとアオイだけで余裕で戦えている。
一階層ごとに休むこともできるし、フロアボスまでは余裕だな。
そんなことを思いながら、俺は後方から二人のサポートを行い、あっという間に四十三階層へとたどり着いた。
「グレアムさんは何もしていないのに、安定感が凄まじいな。王都の交流戦ではグレアムさんしか戦っていなかったし、ワンマンパーティかと思っていた」
「グレアムのワンマンパーティなのは間違ってないけどね! 私たちもそれなりに戦えるってだけで!」
「グレアムさんの本気と戦うとなったら、私たちが50人ずついても勝てませんから」
そんな言葉に、デュークは驚愕の表情を浮かべている。
流石にジーニア50人+アオイ50人、計100人なら負ける可能性もあると思うけどな。
「俺の話はやめよう。それよりも、ソニアとゾーラは何か掴めたか?」
「はい。アオイ様の戦い方が分かりやすかったです。攻撃を誘ったり、攻撃が来る位置を予測して力を利用するんですよね?」
「ああ、その認識で合っている。流石に理解が早いな」
「理解しても難しいんだけどね! 私なんか最初は攻撃を受けまくったもん!」
「最初は難しいが、感覚を掴めばできるようになる。完璧に攻撃が決まった時の感覚は気持ちがいいからな」
完璧に噛み合った時は、剣に力を感じない感覚がある。
最初の頃は、俺もこの感覚だけを求めて敵と戦いまくっていたことを思い出す。
「なるほど。……まずは試してみないと始まりませんね」
「ああ、試すのが手っ取り早いと思う。魔物は練習相手として最適だからな」
最初はもう少し弱い魔物と戦うほうがいいと思うが、まぁダンジョン内であれば問題ないだろう。
ということで、座学はほどほどに実戦形式で試すことになった。
「今回は俺が後方からサポートする。ソニアとゾーラは存分に試してくれ」
「デューク様、ありがとうございます」
「遠慮なく試させて頂きます」
二人が前へと出ると、これまでの戦い方とは一変し、各々魔物と向き合った。
タイミングを計りながら、カウンターの練習に取り組んでいるが……そう簡単に上手くはいかない。
ソニアは恐怖心からか、敵を引きつける前に攻撃をしてしまい、逆にゾーラは引きつけすぎて被弾してしまっている。
敵の動きがそれなりに速いこともあり、苦戦を強いられているようだ。
練習中だから仕方がないとはいえ、ソニアとゾーラが先ほどまでとは打って変わってボロボロなのに対し、デュークは完璧に二人をサポートしている。
やはりスペックが高く、サポート役もそつなくこなせるようだ。
「はぁー、はぁー……。デューク様、申し訳ございません。あまりに不甲斐なかったです」
「グレアム様も回復魔法でのサポート、ありがとうございました。……できると思ったのですが、結局一度も成功しませんでした」
ソニアとゾーラは先ほど以上に落ち込んでおり、そんな二人を見て、アオイはにんまりとしている。
アオイも最初は苦戦しまくっていたからな。
ジーニアが軽々とこなす中、アオイはできずにいたから、自分と同じく苦戦しているのが嬉しいんだと思う。
決して性格が良いとは言えないが、まぁ気持ちは分かってしまう。
「慣れるまでは難しいからな。練習と研究あるのみだ。次はまた俺たちが戦うから、自分たちが行って苦戦したところを重点的に見てくれ」
「まぁ手本を見せてあげるからさ! よーく見て、学ぶんだよ!」
「アオイさん、よろしくお願いします」
弟子ができたみたいで、鼻が高くなっているアオイ。
にんまりしたり、鼻を高くしたりと、この状況を楽しんでいるな。
一方でジーニアはあまり楽しそうではなく、淡々と魔物を倒す機械のようになっている。
全く参考にならないということに、若干拗ねているように見えるが、事実なのでこればかりは仕方がない。
四十四階層の攻略では、ノリに乗っているアオイが大活躍。
割とムラのないタイプだが、ノッている時はとことん動きが良くなる。
そんなアオイに対し、ジーニアは淡々と魔物を倒しており、安定感がさらに増した。
今日は俺の出番はないまま、攻略が終わりそうだな。
「アオイさん。分かりやすく戦って頂き、ありがとうございます」
「タイミングが分かりやすかったです」
「二人に見やすいように戦ったんだけど、見やすかったなら良かった!」
「先ほど躓いていた部分が分かりましたので、すぐに試したいですね」
「試したほうがいいよ! 練習あるのみだから!」
ソニアとゾーラは目を輝かせており、これまで淡々と攻略をこなしていた印象だったが、やけに楽しそうにしている。
二人の熱量もあって、休憩も入れずにすぐに攻略を再開し、実戦と見学を繰り返している内に、あっという間に五十階層に到着。
結局、モノにできるまでは至らなかったが、形にはなっていたし習得はできると思う。
フロアボスはジーニアがあっさりと倒し、少し早いが切り上げ、俺たちは地上に帰還したのだった。
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